• プリント

難民の保護と支援出典「国連の基礎知識」

p_image_252

UN Photo/UNHCR/Alexis Duclos

2010年、国連難民高等弁務官事務所(Office of the United Nations High Commissioner for Refugees: UNHCR)によると、世界で強制的に避難を余儀なくされた人は4,330万人を数えた。1990年代半ば以来の最高の数である。この中には2,710万の国内避難民(IDPs)、1,520万人の難民、98万3,000人の庇護を求める人々が含まれる。1,520万人の難民のうち、1,040万人がUNHCRの責任の下にあり、470万人がパレスチナ難民で、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の管轄のもとにある。

2,600万人以上の人々――1,040万人の難民と1560万人の国内避難民――が、2009年末現在で、UNHCRから保護もしくは支援を受けていた。2008年度に比べて100万人以上の増加である。2000年までに、UNHCRは60カ国でおよそ660万人の無国籍者の身元を明らかにした。しかし、世界の無国籍者の総数はもっと高く、およそ1,200万人と推定されている。

開発途上国は世界の難民の5分の4を受けいれている。平均して、UNHCRが支援する人の49パーセントが女性と女児である。彼女たちは難民と庇護を求める人々の47パーセントを占め、国内避難民と帰還者(元難民)の総数の半数を占める。難民と庇護を求める人の41パーセントは18歳未満の子どもたちである。

2009年現在で、UNHCRの責任の下にある世界に難民のうち、アフガニスタンとイラクの難民が50パーセント近くを占めた。世界の難民のうちの4人に1人がアフガニスタンからの難民(290万人)で、71カ国の受入国に住んでいた。イラク難民は第2番目に多い難民グループで、180万人が主に隣接の国々に庇護を求めている。ソマリア難民は3番目に多い難民グループで、人口のおよそ27パーセントが人道支援を必要としている。推定150万人が国内避難民で、そのうちの5分の1が2010年の1年間で生じた数である。

UNHCRは戦後の歴史の中で発生した主要な緊急事態のいくつかにおいて主導的な人道機関の1つであった。たとえば、第2次世界大戦後のヨーロッパでは最大の難民を生み出したバルカンで、湾岸戦争の余波の中で、アフリカの太湖地域で、コソボや東ティモールからの大量出国において、アフガニスタンの帰還作戦において、そしてより最近ではイラクやソマリアの南部や中部からの難民の集団脱出において、UNHCRは主導的な人道機関としての役割を果たした。

難民とは、人種、宗教、国籍、政治的意見もしくは特定の社会的集団の構成員であることを理由に迫害の恐れのあるという十分な理由のある恐怖を有するために自国からのがれ、かつ自国へ帰ることができず、またそれを望まない者であると定義されている。難民の法的地位は2つの国際条約、すなわち1951年の「難民の地位に関する条約(Convention relating to the Status of Refugees)」と1967年の「議定書(Protocol)」によって定義づけられている。難民の権利や義務も規定されている。147カ国が条約と議定書のいずれか、もしくは双方に加入している。

UNHCRのもっとも重要な任務は難民の国際保護である。庇護を求めることができることなど、難民の基本的な人権が尊重されるようにし、かついかなる者も迫害を恐れる理由のある国へ強制的に送還させられることがないようにする。その他、以下のような支援を行う。

  • 大量の難民の移動を含む大規模な緊急事態の際の支援
  • 教育、保健、住居のような分野における通常の支援
  • 難民の自立とホスト国への統合を促進する支援
  • 自発的な帰還
  • 自国へ帰還できない難民で、最初に庇護を求めた国で保護の問題に直面している難民のための第3国での再定住

UNHCRの任務は難民を保護かつ支援することであるが、難民のような状況のもとで生活するより広い範囲の人々を援助するよう求められることがますます多くなった。たとえば、自国内で避難している人々、一旦帰還するとUNHCRのモニタリングと援助を必要とするような元難民、無国籍者、自国外で一時的な保護を受けるが難民としての完全な法的地位に当てはまらない人々である。現在、難民は、UNHCRが支援の対象としている人々の中では2番目に大きいグループである。

庇護を求める人々とは自国を出国し、他の国で難民として認定されるよう申請したが、まだ結論が出ていない人々である。2010年初め、このカテゴリーに入る100万人近くの人々を支援した。庇護を求める人のおもな目的地は南アフリカで、2009年だけでも新たに22万2,000人の要請があった。次いで、アメリカ、ケニア、フランス、カナダ、イギリス、ドイツと続いた。アフガニスタンが庇護を求める人々が多い国で、2009年、2万6,800人のアフガニスタン員が難民の地位を求めていた。2008年にはその数が1万8,500人であったので、45パーセントの増加である。アフガニスタン人は、庇護を求める申請書を提出した人々のおよそ7パーセントに当たる。アフガニスタンに次いで庇護を求める人が多い国はイラク、ソマリア、ロシア、中国である。

