• プリント

先住民族出典「国連の基礎知識」

先住民族は世界のもっとも不利な立場に置かれているグループの1つを構成する。国連はこれまでにもましてこの問題を取り上げるようになった。先住民族はまた「最初の住民」、部族民、アボリジニー、オートクトンとも呼ばれる。現在少なくとも5,000の先住民族が存在し、住民の数は3億7,000万人を数え、5大陸の70カ国以上の国々に住んでいる。多くの先住民族は政策決定プロセスから除外され、ぎりぎりの生活を強いられ、搾取され、社会に強制的に同化させられてきた。また自分の権利を主張すると弾圧、拷問、殺害の対象となった。彼らは迫害を恐れてしばしば難民となり、時には自己のアイデンティティを隠し、言語や伝統的な慣習を捨てなければならない。

1982年、人権小委員会は先住民族に関する作業グループを設置した。作業グループは「先住民族の権利に関する宣言(Declaration on the Rights of Indigenous Peoples)」の草案を作成した。1992年、地球サミットは先住民族の集団の声に耳を傾けた。先住民族は彼らの土地、領土、環境が悪化していることに懸念を表明した。国連開発計画(UNDP)、ユニセフ、国際農業開発基金(IFAD)、ユネスコ、世界銀行、世界保健機関(WHO)など、国連のさまざまな機関が先住民族の健康や識字力を改善し、また彼らの先祖伝来の土地や領土の悪化と闘うための事業計画を実施した。ついで総会は、1993年を「世界の先住民の国際年(International Year of the World's Indigenous People)」と宣言し、それに続いて、1995‒2004年が「世界の先住民の国際の10年(International Decade of the World's Indigenous People)」、2005‒2015年が「第2次世界の先住民の国際の10年(Second International Decade of the World's Indigenous People)」に指定された(www.un.org/esa/socdev/unpfii/en/second.html)。

こうした先住民問題に対する関心が強まっていることを受けて、2000年、経済社会理事会の補助機関として「先住民問題に関する常設フォーラム(Permanent Forum on Indigenous Issues)」(www.un.org/esa/socdev/unpfii)が設置された。フォーラムは政府専門家8名と先住民専門家8名の計16人の専門家で構成される。先住民問題について経済社会理事会に助言し、国連の関連した活動を調整し、また経済社会開発、文化、教育、環境、健康、人権など、先住民族の関心事項について審議する。さらに、「先住民問題に関する機関間支援グループ」が設置された。

2007年は、画期的な「先住民族の権利に関する宣言(Declaration on the rights of Indigenous Peoples)」が総会によって採択された年であった。宣言は、文化、アイデンティティ、言語、雇用、健康、教育に対する権利を含め、先住民族の個人および集団の権利を規定している。宣言は、先住民族の制度、文化、伝統を維持、強化し、かつニーズと願望に従って開発を進める先住民族の権利を強調している。また、先住民族に対する差別を禁止し、先住民族に関係するすべての事項について完全かつ効果的に参加できるようにする。それには、固有の生活様式を守り、かつ経済社会開発に対する自身のビジョンを追及する権利も含められる。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、こうした発展においてきわめて重要な役割を果たした。宣言の実施がOHCHRの優先課題である。同事務所は先住民問題に関する機関間支援グループを積極的に支援し、国連の国別チームやOHCHRの現地事務所のために先住民族問題に関する研修を実施している。また、先住民族の中で能力の育成をはかっている。また、5人の先住民族代表からなる「先住民族のための任意基金評議員会」にサービスを提供している。(任意基金は、先住民族社会と団体の代表が先住民問題に関する常設フォーラムと先住民族の権利に関する専門家機構の年会期に参加できるように支援する。)人権高等弁務官事務所はまた、先住民族の人権と基本的自由の状況に関する特別報告者を支援し、また「先住民族の権利に関する専門家機構(Expert Mechanism on the rights of Indigenous Peoples)」を支援する。専門家機構は2007年に設置され、5人の専門家で構成される。先住民族に関連する問題について人権理事会を支援する。2008年の専門家機構の第1回会期に続き、OHCHRは専門家機構とともに、2009年に人権理事会に提出された教育に対する先住民族の権利に関する研究について作業を行った。同事務所はまた、先住民族の権利を向上させるために特定の国や地域を対象にした活動も行っている。立法イニシアチブを支援し、資源採掘産業や孤立した先住民族の権利などのようなテーマ別の作業を進めている。