本文へスキップします。

  • プリント

ここから本文です。

平和維持出典「国連の基礎知識」

UN Photo/Eskinder Debebe

国連の平和維持活動(www.un.org/en/peacekeeping)は、国際の平和と安全を前進させるために国際社会が利用する重要な道具である。平和維持活動は国連憲章の中では明確に想定されていないが、1948年に中東へ派遣された「国連休戦監視機構(United Nations Truce Supervision Organization:UNTSO)」がその先駆けとなった。

平和維持活動は安全保障理事会の承認のもとに、ホスト国政府および/もしくは紛争の主要当事者の同意を受けて展開される。平和維持活動は伝統的には国家間の戦争終了後に主に停戦監視と兵力の引き離しという軍事的役割を持つモデルであった。今日では、軍事、警察、文民など、多くの要素を持つ複雑なモデルに発展し、持続可能な平和の礎を築くことが目的となった。

近年、ある種の国連平和維持活動の展開を承認するとき、もしくは差し迫った身体的暴力の脅威にさらされる市民を保護するために武器の使用も必要となる任務を与える場合、安全保障理事会が国連憲章の第7章の強制措置規定を援用することが慣例となった。伝統的には、国連平和維持要員は自衛の場合のみ武器の使用が認められる。しかし、第7章の規定により「確固たる」任務の下では、たとえば、文民を保護するような場合でも武器の使用は認められる。

国連は自身の軍隊を持たない。平和維持活動の軍事要員は加盟国が自発的に提供するもので、その費用は加盟国が負担する。平和維持活動は事務総長が指揮するが、一般的に特別代表を通して行われる。平和維持活動によって異なるが、部隊の司令官は活動の軍事面に責任を有するものの、派遣部隊は自国の防衛機関に対して責任を持つ。平和維持要員は派遣国の軍服を着用する。平和維持活動要員と分かるのは、国連のブルー(青)のヘルメットもしくはベレー帽、バッジによってである。文民要員は世界中から任用されるか、ボランティアである。

平和維持活動は平和維持予算から賄われ、多くの国から派遣される部隊が参加する。加盟国は平和維持予算のもとに分担金を払う。部隊の派遣国は、その予算から標準的な比率に応じて派遣にかかった費用の払い戻しを受ける。

これまで6,500万人が強制的に住む場所を奪われた。武力紛争は記録的な数の人々の生活に影響を及ぼしている。政治的暴力のおよそ30パーセントから40パーセントが一般市民に向けられ、とくに子どもや女性への影響がはなはだしい。2007年から2014年にかけて、とくに中東や西アフリカにおいての内戦の数は3倍に達し、グローバルな、紛争に関連した死者の数は急増した。こうした状況のもとに、新しい世代の武装勢力が不安定な社会から力を得て台頭した。互いに個別に活動するものの、国境を越え、多国籍の組織犯罪を引き寄せるというネットワークの中で、これらのグループはこれまでの国家に基づく対応を無視して従わない。こうした背景の下では永続する政治的解決を達成することは、国際社会にとって、とくに国連の平和維持活動にとっては我慢強く進めてゆかなければならない挑戦である。

紛争の地域化は、新旧を問わず、引き続き重要な課題となっている。国境を越えた紛争の波及は情報技術によって加速し、しばしば犯罪ネットワークに結びついている。最近の紛争は、内戦と資源の不正な輸出入と強く結びついている。例えば、ダイヤモンド、文化遺物、武器である。対応も同様に多角的でなければならない。利害が対立する地域やグローバルな主体が存在する中で、紛争を解決もしくは管理する共通の戦略を中心に国際的に結束することは、南スーダンやシリアのような状況の下では困難であった。国境を越える脅威の流動性もしくは移動性に対応する地域的戦略を発展させ、実施するには、これまで以上の努力が必要である。例えば、不正に取引された紛争鉱石の場合、総会は2000年に「キンバレー・プロセス認証制度(KPCS)」(www.kimberleyprocess.com/en/about)を導入し、ダイヤモンドの販売が紛争の軍資金や人権侵害に使われないようにした。認証制度は「ブラッド・ダイヤモンド」を主流の市場から締め出すことが目的である。

