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外務省 国際機関人事センター
阿部 智 センター長からのメッセージ

阿部 智(あべ さとし)
外務省 国際機関人事センター長

【経歴】
1983年 外務省入省
1986-88年 在アフガニスタン大使館
1988-92年 外務省無償資金協力課
1992-94年 同文化第一課
1994-96年 同研修所
1996-99年 在ヒューストン日本総領事館
1999-02年 在ウクライナ大使館
2002-05年 外務省大洋州課
2005-07年 国別開発協力第一課
2007-11年 日本貿易振興機構(JETRO)農林水産部主査
2011-14年 在パプアニューギニア大使館参事官
2014年7月 現職

国際機関人事センター長として、国連と日本の架け橋として

Q:阿部さんは去年の7月にセンター長に着任されてから、およそ1年が経ちますね。在外公館から帰任されて、この国際機関人事センターという部署はどうでしょうか?

A:霞ヶ関の本省を離れている時期が長かったので、最初は多くのことが変化していて慣れるのが大変でしたが、この部署は前向きに仕事ができるところなので、日々幸せを感じております。

Q:優秀な日本人を国連に送り出す役割を担っている国際機関人事センターですが、具体的にはどのようなお仕事をされていますか?

A:国際機関人事センターの業務は、大きく分けて二つあります。一つは、まだ国際機関の外にいる一般の方々に、HPやフェイスブックなどの広報ツールを利用して、国際機関の魅力のみならず、具体的なポストや職種を広く紹介し、その就職のために必要な情報を発信すると共に、当方から大学や社会人の方々のために国際機関への就職のためのガイダンスにも出かけています。もう一つは、国連を含む国際機関の日本人職員を増やすためJPO派遣制度を実施しています。どちらも大変重要な業務だと思っています。

Q:一昨年は東京で,昨年は関西圏で,秋に行なわれた「国際機関合同アウトリーチ・ミッション」は、国連での仕事を民間の方々に身近に感じて頂く事を目的としていて、国連広報センターも広報の側面から携わらせて頂いていますが、今年はどのような展開になりそうですか?

A:今年も秋に実施予定で、具体的なプログラムについてはこれから一つ一つ細かく詰めていくところです。過去2回の「国際機関合同アウトリーチ・ミッション」は、3日間でおよそ900人の方々にご参加頂いていて、国連を含む国際機関を身近に感じるだけでなく、実際に働くことへの希望や意志を持っている学生や社会人が多いのが特徴ですが、アウトリーチの時だけでなく、普段の生活の中でも、国連を含む国際機関で働くためにはどのようなことを学習すればよいか、どのように行動したらよいか、などを考えてもらえればと思います。

日本人を国連へ -JPO制度の積極的な活用-

Q:日本人が国連の正規ポストに就くためには、JPO派遣制度が一番の登竜門になっていますが、JPO派遣制度の利点はどのようなものですか?

A:国連を含む国際機関に就職するには、いくつかの入り口があります。個々の空席ポストへの応募が一般的な方法ですが、そのポストに対しては自分自身が世界一である、すなわち世界中のライバルと競って、誰よりもそのポストに相応しい能力と適性の持ち主であることを試験で証明しなければなりません。そのため非常に倍率が高いです。
JPO派遣制度は、国連を含む国際機関で勤務経験を積めるという意味で正規ポストへの前段階と言えますが、日本人のみが対象なので国連や国際機関に比較的入りやすい方法と言えるのではないでしょうか。2014年度のJPO派遣者数は44人でしたが、今年度は予算が増額されたこともあり、より多くのJPOを派遣したいと思っております。

Q:JPO制度の枠が大きく増やされた理由や背景はどういったところにあるのでしょうか?

A:"アンダーレプ underrepresentation"といって、日本人国連職員の割合が望ましい人数を下回っている状態が昔から言及されています。 日本からの財政的支援だけでなく、人的な貢献が注目されています。我々も努力していますが、受験者の方々には、単に学歴や語学力があるだけでは応募条件を満たすことが難しいので、国連を含む国際機関で働くという高い目的意識と志をもって、具体的な準備をしていただく事が大切です。

Q:ジュニアレベルの人たちにとってはJPO派遣制度がありますが、幹部レベルにおける、日本人職員増員の作戦・戦略はどういったものになりますか?

