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核兵器出典「国連の基礎知識」

これまでの不断の努力の結果、国際社会は数多くの軍縮協定を締結することができた。核兵器を削減し、特定の地域や環境(たとえば、宇宙空間や海床)への核兵器の配備を排除し、その拡散を制限し、核実験を終わらせることを目的とした多くの条約が結ばれた。こうした成果にもかかわらず、世界における1万5000発の核兵器の貯蔵とその拡散は依然として平和に対する主要な脅威であり、また国際社会にとっての大きな課題である。この領域での関心事項は、核兵器削減の必要、核不拡散体制の実現、弾道ミサイルやミサイル防衛システムの開発と拡散の防止などである。

核兵器に関する二国間条約

核兵器を封じ込める国際的な努力はいろいろな場で続いているが、一般に理解されていることは、核兵器国には安定した国際安全保障の環境を維持する特別の責任があるということである。冷戦中および冷戦後、米ソ二大国は核戦争の脅威を大きく緩和させたさまざまな協定について合意した。

核兵器および核不拡散に関する多国間協定

「核兵器不拡散に関する条約(NPT)」は、多国間の軍縮条約の中でももっとも普遍的な条約で、1968年に署名のために開放され、1970年に発効した。191カ国が参加している。NPTはグローバルな核不拡散体制の柱石であって、核軍縮を進めるための重要な基礎である。2003年1月、朝鮮民主主義人民共和国はNTPから脱退するとの決定を行った。そうした決定はNPTが33年前に発効して以降初めてのことで、国際社会にとって大きな懸念となった

2010年のNPT運用検討会議は22項目の核軍縮行動計画を採択した。核軍縮、安全保証、核実験、核分裂性物質の領域でとるべき具体的な措置を述べている。会議はまた、すべての中東諸国が参加する中東非核兵器地帯設置に関する会議を2012年に開催することを支持した。しかし、この会議は中東での政治的混乱のために開催されなかった。2015年、NPT運用検討会議の参加者は実質的な成果について合意に達することができなかった。これは、核兵器およびその他のすべての大量破壊兵器の設置を禁じる地帯を中東に設置する方法について合意が見られなかったからであった。

NPT締約国は、NPTが課す義務の検証を受けるために、国際原子力機関(IAEA)の保障措置を受け入れるよう求められている。2015年末現在、保障措置協定は181カ国以上の国々と結ばれていた。そのうちの173カ国は包括的保障措置協定を結んでいる。追加議定書が127カ国と有効である。NPTに加え、バンコク、ペリンダバ、ラロトンガ、トラテロルコの各条約や中央アジア非核兵器地帯条約もIAEAの保障措置を適用させるよう非核兵器国に求めている。

1996年の国連総会で加盟国の圧倒的多数が、いかなる場所においても核実験の爆発を禁止する「包括的核実験禁止条約(Comprehensive Nuclear‒Test Ban Treaty: CTBT)」を採択した。条約は1954年に初めて提案されたが、条約の採択まで40年もかかった。この条約によって1963年の部分的核実験禁止はすべての環境へ拡大されることになった。アメリカが最初に核爆弾の実験を行った1945年7月からそうした核爆発を禁止したCTBTが署名のために開放された1996年の間に、2000回を超す核爆発が記録された。CTBTはまだ発効していない。2017年1月31日現在、183カ国がCTBTに署名し、そのうちの166カ国が批准している。条約は、付属文書IIにリストされた44カ国が批准して180日後に発効する。「付属文書II」の国とは、1994年から1996年にかけてのCTBT交渉に参加し、なおかつ原子炉もしくは研究用原子炉を保有していた国である。2017年1月31日現在、「付属文書II」の国で条約外にいる国は、中国、朝鮮民主主義人民共和国、エジプト、インド、イラン、イスラエル、パキスタン、アメリカの8カ国である。国連事務総長は、条約の受託者として、1999年、2001年、2003年、2005年、2007年、2009年、2011年、2013年、2015年と一連の「CTBT発効促進会議」を開催した。1997年に設置された暫定技術事務局では、CTBTが発効するまでに国際監視制度が運用できるようにする作業が進められている。この作業が完了すると、監視制度は337カ所の監視観測所から構成され、条約の発効に伴って適用される現地査察体制によって補完される。

非核兵器地帯

1967年、「ラテンアメリカ・カリブ核兵器禁止条約(トラテロルコ条約)」の署名によって、地球上の人間の住む地帯に初めて核兵器のない地帯が設置された。これは地域的な軍備管理の分野で新しい運動の先触れとなる発展であった。2002年、キューバが批准書を寄託したことによって、ラテンアメリカおよびカリブ海域の非核地帯は域内のすべての国を含むことになり、強化された。それ以来、さらに四つの非核地帯が設けられた。南太平洋(ラロトンガ条約、1985年)、東南アジア(バンコク条約、1995年)、アフリカ(ペリンダバ条約、1996年)、そして中央アジア(中央アジア非核兵器地帯条約、2006年)の4地帯である。中欧や南アジアに非核地帯を設置し、中東に核および他の大量破壊兵器を禁じる地帯を設置する提案も出されている。1998年にモンゴルが非核国家を宣言し、総会がそれを支持したことから、個々の国家を非核地帯とする概念も認められるようになった。

核拡散防止

国際原子力機関(IAEA)(www.iaea.org)は、関係国が核物質や技術が平和目的のためのみに利用するとの国際的な法的義務を順守しているかを検証する。その独立した検証作業によって、IAEAは核兵器の拡散防止という不可欠の役割を果たしている。国家との協定のもとに、IAEAの査察官は定期的に原子力施設を訪問し、核物質と核関連の活動に関する記録が正確かつ完全であるかを検証する。また、作業記録を監査し、IAEAへの報告と合っているかを比較するとともに、核物質の在庫表やその変動を検証し、環境サンプルを採集し、計器や監視器具を封印し、設置する。2015年、IAEA専門家は181カ国で発効している保障措置協定の実施を検証するために、2,118回に及ぶ現地検証を実施した。その目的は、1,200カ所以上の原子力施設が保有する核物質が平和利用から軍事目的に転用されないようにすることである。

IAEAとは三つのタイプの保障措置協定を結ぶことができる。それは、核兵器不拡散条約(NPT)の当事国、非核兵器国、もしくはNPT条約のもとの核兵器国によって異なる。協定は「追加議定書」によって補足することができる。これは国の完全な核燃料サイクル活動を網羅する。保障措置はまた、バンコク、中央アジア、ぺリンダバ、ラロトンガ、トラテロルコのような非核兵器地帯条約にも適用される。IAEAの保障措置は国際核不拡散体制と不可分の一体をなすもので、条約の実施に不可欠の役割を果たしている。

2015年7月14日、IAEAとイランは「イランの核開発計画に関する過去および現在の懸案事項の明確化のためのロードマップ」に署名し、E3/EU+ 3(英仏独米中ロ)とイランは「包括的共同行動計画(JCPOA)に合意した。2015年7月20日、安全保障理事会は、「JCPOAによるコミットメントの全期間にイランの核開発関連のコミットメントを検証、監視を実施する」ようIAEA事務局長に要請した。

IAEAは2009年以来、朝鮮民主主義人民共和国における検証活動を実施できない状態にあるが、DPRKの核問題については引き続き見守っている。2016年11月、理事会は繰り返し行う核とミサイルの実験に関してより厳しい制裁を実施することに決めた。