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難民の保護と支援出典「国連の基礎知識」

UN Photo/UNHCR/Alexis Duclos

2015年末現在、国連の難民機関の国連難民高等弁務官事務所(Office of the United Nations High Commissioner for Refugees: UNHCR)(www.unhcr.org)によると、世界で強制的に避難を余儀なくされた人は6,530万人を数えた。この中には4,080万人の国内避難民(IDPs)、2,130万人の難民、320万人の庇護を求める人々が含まれる。さらに、世界には1,000万人に達すると推定される無国籍者がいる。

2015年末現在で、5,300万以上の人々がUNHCRから保護もしくは援助を受けていた。そのうちの1,610万人が難民で、3,750万人が国内避難民であった。2014年に比べ690万人の増加であった。さらに520万人のパレスチナ難民が国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の援助を受けていた。

1,620万人の難民のうち、半数以上(54パーセント)が3カ国、すなわちシリア・アラブ共和国(490万人)、アフガニスタン(270万人)、ソマリア(110万人)からの難民であった。開発途上国は世界の難民の86パーセントを受け入れている。トルコは最大お250万人の難民を受け入れた。レバノンは国の人口との関係では最大の受け入れ国で、およそ国民5人に1人が難民であった。18歳以下の子どもは、難民人口のおよそ半数を占めた。一人になってしまった、もしくは親族から引き離されてしまった子どもは、主にアフガニスタン、エリトリア、シリア、ソマリアからの難民で、78カ国で9万8400件の庇護を申請した。

難民とは、人種、宗教、国籍、政治的意見もしくは特定の社会的集団の構成員であることを理由に迫害の恐れのあるという十分な理由のある恐怖を有するために自国からのがれ、かつ自国へ帰ることができず、またそれを望まない者であると定義されている。難民はまた、戦争その他の暴力から逃れた人々も含まれる。難民の法的地位は二つの国際条約、すなわち1951年の「難民の地位に関する条約(Convention relating to the Status of Refugees)」と1967年の「議定書(Protocol)」によって定義づけられている。難民の権利や義務も規定されている。148カ国が条約と議定書のいずれか、もしくは双方に加入している。

UNHCRのもっとも重要な任務は難民の国際保護である。何よりもまず安全にアクセスできるようにすることである。次いで、普通の市民として自国、庇護を求めた国、もしくは第三国で生活基盤を再度築くことができるようにすることである。UNHCRの任務は援助を提供し、難民のために他の機関が実施している活動を調整することであるが、1951年に発足した時は、保護の法的側面とアドボカシーの側面が強調された。1954年、UNHCRはその画期的な活動のためにノーベル平和賞を授与された。2回目のノーべル平和賞は、1981年、世界的に知られるようになった難民への世界的な支援に対してであった。

60年代以降、大量の難民が資源の少ない開発途上国に集中するようになった。このことから緊急援助がUNHCRの事業のますます目に見える側面となるようになった。難民が自己の幅広い権利を享受できるようにする活動を網羅するものであった。彼らの権利は物理的な安全保障から身分証明書や適切な生活水準、健康と教育へのアクセスにまで及んでいた。

1970年代には、UNHCRは、その正規の責任として、その保護を無国籍者にまで拡大するよう総会から求められた。いかなる国も自国市民として認めない人々である。無国籍とは、われわれが当然のものとして受けているほとんどの権利を奪いとられた人々である。学校に入学することも、法的な雇用を求めることも、結婚することも、死者を葬ることもできない。UNHCRは関係国とともに、無国籍の原因を明らかにし、無国籍の発生を防止し、無国籍者が法的な地位を得、できるならば市民権を獲得できるように支援する。10年間に無国籍を終わらせようとするグローバルなキャンペーンが2014年に始まった。世界の1,000万人に達すると推定されるこうした人々に影響を与える状況についての認識を高めるものである。2015年、UNHCRの無国籍者に関係する任務の対象となった人々は370万人であった。

UNHCRはまた、紛争から避難したが国際国境を越えていない特定グループの人々を対象とした作業も続けている。これらの人々の保護と住居の提供、キャンプの管理が主な仕事である。今日、こうした国内避難民(IDPs)は、UNHCRが関心を抱く人々の最大のグループである。国内避難民とは、戦争、一般的暴力、人権侵害、自然もしくは人為の災害から逃れるために故郷を離れなければならなかったものの国境を越えなかった人々である。2015年にはおよそ230万人の避難民が故郷へ帰ることができた。

より多くの難民が新しい国々で恒久的な解決を見出したものの、ニーズと実際の受け入れ国との格差は拡大している。新規難民の数は増大し、帰国する難民の数は減少した。事態が安定しないで暴力が続いているからである。たとえ帰国しても、彼らは経済社会的な文脈では脆弱である。帰還者(元難民)が帰国後にその生活を再建できるようにするため、UNHCRは幅広い機関とともにこれらの人々の社会統合が可能になるように努めている。

2015年、母国へ帰還した難民は20万1400人だけであった。ほとんどがアフガニスタン(6万1400人)、スーダン(3万9500人)、ソマリア(3万2,300人)、そして中央アフリカ共和国、(2万1600人)であった。同時に、記録的な数の200万人の庇護申請が提出された。ドイツが他の国に比べてもっとも多くの難民を受け入れた(44万2000人)。ついで、アメリカ(17万3000人)、スウェーデン(16万2877人)の順であった。難民や他の避難民の数が増えることから、彼らを支援する資源がニーズを満たすことができない。

2016年9月19日、総会は「ニューヨーク宣言」を採択した。これは、難民や移住者の大きな移動に取り組む加盟国のコミットメントを載せたものである。宣言はとくに、難民の大きな移動を含むそれぞれの事態に対処する包括的な難民のための青写真となる枠組みを発展させるようUNHCRに要請している。このアプローチは緊急人道援助を補足しかつ強化するもので、庇護国の能力を高め、多くの支援機関の早期関与を可能にする。