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知的所有権出典「国連の基礎知識」

知的所有権(IP)は一般に「心の創造」に言及するものとして述べられる。それには発明、文学と芸術作品、それに商業に使われる象徴、名称、イメージが含まれる。知的所有権(IP)は特許、著作権、商標などによって法律で保護されている。こうしたことによって、イノベーターはその発明もしくは創造によって社会的に認識され、かつ金銭的な利益を得ることができる。知的所有権(IP)制度の目的は、創造性と革新性が称賛されるような環境をつくることである。毎年世界中で出願される特許、商標、工業デザインの数が増えていることに反映されるように、今日の知識集約型経済においては、知的所有権(IP)は中心的役割を果たす。

国連の専門機関の一つ、世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization: WIPO)(www.wipo.int)は、IPサービス、政策、情報、協力のためのグローバルなフォーラムである。WIPOは、社会の進化するニーズに応えるバランスのとれた国際IP法的枠組みを加盟国が発展させることができるように支援し、多数の国においてIP権利を獲得し、かつ紛争を解決するためのビジネスサービスを提供し、開発途上国が知的所有権(IP)の使用から利益を得られるように能力強化プログラムを実施し、IP情報に自由にアクセスできるようにする。WIPO加盟国は定期的に委員会を開き、著作権、特許法、商標、工業デザイン、地理的表示の法律、遺伝子資源、伝統的な知識と伝統的な文化表現(フォークロア)の問題を取り上げる。WIPOは知的所有権(IP)のすべての側面を取り上げた26件の国際条約を管理する。もっとも新しい条約、「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約(Marrakesh Treaty to Facilitate Access to Published Works for Persons Who Are Blind, Visually Impaired or Otherwise Print Disabled)」は、2013年に採択され、視覚障害を持つ人々が書籍、雑誌、その他の印刷物に適切なフォーマットでよりよくアクセスできるようにすることを目標としている。

WIPO国際IPファイリングサービス(特許効力法、マドリード、ハーグ、リスボン制度)は、単一の出願もしくは登録によって多数国で発明やブランド、デザインを保護するコスト効率の良い方法を企業や革新者に提供する。WIPOの仲裁・調停センター(Arbitration and Mediation Centre)は、訴訟に代わるものとして、インターネット・ドメイン・ネーム紛争も含め、広範な紛争解決サービスを提供する。

WIPOはまた、IP事務所とともに、作業、データ、知識を容易に共有できるようにする世界的規模の相互運用可能なツールや技術規格を発展させる。この技術的インフラによってIP制度がもたらす豊かな技術情報に普遍的にアクセスすることができる。WIPOは、IP制度に関するデータやIPに関する実証的研究、報告、統計と事実情報については、世界でもっとも包括的なデータ源である。WIPOの刊行物やデータの収集はオンラインで利用可能である。

WIPOは、すべての国がIP制度がもたらす恩恵を平等に受けられるようにする。その分野横断的な開発アジェンダは、開発についての考慮がWIPOの作業のすべての分野に統合されるようにする。開発途上国や後発開発途上国の能力強化を支援するために、WIPOは、イノベーションとIP政策を国家の開発戦略に統合することやバランスの取れた、適切な法的枠組みについて助言を提供する。また、IP事務所がその特許・商標処理システムを最新のものに更新できるように支援し、WIPOアカデミー(www.wipo.int/academy)を通して、IP技能など、研修コースを提供している。

経済的進歩を遂げるための推進力として、また、気候変動や公衆衛生、教育のようなグローバルな課題に取り組む手段としてのイノベーションに強い焦点を当てて、WIPOは持続可能な開発(SDG)の実施に取り組んでいる。また、グローバルな課題への実際的な解決をもたらすために、各種のマルチ・ステークホルダー、官民のパートナーシップを設立した。例えば、WIPOリサーチは、これまで放置されてきた熱帯病と闘い、それにWIPOグリーンはグリーン・テクノロジーの普及に努める。