国連の活動は、その普遍性のゆえに、紛争解決の手段としてユニークな正当性を持っている。紛争国以外の国から派遣された平和維持要員は紛争当事者間の話し合いを育む一方で、国際社会の注意を現地の問題に振り向かせ、集団的な和平努力への扉を開かせる。さもなければその扉は閉ざされたままとなる。国連の活動を成功させるには、ある種の前提条件が必要である。その条件とは、対立する勢力の側に紛争を平和的に解決したいとの真正の願望があること、安全保障理事会からの明確な指示があること、国際社会による強力な政治的支援があること、そして活動の目的を達成するために必要な財政的資源、加盟国派遣の制服要員、人的資源の提供があること、などである。もっとも重要なことは、平和維持は政治的プロセスを伴わなければならないことである。平和維持はそうした政治的プロセスに代わることはできない。

平和維持活動は、異なる状況に応えて絶えず発展を続けている。これまで行われてきた平和維持活動の任務には次のようなものがある。

  • 停戦の維持と兵力の引き離し
  • 人道活動の保護
  • 包括的和平調停の実施
  • 民主的な原則、良い統治、経済開発に基づいて、国家や地域が移行期を通して安定した政府へと発展できるように導く
  • 一般市民の保護

平和活動に関するハイレベルパネル

平和維持活動の役割が変化し、ますます複雑となり、また展開される環境もますます危険となり、厳しくなった。その結果、与えられた任務をいかに安全かつ効果的に実施するかが国連にとっての重大な課題となった。2014年、事務総長は、平和維持活動や特別政治ミッションも含め、国連平和活動を徹底的に検討するよう「平和活動に関するハイレベル独立パネル(HIPPO)」(https://peacekeeping.un.org/en/reforming-peacekeeping)に委託した。同パネルの2015年6月の報告は、国連平和維持活動がより効果的、効率的で、かつミッションがその対象とする人々のニーズによりよく応えられるようにするための土台を提供した。それは四つの基本的な転換を提案した。

  • 「政治の優位性」および政治的解決が国連のすべての平和活動の指針とならなければならない。
  • 「対応する活動」および国連のミッションは状況に適合したものでなければならない。
  • 「より強いパートナーシップ」および国際の平和と安全のためのより強化された地球規模および地域的アーキテクチャー。
  • 「フィールド重視と人間中心」の活動および国連本部がフィールド・ミッションおよび国連要員が人々のために働き、保護する決意を新たにできるようにする。

報告は、現在行われている多くの改革を強化した。たとえば、平和維持活動のパフォーマンスを改善すること、技術をよりよく利用すること、文民保護の活動を改善し、地域社会の関与を強化することである。また、国連要員の行為および規律の管理と説明責任を強化する一層の努力も求められた。

パネルの報告は国連の平和活動、平和維持活動、特別政治ミッションの方向をリセットする文書として認められている。政治的解決が国連の平和と安全の戦略の中心とならなければならないことを心にとめて、平和活動に対して人間中心のアプローチを進めるという新たな集団のコミットメントを求めている。このことは国際社会全体に受け入れられなければならない。これに関連し、HIPPO 勧告の実施に関する2015年9月の事務総長報告の中に載せられている行動計画は、国連システム全体のパートナーとの協力で、国連事務局の平和維持活動局やフィールド支援局によって引き続き実施される。事務局の作業は三つのテーマに焦点を合わせている。すなわち、予防、パートナーシップ、そして平和活動の策定と実施の改善である。

地域・集団安全保障機関との協力

国連憲章第8章に従って、国連は、平和維持の派遣地域、テーマの領域に従って地域の機関やメカニズムとの協力をこれまで以上に深めてきた。たとえば、国連はアフリカ連合(www.au.int)、欧州連合(https://europa.eu/)、北大西洋条約機構(www.nato.int)、欧州安全保障協力機構(https://www.osce.org/)、米州機構(www.oas.org)、などと緊密に働いている。国連は、幅広いテーマのもとにそうした機関とのパートナーシップを強化した。例えば、迅速な対応、安全保障部門の改革、訓練と演習現代科学技術、後方支援、女性、平和と安全、その他多くのテーマである。平和活動に対するグローバルな要求は、国連も含め、単一の主体の能力をはるかに超えている。パートナーシップの発展は今後も重要となる。また、ブリュッセル、ウィーン、アディスアベバにこの問題に取り組む連絡事務所が設置された。これはパートナーシップの努力を支援、強化するとともに、地域機関の本部において国連事務局のプレゼンスを円滑にするためである。