2009年、およそ220万人の国内避難民が故郷へ帰ることができた。しかし、自発的に帰還したのはわずか25万1,000人であった。1990年以来の最低の数である。難民問題の3つの主要な恒久的解決法は、1)安全かつ尊厳をもって母国へ自発的に帰還すること 2)可能ならば、庇護の国への統合すること 3)第3国へ再定住すること。自発的な帰還は、一般に好ましい選択肢だと見なされている。しかし、多数の人々が突然に帰還すれば、脆弱な経済社会基盤は早急に対応できなくなる。帰還難民が帰国後に自分たちの生活を再建できるようにするために、UNHCRは各種の機関とともに、社会への再統合をはかる。このためには、必要としている人々に対する緊急支援、荒廃してしまった地域のための開発計画、そして雇用創出が必要である。平和、安定、安全保障、人権尊重、持続可能は開発、こうしたことすべてを効果的に結びつけることが難民問題の恒久的な解決に不可欠である。

自分の国で難民として

国内避難民(internally displaced persons: IDPs)とは、戦争や一般化した暴力、人権侵害もしくは自然および人為の災害を避けるために自分の故郷から逃げ出さざるをえなかった人々であるが、国境線を超えなかった人々のことである。内戦によって世界の各地で大量の国内避難民が生まれた。2010年、国内避難民の数は2,710万人と推定され、難民の数の2倍近くである。難民は一般に第二の国で安全な場所や食糧、住居を得ることができ、かつはっきりとした国際法や条約によって保護される。しかし、国内避難民の場合、交戦者の慈悲で進行中の紛争の中に閉じ込められ、しかも救援は運任せで、不可能な場合もある。そうした人々に対する第一義的な責任は政府にある。しかし、政府はしばしば助けることができないし、そうする意思がないこともある。時には「国家の敵」とみなすこともある。

それにもかかわらず、国内避難民も難民と同様に即時の保護と支援を必要とする。帰還や再定住など、長期的な解決も必要である。UNHCRはいろいろな地域や国でそうした人々への援助をますます求められるようになった。たとえば、コロンビア、コートジボアール、コンゴ民主共和国、イラク、レバノン、スリランカ、東ティモール、ウガンダ、その他である。難民の地位というよりは、人道的ニーズに基づく援助の提供である。しかし、大変な責任を負う手ごわい仕事である。ソマリアだけでも、2010年、150万人の国際避難民がいたと推定される。パキスタンでは、対立や自然災害のために推定160万人が国内避難民となっている。

いかなる国連機関も単独で国内避難民を保護、支援する任務も資源も持たない。そのため、機関間常設委員会(IASC)は、2005年に、それぞれの機関が人道危機に応えて資源をプールする協働モデルを開発した。この革新的な「クラスター・アプローチ」のもとに、UNHCRは保護、緊急シェルター、キャンプの調整と管理に関係するクラスターに指導的責任と説明責任を持っている。

地球の温暖化と環境難民

ますます多くの学者や国際機関が、地球温暖化によって海水面が上昇し、砂漠化、帯水層の枯渇、気象がもたらす洪水、その他の深刻な環境上の変化によって世界の何百万という人々が避難民になると予測するようになった。南太平洋のカートレット諸島は海面上昇によって消えつつある。島民の苦境は増大する問題の1つの例である。

東京に本部を置く国連大学(UNU)によると、環境問題によって既に恒久的な人口移動があり、いずれ何億もの人々に移動を余儀なくさせる可能性もある。しかし、現存の国際文書の下では環境難民は認められていない。状況は非常に複雑で、グローバルな機関は1951年の条約が定義する難民のニーズを満たすことに精いっぱいである。国際社会は、国際的な枠組みによって保証された効果的な措置を持ってこの新しいタイプの難民に対処すべく準備を進めなければならない。

避難する人々

地域別
アフリカ 10,336,239
アジア 13,624,502
ヨーロッパ 1,087,700
ラテンアメリカ・カリブ   3,898,344
北アメリカ 3,934
大洋州 2,519
その他 7,207,568
合計:36,460,806


註:2010年1月1日現在でUNHCRが支援する人々の数のリストで、難民、庇護を求める人、帰還者、国内避難民、その他関心を寄せる人々が含まれる。表にはUNRWAが支援する470万人のパレスチナ難民は含まれていない。しかし、イラクやリビアのようにUNRWAの活動地域外に住むパレスチナ人はUNHCRの関心事である。