• プリント

「人権デー2013」第2回
持てる力を活かして働く

きらりと光る技能
~ユニクロ東京ドームシティラクーア店 尾形勇旗(おがた ゆうき)さん~

hr_day_2013_vol2_1

商品が整然と並ぶユニクロ店舗

きれいに陳列されたおびただしい数の衣服と幅広い年齢層のお客さんで賑わう店舗。その裏で懸命に働く従業員の姿を想像したことがあるでしょうか。知的障害を抱えながらも、技術と丁寧さに自信を持ち、忙しいお店の舞台裏で今日も活躍する人がいます。

尾形勇旗さんは、障害者高等技術専門学校で洋裁を学んだ後、株式会社ファーストリテイリングに入社し、実習を経て約4年前にユニクロ東京ドームシティラクーア店に配属されました。朝8時に出勤すると、開店前の清掃や品出し、商品整理を行います。その仕事ぶりはベテランそのもので、「お願いしたことはお願いした通りにやってくれる」と店長の金杉千亜希さんは言います。今回のインタビューの際も、インタビューを終えて一旦仕事に戻ると尾形さんの表情が引き締まり、慣れた手つきで黙々と作業を進めていました。

本シリーズ第1回では、スポンサーのユニクロと共に社会活動を行っているプロ車いすテニスプレーヤー、国枝慎吾さんにお話を伺いました。ユニクロでは、2001年から「1店舗に1名以上」を目標に障害者の積極的な雇用を進めています。近年は韓国をはじめとした海外店舗での障害者の雇用も始まっています。2013年現在、障害を持つスタッフは全世界の店舗で1154名、全従業員比6.64%と、ユニクロは、厚生労働省による法定雇用率2.0%を大きく上回っている企業の一つです(※)

hr_day_2013_vol2_2

ミシンでの補正の仕事は器用な手さばきで

特に、尾形さんが好きだと言う裾上げなどの補正の仕事では、「尾形さんには、ミシンの練習をしている新人のスタッフを助けてもらっています。とても助かります」。2008年には、障害を持つ人々が職業技能を競い合う祭典「アビリンピック(全国障害者技能競技大会)」に出場し、得意のミシンで見事、金賞を受賞、2011年日本代表として参加した韓国・ソウル開催の「国際アビリンピック」では銀メダルを獲得しました。実際に補正室でミシンをかける様子を見せていただきましたが、目を疑うほど正確かつ迅速で、まさに熟練の技でした。

毎朝の品出し作業においても、尾形さんの丁寧な仕事ぶりが伺えます。ユニクロでは商品が一つひとつビニール袋に入った状態で入荷されるため、そこから出してハンガーにかけ、サイズ表示を付けるなど、売り場に並べるまでには様々な工程があるとのこと。店長の金杉さんによると、「尾形さんのきちんとした作業のおかげで、他のスタッフたちはただそれを売り場に出すだけになり、たくさんの量をきれいに出すことができます。この店舗はエリアの中でも‘きれいなお店’という評価をもらっています」

hr_day_2013_vol2_3

2011年9月の国際アビリンピックにて
銀メダルを獲得(韓国・ソウル)

仕事で苦労したことは?という質問に対して、尾形さんは「ありません」と即答されました。そして、将来の夢については、「ずっとここでの仕事を続けられるように頑張ります」と、現在の仕事に対する意欲を見せてくれ、真剣に取り組みながらも毎日の仕事を心から楽しんでいることが伝わってきました。今やこの店舗にとって尾形さんは欠かせない存在となっています。

※)「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」に基づき、日本の事業主には従業員の一定割合以上の障害者を雇用することが義務付けられています(法定雇用率)。民間企業に課される法定雇用率は、2013年に従来の1.8%から2.0%へと引き上げられました。

IT業界の荒波の中で
~ヤフー株式会社ピープルデベロップメント本部人事企画室 岸本雅樹(きしもと まさき)さん~

hr_day_2013_vol2_4

パソコンに向かう岸本さん(ヤフー本社)

東京ミッドタウンにあるヤフー本社で働く岸本雅樹さん。岸本さんは、頸椎の損傷により上肢と下肢に障害を抱えています。社内には、四肢の障害、聴覚、視覚の障害、心臓その他臓器の障害を持つ方々がスタッフとしていらっしゃるそうです。障害者の雇用は本社のみならず全国の事務所にも広がり、それぞれの技能、適性に合わせて様々な職種で働いています。しかし、障害者の雇用に関しても、勢いのある企業ならではのお話を聞くことができました。

「障害をお持ちの方でも、その人が持つ最大限の能力を発揮していただいています。評価や報酬の制度も健常者の方と全て一緒ですので、‘フラット’という感じですね。中に入ったら逆に甘えられない、他の方とあくまでもスタンスは一緒というのはあります」岸本さん自身、特別扱いをされたくない、他の人と一緒の土俵で仕事をしたいという思いを胸に就職活動をし、あえて変化のあるIT業界に飛び込みました。「会社では障害者を特別視していません」と、競争の激しい業界で働く人の覚悟が伝わってきました。

hr_day_2013_vol2_5

バリアフリー化が進んでいる
東京ミッドタウンにあるヤフー本社。
多機能トイレも各階に完備されている

「社内では、障害者の方々が最大限のパフォーマンスを発揮できるようサポート体制は整っています。社内でコミュニケーションをとる際には、電話やメールに加えて、チャット機能がよく利用されています。聴覚障害のある方や移動に時間がかかる方にとっても便利な手段です。また、施設全体で段差が少なく、障害者でも使いやすい多機能トイレが各階に完備されているなど、オフィスのバリアフリー化も進んでいます」このように、日頃、障害を意識せずにいきいきと働ける環境があることが、仕事を長く続けられる秘訣のようです。さらに、ヤフーでは週に1度、業務内容や職場環境について直属の上司と1対1で話す機会を設けています。問題がある場合には、関係部署や人事と連携して解決を図ります。岸本さんも車いすで電車に乗ることが難しいため、車での通勤を認めてもらっています。

人事という仕事について岸本さんは、「人事には社員のモチベーションや組織全体に対する大きな影響力があります。そんな責任ある仕事ができるということが、自分のやりがいです」と話してくれました。

hr_day_2013_vol2_6

仕事への意気込みを熱く語る岸本さん
(ヤフー本社)

そして、今後の目標をこう語ります。「障害を持っているという事実は、今後生きていく上でずっとあります。しかし、そことうまく付き合いながら最大限に自分の力を発揮して、会社からもっと信頼される存在になっていきたいと思っています。人事は、経営に近い立場での仕事で、社員と関わる機会も多いです。経営側にも社員にも信頼されながら、会社の中心的な存在になって、大きく活躍していきたいなと思っています」障害に対する周囲の理解やサポートのみならず、岸本さんご本人の強い向上心が感じられたインタビューでした。今後のご活躍がますます期待されます。