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人道支援と保護出典「国連の基礎知識」

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UN Photo/UNICEF/Marco Dormino

3つの国連機関、すなわち国連児童基金(ユニセフ)、世界食糧計画(WFP),国連難民高等弁務官(UNHCR)が、人道危機の際に保護と援助を提供することで中心的な役割を担う。

子どもと女性は難民や避難民の大多数を占める。厳しい緊急事態の際は、国連児童基金(United Nations Children's Fund: ユニセフ)が他の救援機関と協力して水と衛生施設のような基礎サービスの再建を助け、学校を再開させ、予防接種や医薬品、その他を家や土地を失った人々へ提供する。ユニセフはまた一貫して、子どもの保護のためにより効果的な行動をとるよう政府や交戦当事者に要請する。紛争地帯では、子どもの予防接種のようなサービスを提供できるように停戦について交渉することもある。そのため、ユニセフは戦争地帯で「平和地帯としての子どもたち(children as zones of peace)」の概念を打ち出し、また「休戦の日(days of tranquility)」や「平和の回廊(corridors of peace)」を創設した。精神的外傷に苦しむ子供のために特別援助計画を実施し、また同伴者のいない子どもたちが両親や近親者と再会できるようにすることも行う。2009年、ユニセフは緊急事態に関連した人道援助で30億ドル近くの援助を行った。

世界食糧計画(World Food Programme: WFP)は、難民や国内避難民も含め、自然災害や人為的災害の何百万という被災者を対象に迅速かつ効率的な救援物資を提供する。WFPの財政的、人的資源のほとんどがそうした危機のために使われる。10年前、WFPが提供した食糧援助3トンのうちの2トンが、人々の自立を助けることに使われた。今日、状況はすっかり変わり、WFP資源の4分の3が人道危機の被災者のために使われている。2009年、75カ国の1億180万人がWFP援助を受けた。これまでなかった460万トンの食糧援助である。2010年、WFPは70カ国以上の国で9,000万人以上の人々に援助を行った。その中には国内避難民、難民、エイズによって孤児となった子ども、紛争や洪水、干ばつ、地震のような自然災害の被災者が含まれる。戦争または災害が発生すると、WFPはまず緊急救援活動を持って迅速に対応し、次いで生活や生計の建て直しを目的に円滑かつ効果的な復興のための活動を開始する。WFPはまた、UNHCRが管理するすべての大規模な難民給食活動のために食糧や資金を動員する責任も負っている。

開発途上国の農村人口は災害に対してもっとも脆弱である。これらの農村のほとんどがその食糧安全保障と生計を農業に依存している。したがって、農業、家畜業、漁業、林業についての国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations: FAO)の専門知識は、緊急救援や復興にとって不可欠である。FAOは、防災、災害の緩和、準備、対応について国々を援助している。FAOの「世界食料農業情報早期警報システム(Global Information and Early Warning System:GIEW)」(www.fao.org/giews)は、世界の食糧情勢に関する最新の情報を定期的に提供する。また、WFPとともに、人為的災害や自然災害ために食糧の供給が不安定な国の食糧事情についての評価も行う。これらの評価に基づいて、緊急食糧援助作戦が作成され、FAOとWFPによって承認される。災害後や複合緊急事態におけるFAOの活動は、農業生活の保護と復興を中心に進められる。FAOは、現地の農業生産を回復させ、それによって食糧援助やその他の形の援助から抜け出し、自立を高め、救援や有害な対処戦略の必要を軽減させることを目指す。

世界保健機関(World Health Organization: WHO)の支援プログラムは、緊急事態や災害の被災者の保健に関するニーズを評価することに焦点を合わせ、保健に関する情報を提供し、調整や計画策定を支援する。WHOは栄養や伝染病の監視、感染症の予防、予防接種、必須薬品や医療器具の管理、性と生殖に関する健康と精神の健康などの領域で緊急援助計画を実施する。WHOは緊急事態発生の国においてポリオを撲滅し、結核やマラリアの発生を食い止めるために特別の努力を行う。

国連人口基金(United Nations Population Fund: UNFPA)もまた、災害が発生すると迅速に行動する。混乱時には妊娠に関係した死亡や性的暴力が急増する。リプロダクティブ・ヘルス・サービスがしばしば利用できなくなる。若い人々はエイズ・ウィルスへの感染や性的搾取に脆弱となる。そして、多くの女性は家族計画サービスを受けられなくなる。緊急事態においては、UNFPAは、危機にある地域社会のリプロダクティブ・ヘルスを保護し、これらの地域社会が危機的段階から再建の段階へと移れるように支援する。

国連開発計画(United Nations Development Programme: UNDP)は、自然災害の緩和、予防、事前対策などの活動を調整することに責任を持っている。復興計画の策定支援や援助資金の動員などをUNDPに要請する政府も多い。UNDPと人道機関はともに、復興および移行期や長期の開発に対する関心が救援活動の中に反映されるようにする。UNDPはまた、元戦闘員の動員解除、包括的な地雷除去、難民や国内避難民の帰還と再統合、政府機関の復旧などの計画を支援する。

