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労働の権利出典「国連の基礎知識」

国際労働機関(International Labour Organization: ILO)(www.ilo.org)は国連の専門機関の一つで、労働者の権利も含め、すべての人のためのディーセント・ワーク(権利と十分な収入が保証され、適切な社会的保護の生産的な仕事)の定義を行い、かつそれを保護、促進する任務を与えられている。その三者会議である国際労働総会(International Labour Conference) ――政府、使用者、労働者の三者の代表で構成―― はこれまで、労働生活のすべての側面に関して2016年6月11日現在、189件の条約と204件の勧告を採択した。これによって国際労働基準体系が構築された。ILOの勧告は政策や立法措置、慣行に対するガイダンスを提供するものであるが、その条約は批准する国に対して拘束力のある義務を作り出す。

これまで労働行政、産業関係、雇用政策、労働条件、社会保障、職業の安全や保健に関する条約や勧告が採択された。いくつかの条約は職場において基本的な人権を確保することを求め、またいくつかの他の条約は女子や子どもの雇用、それに移住労働者や障害者など特別の範疇に入る人々の雇用などの問題を取り上げている(https://www.ilo.org/global/standards/lang--en/index.htm)。

ILOは、条約が国内の法律や慣行に反映されるようにする監視手続きを持つ。一つは独立した専門家による客観的な評価に基づくもので、他はILOの三者機関が行う個々の調査に基づくものである。結社の自由の侵害に関する苦情を調査する特別の手続きもある。

ILOはこれまで多くの画期的な条約を採択してきた。たとえば、以下の通りである。

  • 強制労働に関する条約(on Forced Labour、1930年)―― あらゆる形態の強制労働や義務的労働の使用を廃止するよう求めている。条約への議定書は、2014年の国際労働総会が採択したもので、あらゆる形態の強制労働と取り組むために新たな措置をとるよう加入国政府に要している。
  • 結社の自由および団結権の保護に関する条約(on Freedom of Association and Protection of the Rights to Organization、1948年)―― 事前の許可を受けることなく団体を設立し、加入する労働者および使用者の権利を定めている。また、そうした団体が自由に機能できることも保障している。
  • 団結権および団体交渉権についての原則の適用に関する条約(on Right to Organize and Collective Bargaining、1949年)―― 反組合的な差別に対する保護、労働者団体および使用者団体の保護、団体交渉を保護する措置、などを規定している。
  • 同一労働同一報酬に関する条約(on Equal Remuneration、1951年)―― 同一価値の労働に対する同一の報酬と給付を求めている。
  • 雇用および職業における差別に関する条約(on Discrimination、1958年)―― 機会および待遇の平等を促進し、人種、皮ふの色、性、宗教、政治的意見、国民的出身又は社会的出身に基づく職場における差別を撤廃する国内政策を求める。
  • 最低年齢に関する条約(on Minimum Age、1973年)―― 児童労働の廃止を目的に、雇用のための最低年齢は義務教育の卒業年齢以下であってはならないと規定している。
  • 最悪の形態の児童労働に関する条約(on Worst Forms of Child Labour、1999年)―― 子どもの奴隷、債務による束縛、売春とポルノ、危険な労働、紛争のための強制的徴兵を禁じている。
  • 母性保護条約(on Maternity Protection、2000年)―― 出産休暇、雇用保護、医療給付、母乳哺育のための休憩の基準を規定している。
  • 海上の労働に関する条約(on maritime labour、2006年)―― 船員の最低労働・生活基準を定め、船主のためには公平な競争の場を提供している。
  • 家事労働者条約(on domestic workers, 2011年)家事労働者が労働・社会保障の適用外となっている問題に取り組んでいる。

2010年、ILO総会はHIV/エイズに関する画期的な新しい労働基準を採択した。これは労働の世界にあって具体的にこの問題に焦点を当てた最初の人権文書である。差別防止措置を規定し、継続的な治療の観点から、HIVとともに生活する労働者や人々の雇用や収入を生み出す活動の重要性を強調している。

国連総会も移住労働者の権利を保護する数多くの措置を取った。