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エネルギーをみんなに、そしてクリーンに出典「国連の基礎知識」

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すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する。電気を利用できる世界人口の割合は着実に増えてきており、2000年の79パーセントから2012年の85パーセントとなった。それにもかかわらず、11億の人々はこの貴重なサービスを受けられない。料理のためにクリーンな燃料や技術にアクセスできる世界人口の割合は、2000年の51パーセントから2014年の58パーセントへと上昇した。ただ、2010年以降の伸びは鈍っている。しかし、料理のために固形燃料やケロシンのような公害燃料と技術とを利用する人々の絶対数は増加しており、その数はおよそ30億人に達すると推定される。現代の再生可能エネルギーは急速に増えてきており、2010年から2012年には年間4パーセントの割合で増えた。エネルギー強度、すなわち第一次エネルギー総供給を国内総生産で割った値は、1単位の経済生産のためにどのくらいのエネルギーを消費したかを明らかにする。全地球的にはエネルギー強度は2010年から2012年にかけて1.7パーセント減少した。このことは1990年から2010年の期間に比べてかなりの改善である。この間は年に1.2パーセントの減少であった。エネルギーは気候変動の主な原因で、全地球的温室効果ガス総排出量のおよそ60パーセントを占める。炭素強度を下げることが長期的な気候目標にとって不可欠である。

エネルギー

世界人口のおよそ4分の1が電気のない生活をしており、それ以上の人々が料理や暖房のための現代燃料を利用できない。エネルギーの適切な供給は、経済成長と貧困の撲滅にとって不可欠であるものの、従来のエネルギー・システムが環境や健康に与える影響は懸念の的でもある。1人当たりのエネルギー需要が増加しており、それが世界人口の増加とあいまって、現在のエネルギー・システムでは持続できないまでの消費レベルに達している。エネルギーに関する国連システムの活動は、さまざまな方法で開発途上国を支援している。たとえば、教育や研修、能力育成を通して、また政策改革を援助することによって、またエネルギー・サービスを提供することによって開発途上国を支援している。汚染がかなり少ない再生可能なエネルギー源へ向かう努力も行われているものの、需要の増加が依然として実際の供給能力を上回ってしまう。

2004年、国連システム事務局長調整委員会が設置した「国連―エネルギー(UN‒Energy)」(www.un-energy.org)は、エネルギーの分野における主要な機関間メカニズムである。グローバルなエネルギー課題に国連システムが一貫した対応をとれるようにし、2030アジェンダのエネルギー関係の決定を実施するために民間セクターや非政府組織の主要な主体をその活動に効果的に従事させることをその任務としている。

核物質の安全安心な平和利用

2016年、およそ450基の原子炉が30カ国において運転中で、世界の電力の11パーセントを供給した。エネルギーは持続可能な経済成長と人間の福祉の改善に不可欠である。核エネルギーはクリーンで信頼でき、安価なエネルギーを提供し、気候変動へのマイナスの影響を軽減することができる。それは世界のエネルギー混合の重要な一部を占めており、今後その利用は増大するものと期待される。国際原子力機関(International Atomic Energy Agency: IAEA)(www.iaea.org)は、国連ファミリーの一員で、原子力の安全安心な平和的利用の開発を進め、原子力技術を利用して持続可能な開発をはかる国際活動においても重要な役割を果たしている。IAEAは、原子力の分野で科学技術協力を進める世界の中心的な政府間フォーラムである。

また、情報を交換し、原子力の安全に関するガイドラインと規範を作成するためのフォーカル・ポイントでもある。同時に、政府の要請に応えて、原子炉の安全性を高め、事故のリスクを回避させる方法について政府に助言する。原子力を利用した事業が増大し、その結果、原子力の安全の領域におけるIAEAの責任も大きくなった。IAEAは放射線の有害な影響から健康を守るための基準を設定し、また放射線放出物資の安全な輸送など、特定のタイプの運営に関する基準や技術的ガイドラインも提供する。

また、「原子力事故または放射線緊急事態の場合における援助に関する条約(Convention on Assistance in the Case of a Nuclear Accident or Radiological Emergency)」や「原子力事故の早期通報に関する条約(Convention on Early Notification of a Nuclear Accident)」のもとに、放射線事故が発生した場合は、加盟国に緊急援助を行う。両条約はともに1986年に採択された。IAEAが受託機関となっているその他の条約には、1987年の「核物質の防護に関する条約(Convention on Physical Protection of Nuclear Material)」とその2005年修正(2016年5月に発効)、1963年の「原子力損害に対する民事責任に関するウィーン条約(Vienna Convention on Civil Liability for Nuclear Damage)」、1994年の「原子力の安全に関する条約(Convention on Nuclear Safety)」、それに1997年の「使用済み燃料管理の安全と放射性廃棄物管理の安全に関する共同条約(Joint Convention on the Safety of Spent Fuel Management and on the Safety of Radioactive Waste Management)」がある。

IAEAの技術協力プログラムは国内プロジェクト、専門家の派遣、持続可能な開発を強調した原子力技術の平和利用に関する研修の形をとって行われる。こうしたことによって、国々は水、保健、栄養、医薬品、食糧生産のような重要な領域で必要な支援を受けることができる。たとえば、突然変異育種に関連したものがある。放射線技術の利用によって有益な作物品種が開発され、食糧生産が改善された。もう一つの例は同位体水文学の利用で、それによって地下帯水層の地図を作成し、地下水や地表水を管理することができる。また、汚染を探知して規制し、ダムの漏水や安全を監視することもできる。これによって安全な飲料水の入手が改善されることにつながる。IAEAは、また、開発途上国や中所得国で放射線療法設備を提供し、がん患者の安全な治療を行えるように医療スタッフの研修を行っている。

IAEAはウィーンにある「国際原子力情報システム(International Nuclear Information System: INIS)」(www.iaea.org/inis)を通して原子力に関係する科学技術のほとんどすべての側面に関する情報を収集し、その普及をはかる。オーストリアとモナコに研究所があり、研究を行い、研修を実施している。また、他の国連機関とも協力する。ユネスコとの協力で、イタリアのトリエステにある国際理論物理学センター(International Centre for Theoretical Physics)(www.ictp.it)を運営する。国連食糧農業機関(FAO)とは食糧と農業の分野における原子力の利用に関する研究を行い、世界保健機関(WHO)とは医療および生物学における放射線の利用について研究している。

国連放射線影響科学委員会(United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation: UNSCEAR)」(www.unscear.org)は、1955年に設置され、イオン化放射線照射の水準やその影響に関する評価を行い、報告する。世界の国々の政府や機関は、放射線リスクを評価し、放射線防護や安全基準を設定し、放射線源を規制するための科学的基礎として委員会の報告を頼りにしている。