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平和維持出典「国連の基礎知識」

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UN Photo/Eskinder Debebe

国連の平和維持活動(www.un.org/en/peacekeeping)は、国際の平和と安全を前進させるために国際社会が利用する重要な道具である。国連平和維持活動の役割は1988年に国際的に認められ、国連平和維持軍はその年のノーベル平和賞を受賞した。平和維持活動は国連憲章では明確に想定されていないが、1948年に中東へ派遣された「国連休戦監視機構(UnitedNations Truce Supervision Organization: UNTSO)」がその先駆けとなった。それ以来、国連は総計で67件の平和維持活動を設立した。2011年初めで、展開中の平和維持活動は14であった。

平和維持活動とその展開は、ホスト国政府および一般的にはその他の紛争当事国による同意のもとに、安全保障理事会が承認する。平和維持活動は伝統的には国家間の戦争終了後に主に停戦監視と兵力の引き離しという軍事的役割を持つモデルであった。今日では、軍事、警察、文民など、多くの要素を持つ複雑なモデルに発展し、持続可能な平和の礎を築くことが目的となった。

近年、ある種の国連平和維持活動の展開を承認するとき、もしくは差し迫った肉体的暴力の脅威にさらされる市民を保護するために武器の使用も必要となるような任務を与える場合には、安全保障理事会が国連憲章の第7章の強制措置規定を援用する慣行が導入された。伝統的には、国連平和維持要員は自衛の場合のみ武器の使用が認められた。しかし、第7章によるより「確固たる」任務の下では、たとえば、文民を保護するためには武器の使用も認められる。

平和維持活動の軍事要員は加盟国が自発的に提供するもので、その費用は加盟国が負担する。加盟国は、平和維持予算のもとに分担金を支払う。部隊の派遣国は、その予算から標準的な比率に応じて派遣にかかった費用の払い戻しを受ける。2010-2011年度の承認された平和維持予算は、およそ73億ドルであったが、それは世界の全軍事費の0.5パーセントにも満たない。平和維持活動は平和維持予算からまかなわれ、多くの国から派遣される部隊が参加する。こうした世界的な「責任分担」は人的、財政的、政治的な点から見て驚くほどの効率をもたらしている。

1948年以来、2,800人以上の平和維持要員が活動中に命を失った。2011年初頭現在で、115カ国派遣の10万人以上の軍事・警察要員が国連の平和維持活動に従事していた。

今日の紛争はいろいろな要因が複雑に絡み合っている。原因は本質的には国内的なものである。しかし、国家または経済企業やその他の非国家主体が国境を超えて関与するようになり、事態は複雑になる。アフリカに見られる最近の紛争は、内戦と武器購入のための天然資源――主にダイヤモンドやコルタ(携帯電話や電子製品に使われる)、金など――の不正輸出とが強く結びついていることを示している。さらに、違法な武器の流れや薬物の取引、難民の流出、環境悪化などのため、紛争は直ちに国際的な影響を持つようになる危険性も秘めている。対応も多角的でなければならない。たとえば一つの例としてキンバレー・プロセス認証制度(KPCS)があげられる。これはダイヤモンドの販売が紛争の軍資金や人権侵害に使われるのを防ぐために総会が2000年に導入した制度で、「ブラッド・ダイアモンド」を主流の市場から締め出すことを目的としている。

国連の活動は、その普遍性のゆえに、紛争解決の手段としてユニークな正当性を持っている。その普遍性が活動に正当性を与え、ホスト国の主権に対する影響を限定する。紛争国以外の国から派遣された平和維持要員は紛争当事者間の話し合いを育む一方で、国際社会の注意を現地の問題に振り向かせ、集団的な和平努力への扉を開かせる。さもなければその扉は閉ざされたままである。国連の活動を成功させるには、ある種の前提条件が必要である。その条件とは、戦闘する者の側に紛争を平和的に解決したいとの真正の願望があること、安全保障理事会からの明確な指示があること、国際社会による強力な政治的支援があること、そして活動の目的を達成するために必要な人的、物的資源が提供されること、などである。もっとも重要なことは、平和維持は政治的プロセスを伴わなければならないことである。平和維持はそうした政治的プロセスとなってはならない。また、なることもできないのである。

