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「人権デー2013」第3回
日本の企業に広めたい「心のバリアフリー」
~横河電機 CSR部CSR課 箕輪優子(みのわ ゆうこ)さん~
~横河電機 技術企画センター 齊藤一(さいとう はじめ)さん~
~横河ファウンドリー 千島由芽乃(ちしま ゆめの)さん~

「YOKOGAWAグループの障害者雇用への熱心な取り組みは、この人に会ってみればすぐにわかります」このようなご紹介があって、箕輪優子さんにお話を伺う運びとなりました。横河電機は1992年以降、「障害者の雇用の促進等に関する法律」で事業主に義務付けられている法定雇用率を超える障害者雇用を続けていましたが、1998年7月に知的障害者も雇用義務制度の対象とする法改正がなされたことをきっかけに、知的障害者を積極的に雇用することができるよう特例子会社「横河ファウンドリー」を1999年に設立しました。箕輪さんは社内で「横河ファウンドリー」設立を提案した中心人物です。横河ファウンドリーは、設立後3年も経たない内に経営黒字化を達成し、知的障害や発達障害のある人々の力を活かす企業経営の成功例として広く知られています。現在、この会社の業務は、知的障害や発達障害のある社員24名、知的障害と聴覚障害の重複障害のある社員1名が担っています。業務内容は、名刺、ゴム印、銘板(製品に貼るラベル)の作成、パソコンでのデータ入力、書類の発送代行など、多岐にわたっています。

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特例子会社「横河ファウンドリー」設立の中心メンバー、箕輪優子さん。現在は横河電機のCSR部に所属

「『障害があるからできない』という誤解や決めつけをしないことが重要です。能力が十分に発揮できない時には『障害』を理由にせず、職場環境は最適か、適材適所を実現できているか、などを再度確認することが肝要です。例えば自閉傾向のある方の中には、こだわりが強い方もいらっしゃいます。日常生活では支障となる場面もある『こだわりの強さ』が、データ入力作業では『正確さ』に結びつき強みとなっています」と箕輪さんは語ります。会社のポリシーは、「適材適所」。知的障害のある社員それぞれの得意分野を見極め、それぞれの得意分野が異なっていてもそれらの人々を集めて作業工程を分担し合えば、組織としての成果が出せるという考え方です。

障害のある社員が成長し続けられるかどうかには、管理職のマネージメント能力が大きく影響していると箕輪さんは言います。「障害がある部下に本気で期待をし、長所を生かし、成長し続ける機会を継続的に提供すること。職場環境を整え適材適所を実現することはもちろんですが、指示をする側のコミュニケーション能力も不可欠です。説明不足だったり、例え話が多かったりすると明確に伝わらなくなります。障害の有無に関わらず、相手に理解してもらうには、伝える側の責任が大きいのです」箕輪さんは、横河電機で1992年2月から1年間取り組んだ「ノーマライゼーションプロジェクト」の一環で開催した社内手話講習会をきっかけに手話を習得しました。現在でも、聴覚に障害のある同僚の良き理解者となっています。

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パソコンでの業務に取り組む千島さん
(横河ファウンドリーにて)

次にお会いしたのが「横河ファウンドリー」入社12年目のベテラン社員のひとり、千島由芽乃さん。彼女には知的障害があります。業務の内容について尋ねると、自信を持ってはきはきとこう答えてくれました。「一番好きな仕事は、手紙の封入作業とゴム印作成です。私は、手紙を入れるのも、書くのも得意だからです」その他にも社内で使うユニフォームのクリーニングの受付や、名刺作成、データ入力などを行っています。千島さんは同じく知的障害者の同僚たちに元気な声をかけながら、作業場を丁寧に案内してくれました。千島さんの上司伊藤直(いとう ただし)さんによると「ものづくりの会社なので、品質、納期、コストでお客様の信頼を得ないと仕事がなくなります。みんなの働く場がなくなることになります。職場では、お客様から信頼される仕事をするよう伝えています」

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簿記検定の合格証の前で
(横河ファウンドリーにて)

「入社前に職業訓練機関でパソコンの勉強をしたのですが、実際にはここに来てからパソコンを使えるようになりました。アビリンピックでは、オフィスアシスタント技能競技(文書の三つ折り作業、宛名シール貼り作業、封入作業、封筒の仕分け作業の4つの課題)で金賞を取りました。パソコンデータ技能競技(アンケートはがき入力、顧客伝票修正、帳票等作成の3つの課題)では3位を取れて嬉しかったです」アビリンピックとは、障害を持つ方々が技能を競い合い、職業能力の向上と、社会の障害者雇用への理解を深めることを目的とした大会です。横河ファウンドリーからは毎年多くの社員が参加し、優秀な記録を残しています。将来の夢は?「アビリンピックのパソコンデータ技能競技で金賞を取ることです。あとは、着物が好きなので、プライベートでは着物の着付け師の資格を取得したいです。花嫁や七五三や、成人式などの着付けができるようになりたいです」と、仕事とプライベートそれぞれに目標を持つ千島さんの意欲的な姿が、職場を元気にしているようです。

箕輪さんの手話を介して聴覚障害者の社員、「横河電機」入社21年目の齊藤一さんにもお話を伺うことができました。技術企画センター所属の齊藤さんは、横河電機全社で使用する電気系設計ツールとサーバーの管理、および、技術部の開発効率の向上のための企画に関わっています。「今の職場は企画からの仕事で気に入っています。頭の中で情報を整理することで、論理的な考え方ができるようになりました」と、齊藤さんは自らの成長を実感し、その喜びを手話で伝えました。

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職場の同僚と、筆談で打ち合わせを行う齊藤さん(右)
(横河電機にて)

「障害を意識するあまり、これは齊藤さんには難しいのかな、という勝手な思い込みで彼の持っている能力育成のチャンスを失うことにならないよう気を付けています」と上司の網代直隆(あじろ なおたか)さんは言います。周囲の社員の皆さんも齊藤さんとのコミュニケーションを工夫しながら、部署の効率向上に努めています。例えば、齊藤さんに一度に伝える情報量はどうしても限られるため、伝えたい内容をまず整理して伝えることを心掛けているそうです。また、外部の業者さんとの打ち合わせでは、ある程度話がまとまった段階でいったん議論を中断し、それまでの内容を齊藤さんに伝えるようにしているとのことでした。

横河電機は2009年1月、国連グローバル・コンパクト(主に民間企業が、国連の提唱する人権・労働・環境・腐敗防止に関する10原則への支持を表明するイニシアチブ http://www.unglobalcompact.org/)に参加しています。YOKOGAWAグループの積極的な障害者雇用は、障害の有無に関わらず、すべての社員の働く意欲を上げていることが今回のインタビューを通して感じ取ることができました。社員一人ひとりが障害について正しく理解し、障害者と共に成長し続けようとする姿勢と環境がそこにあります。働く人に生きがいを与えられるこのような積極的な障害者雇用が、日本中の企業にもっと広まっていくことが期待されます。