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法廷での犯罪

法の支配を尊重し、人権原則を組み入れるとともに、市民の安全を守る司法制度を整備することは、犯罪と暴力に取り組むうえで重要な要素です。

強固な刑事司法制度は、こうした原則が実際に堅持されることを保証します。司法制度が脆弱であれば、犯罪や暴力、腐敗的慣行が促進され、これが経済開発を阻害し、政情不安を助長することになります。無法状態と治安悪化が進めば、最も社会から隔絶された人々が苦しむことになります。自分たちの権利を守るための資金も政治的影響力もなく、司法制度の公平性に対する信頼を失ってしまうからです。

刑事犯罪の被疑者や、有罪判決を受けた人々には、広く拘留や収監の措置が取られますが、法の支配に基づいていない制度では、人々が恣意的に、しかも不当な期間にわたって収監されることがあります。多くの国では、受刑者が基本的な生活設備を奪われ、しばしば過密で管理がずさんな刑務所に収容されるため、受刑者自身はもとより、その家族やコミュニティーにも影響が及んでいます。

刑事司法とSDGs

収監に代わる措置を適切に用いる公正かつ実効的な刑事司法制度、法律扶助を通じた弁護士へのアクセス、そして人間らしい収監環境は、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するうえで極めて重要です。SDGs全体を貫く「誰一人取り残さない」という約束を実現するためには、全世界の受刑者の窮状を見逃すことはできないからです。

SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」に基づくターゲットには、すべての人に司法への平等なアクセスを確保し、実効的で責任ある透明な制度をあらゆるレベルで開発することが含まれています。

法律扶助は、司法へのアクセスにおいてカギとなる要素です。貧困層や社会から隔絶された人々、恵まれない人々など、自らの権利を擁護するための金銭的手段を持たない人々を守れるからです。また、被疑者の拘留期間、不当な有罪判決、贈収賄や司法の不手際、そして再犯率や再被害率をいずれも減らすことに役立ちます。総会が2012年に採択した「刑事司法制度における法律扶助へのアクセスに関する国際連合の原則およびガイドライン」は加盟国に対し、ジェンダーに配慮し、適切な財源を備え、十分な研修を受けた弁護士やパラリーガルへのアクセスを提供する利用可能で実効的かつ持続可能で信頼できる法律扶助制度を導入するよう義務づけています。

収監に代わる措置は、収監に対する過度な依存を是正するために必要です。これは、特に子どもや精神障害者など、過密で管理のずさんな刑務所で権利を侵害されるリスクのある人々にとって重要なことです。1990年に総会が採択した「非拘禁措置に関する国連最低基準規則(東京ルールズ)」は、非拘禁措置の適用と審理前拘留の回避に関する実践的な助言を提供しています。

「国連被拘禁者処遇最低基準規則(通称「ネルソン・マンデラ・ルールズ」)」は、受刑者の基本的な権利と尊厳とともに、すべての人々の安全と福祉も守ることを趣旨としています。受刑者の処遇に関する基準を定めるこのルールは、1955年の第1回国連犯罪防止刑事司法会議で採択され、2015年に改定されて、現在は刑務所管理のグッド・プラクティスの調和を図る画期的な規則となっています。

受刑者の大多数は最終的に社会復帰するため、再犯の削減を図る措置は、刑事司法制度の重要な部分を占めるとともに、社会の犯罪に対する強靭性を高めるうえでも大きな要素となります。

国連薬物犯罪事務所(UNODC)は状況を改善するために何をしているか

多くの国は、自国の刑事司法制度がすべての人々、特に社会的に最も脆弱な立場に置かれた人々の権利を実効的に守れるようにするための財政手段や技術的専門能力を欠いています。また、刑務所の過密問題を抱え、受刑者に基本的サービスの提供に苦慮しているのが現状です。

UNODCは、刑事司法制度と関わり合う人々の基本的人権と尊厳を守るため、各国の刑事司法と刑務所改革を援助しています。その中には、法律起草や判事、検察官、弁護士、刑務所管理者の養成、データの収集と分析も含まれています。

UNODCは、女性に対する暴力、少年司法、法律扶助へのアクセス、被害者と証人の権利に取り組むための技術援助と助言を提供します。UNODCは、収監に代わる措置の適用と修復的司法も促進しています。

UNODCのグローバル司法廉潔性ネットワークは、司法の廉潔性の強化と司法部門の腐敗防止に努める全世界の裁判官を支援しています。

あなたにできること

法の支配とすべての人の平等な司法アクセスの重要性に対する理解を深めることにより、私たちは社会における説明責任の強化に貢献できます。

私たちは市民的、政治的、経済的、社会的権利を含め、私たちの権利とそれを行使する方法に関する教育と知識の共有を通じ、お互いのエンパワーメントを図ることができます。また、どのような職業にも地位にも廉潔性という価値が伴うことを子どもたちに教え、私たちの社会で遵法の文化を育てるとともに、学生にコミュニティーへの積極的な関与を促すこともできます。

私たちは、腐敗事件を告発し、法の支配が実効性を持つ環境の整備に貢献することもできます。

刑事司法: 数字で見る動き

  • 世界にはおよそ1,100万人の受刑者がいますが、そのうち子ども(18歳未満)は少なくとも100万人に上ると見られています。
  • UNODCは2018年だけでも、2,200人を超える看守にネルソン・マンデラ・ルールズと、円滑な刑務所管理に関する研修を施し、900人の受刑者を対象とする社会復帰プログラムを開始しました。

刑事司法制度が子どもと若者に与える影響

世界人口の3分の1は子ども(18歳未満)であるため、子どもに対する暴力の防止と子どもの司法へのアクセスは、持続可能な開発目標(SDGs)全体の優先課題となっています。

子ども固有の脆弱性に対する理解が不足している一部の国では、触法少年が大人と同じ扱いを受けています。人権の侵害や、暴力と暴力的過激主義への急進化リスクを防ぐためには、子どものニーズや最善の利益とともに、子どもが法に触れることになった根本的な原因も適切に考慮しなければなりません。

刑事司法と女性、女児に対する暴力

多くの国では、暴力を受けた女性や女児がしばしば、警察や検察、判事から適切な対応を受けられないため、多数の事件が未報告や不起訴となっています。被害者の援助や保護、救済のニーズが認識も充足もされないことが多いのです。

女性と女児に対する暴力に関する法律が執行され、女性と女児が暴力から守られ、実行犯の責任が追及され、犠牲者と被害者に実効的な救済と良質のサービスが提供されるようにするためには、警察と司法による質の高い効果的かつ人道的な対応が欠かせません。