国際社会は過去の活動から教訓を学び、多くの領域で国連の平和維持活動能力を強化することに努めている。改革のための青写真は、事務総長の平和活動に関するパネルの2000年報告から提供された。ブラヒミ報告に基づく改革は、年に1つの新しい多分野にわたる平和ミッションを設立できるようにすることを目的としていた。しかし実際には2010年までの10年間に11の平和維持活動が開始もしくは拡大された。同時にさらに2つのミッションが設立初期の段階にあった。同様にアフガニスタンやイラクの場合のように、多くの特別政治ミッションが設立された。

2007年、潘基文事務総長の主導によって国連平和維持機構の再編成が行われ、新たに「フィールド支援局(Department of Field Support: DFS」が設置された。平和維持活動局(DPKO)と政治局(DPA)はそれぞれ平和維持活動、とくに政治ミッションや平和構築ミッションに政治・執行指示を与えるが、DFSは財政、兵站、情報、コミュニケーションと技術、人的資源、それに一般行政などの領域で国連のすべてのフィールドの平和活動に献身的な支援とガイダンスを提供する。2009年、DPKOとDFSは「ニューホライゾン」プロセスを開始した。これは、国連平和維持が直面している主要な政治的、戦略的ジレンマを評価し、可能な解決策について利害関係者との対話を再活性化させる意図のものである。それによって国連の平和維持は現在および将来の必要に応えることが可能となる。

平和維持活動は、異なる状況に応えて絶えず発展を続けている。これまで長年にわたって行われてきた平和維持活動の任務には次のようなものがある。

  • 停戦の維持と兵力の引き離し:平和維持活動は当事者間の限られた合意に基づいて派遣されるが、「熟考の機会」を提供することによって、和平交渉に導く雰囲気を育む。
  • 人道活動の保護:多くの紛争において、政治的目的達成の手段として一般市民が計画的にその攻撃目標にされた。そうした情勢のもとでは、平和維持要員は市民の保護と人道援助活動支援の2つの任務を求められる。しかし、そうした任務は平和維持要員を政治的に困難な立場に追いやり、彼ら自身の安全が脅かされることにもなる。
  • 包括的和平調停の実施:包括的な和平合意に基づいて展開される複雑かつ多面的な平和維持活動で、人道的支援の提供、人権監視、選挙監視、経済復興支援の調整など、多様な活動が求められる。
  • 民主的な原則、良い統治、経済開発に基づいて、国家や地域を移行期を通して安定した政府へと導く。
  • 一般市民を保護すること。最近の紛争では、非戦闘員、女性や子供が紛争の直接の犠牲者もしくはそれに関係した犠牲者となることがあまりにも多い。

地域・集団安全保障機関との協力

平和の実現に当たり、国連は国連憲章第8章に規定される地域機関やその他の主体や機構との協力をますます深めてきた。たとえば、国連はハイチでは米州機構(OAS)、旧ユーゴスラビアやコンゴ民主共和国では欧州連合(EU)、リベリアやシエラレオネでは西アフリカ経済共同体(ECOWAS)、西サハラや太湖地域、ダルフールではアフリカ統一機構(OAU)と緊密に協力した。国連軍事監視団はリベリア、シエラレオネ、グルジア、タジキスタンでは地域機関の平和維持部隊と協力した。また、北大西洋条約機構(NATO)の軍隊はコソボやアフガニスタンで国連要員とともに働いた。これは歓迎すべき発展である。これまでのところ、平和活動に対するグローバルな要求は国連も含め、いかなる主体であれ、単一の主体の能力では応えられない。地域の主体は平和活動を策定、管理、維持する能力を発展させるべく努力している。これは選択の幅を大きく広げるものである。こうしたことによって、内戦がもたらす複雑な挑戦に対してより柔軟に対応できるシステムを発展させる新たな機会が作られた。

平和維持活動の指揮官は誰か

平和維持活動は安全保障理事会が設立し、事務総長が指揮する。指揮は一般的に特別代表を通して行われる。平和維持活動の性格によっては、軍司令官(Force Commander)が軍事面の責任者になることもある。しかし派遣部隊は自国の防衛機関に対して責任を持つ。国連には自身の軍隊はない。それぞれの活動に必要な軍事要員や警察要員は加盟国が提供する。文民要員は世界中から任用されるか、ボランティアである。平和維持要員は派遣国の軍服を着用する。平和維持活動要員だと分かるのは、国連のブルー(青)のヘルメットもしくはベレー帽、それにバッジによってである。