A:現に国際機関の職員であられる方々との交流を通じて何かお役に立てることがないか、いつも心がけています。積み上げてこられたキャリアと卓越した能力を生かせるように、また、日本人職員が活躍できるようなプロジェクトや場をできるだけ設定できないかということも常に考えています。また、NGOや政府系機関あるいは民間企業でも、国際的な職務経験をもつ優秀なシニアレベルの方々がたくさんいらっしゃるので、そういった方々に向けて有益な情報を提供するなどの後押しも一層努めていきたいです。

Q:この1年、国際機関で働くことを目指している人たちを見てきて、何かひとつの傾向はありますか?

A:以前は現場で働きたい人が多かったのですが、最近はどちらかというと先進国で働きたい人が増えていますね。世界の情報が容易に手に入るということが、影響しているように感じます。昔は日本人自体が色々な国に行けることが新鮮でしたが、今は世界の事情が日常的に伝えられているので、現場にこだわる人が減っているのかもしれません。現場をわかった上で働くのが一番良いと思うので、若いうちは現場に行って、中堅・シニアになってから本部で複数の現場を同時に受け持つのが理想だと思います。最初から本部というのも良いと思いますが、一度は現場へ行っていただきたいです。

外交官として国際的に働く経験

Q:阿部さんご自身は外交官として、海外での経験が長く、色々な地域に赴任していらっしゃいますが、それらの経験はご自身の考え方にどのように影響していますか?

A:やはり平和の重要性です。平和構築にあたって、国連や国際機関が行っている活動は戦争を避けることに繋がっていると思います。世界は人間が作っていくものなので、人と人とが言葉を使って、規則を作り、平和な世界を構築していくことが大切だと思います。そのような具体的な理想を掲げているのが国連であり国際機関だと思います。自由と平和の構築は、大変に重要な国連や国際機関の活動だと思っています。

パプアニューギニアでの経済協力関係の現地調査

Q:阿部さんご自身のキャアリアのなかで、一番忘れがたい現場は、どういうものですか?

A:全ての現場が忘れがたいですが、アフガニスタンで銃を向けられたことは今でも忘れることができません。当時、1986年、アフガニスタンは国自体が内戦状態で、町中には銃を持った兵隊が日夜、立っていました。夜、街灯のない町で、移動のために自分で車を運転していたのですが、多くの検問で取り調べを受けました。外交官なので、規則上は通してもらえるはずなのですが、現場では兵隊に銃を向けられることもしばしば経験しました。運転している途中、真っ暗なのでライトを遠目にしたら、目の前に戦車が現れたこともありました。

Q:そういった経験を通して、生命の危険と隣合わせで暮らしている人々を理解し、共感できるのですね。

A:確かに、外交官は一定の保護やステータスがあるので、地元の人々の視点に立てるのかと聞かれたら、そうでない部分も多いかもしれません。しかし、日本に戻って報告書等を読んでいても、実際に経験があるので、他の人が感じるよりは、より身近に現地のことを感じられるのではないかと思います。

国際貢献を考えている日本の若者へのメッセージ

Q:国際貢献を志す人たちに、どのようなメッセージを届けたいですか?

A:国際貢献によって得られるものとその魅力は、皆さんが思っているものよりも大きいと思います。一人ひとりの可能性が一つの国に限定されることなく地理的にも広がりますし、様々な国の人たちとの交流の中で自分の能力が発揮されて、具体的な成果になって現れるというのは、大変にやりがいのある感動的な仕事だと思います。私は、日本の若い皆さんはご自身が思われている以上に能力がある、と思うことがよくあります。ですから、「国際的に働くこと」を積極的に考えてみて頂ければと思います。
そのために、最初の頃は、イベントに参加したり、インターンシップやボランティアを経験したり、短期でも契約職員として一時的に国連や国際機関で働いたり、色々な活動に参加して頂きたいと思います。そのような積極的な活動を通して、段々と自然な形で国際貢献に携わるイメージや、きっかけをつかむことにつながるのではないかと思います。

Q:最後に、国連広報センターに向けてメッセージはありますか?

A:国連広報センターは、国連の活動を日本人に知ってもらうために活動をしていると思います。同時に、日本がグローバルな課題に挑みながら、国連にどのように貢献をしているのか、国連や世界にメッセージを送っていただきたいと思います。国連広報センターは日本に国連のメッセージを届けるという役割を持っていますが、同時に日本のことを国連や世界に発信するというベクトルでの広報にも是非ご協力頂ければと思います。