提供された資源が最大限に活用されるように、それぞれのプロジェクトは地方自治体や政府の担当官との協議の下に進められる。UNDPは全コミュニティに即時の援助を行う一方で、恒久的な平和、発展、貧困の撲滅のための経済的社会的基礎を確立するための支援を行う。コミュニティをベースにしたアプローチは、何十万人もの戦争や内戦の被害者に緊急かつ永続的な援助を行うことができた。現在、紛争の傷跡を残した多くの地域社会で、国連主導の研修計画や信用制度、インフラ整備が進められ、生活水準を改善することができた。

人道要員の保護

現地における国連職員やその他の人道関係者は依然として攻撃の対象となっている。この数年、紛争地帯で働く国連職員は殺され、拉致され、抑留された。国連職員に対する暴力には強奪、襲撃、レープなども含まれる。国際社会の代表としての国連職員の知名度が高いことから、攻撃の対象になりやすい。そのためかなりのリスクを常に負わされている。このことは2003年8月19日に現実のものとなった。この日、バグダッドの国連現地本部がテロ爆撃を受け、22人が死亡し、150人が負傷した。国連ミッションの団長としてイラクに赴任していたセルジオ・ビエイラ・デメロ国連人権高等弁務官も死亡した職員の一人であった。 それはまさに国連の文民職員を目標としたもっとも残忍な単一の攻撃であった。国連の歴史の中で初めてのことであった。

もう1つの破壊的な攻撃は2007年12月11日にアルジェで起こった。17人の国連職員が死亡し、40人が負傷した。事務総長はこの残虐行為を調査し、世界の各地で勤務する国連職員の安全を改善することについて勧告する独立パネルを設置した。

1994年の「国際連合要員及び関連要員の安全に関する条約(Convention on the Safety of United Nations and Associated Personnel)は、国連職員の安全を確保し、殺害や誘拐の予防対策をとることを国連が活動する国の政府に義務付けている。しかし、2009‒2010年の間に、アフガニスタンからダルフールまで、またソマリアからパキスタンまで、あまりにも多くの国連スタッフと関連要員が思いつきの、または事前に計画を立てた攻撃によって生命を失い、負傷している。

国連職員の保護と人道要員の安全に関する2009年の総会宛報告の中で、潘基文事務総長は、安全上の事件が多発していることや、政治的もしくは犯罪の動機を持って人道要員を目標にする傾向に懸念を表明した。このことはソマリア、スーダン、ハイチでもっとも明らかである。

「私は、この報告の期間に多くの生命が失われたことを深く悲しんでいる。63人の国連職員と人道要員が暴力行為の結果死亡した」と彼は述べた。「国連要員は常に武力紛争、テロリズム、誘拐、いやがらせ、強盗行為、脅迫の脅威にさらされ、非常に困難な状況の下に働かなければならない。」

「ホスト国政府の責任を否定するものではないが、国連は時にはホスト国の能力が限られているような地域で活動しなければならないことは認識されている」と、事務総長は述べた。国際人道支援コミュニティが、国際機関やNGOs、国連の間に安全の取り決めを改善するために「ともに生命を救う(Saving Lives Together)」の枠組みを受け入れたことに歓迎した。

戦時における子どもの保護

今日、世界の30以上の紛争状態に中で、25万人以上の18歳未満の若者が残忍にも兵士として搾取されている。7、8歳の少年や少女もいる。子どもの全兵士の40パーセントは少女であると推定される。戦争や内戦で200万人の子どもたちが殺され、600万人が重傷を負うか生涯の障害者になった。何千人もの少女が暴行やその他の性的な暴力や搾取の対象となっている。ある少年や少女は自宅から誘拐されて両親から引き離された。その他の子どもたちは戦争孤児であった。

こうした悲劇をなくするために、安全保障理事会は、子どもを兵士として利用することを終わらせ、かつ紛争から子どもを守るために一層の努力を行うよう要請した。平和維持活動は子どもの保護をその任務の1つにしている。また、いくつかの平和維持ミッションには子どもの保護に関する文民の専門家も含まれている。

国連は率先して紛争時における子どもの保護に関する規範や基準の作成に取り組んできた。たとえば以下の通りである(www.un.or/children/conflict)。

  • 国際刑事裁判所ローマ規程――15歳未満の子どもを徴募もしくは入隊させること、または敵対行為に直接に参加させることを戦争犯罪に分類している。
  • 子どもの権利に関する条約の選択議定書――強制的徴募および敵対行為の直接参加の年齢制限を18歳とし、かつ任意の徴募のための最低年齢を16歳に引き上げるよう締約国に要請している。
  • 7件の安全保障理事会決議――紛争時における子どもの保護に関する決議11261(1999年)、1314(2000年)、1379(2001年)、1460(2003年)、1539(2004年)と1612(2005年)および1882(2009)。
  • ILO条約182――子どもの兵士を最悪の形態の児童労働であると定義づけ、強制的かつ義務的徴募のための最低年齢を18歳と定めた。
  • ジュネーブ諸条約と追加議定書――子どもは特別の尊重の対象であり、武力紛争時にはいかなる形態の暴行からも保護されなければならないと規定している。また、「必要とする援助とケア」を提供しなければならない。

事務総長の「子どもと武力紛争」特別代表は、1997年以来、グローバルな意識を高め、かつ政府や市民社会の政治的支援を動員することに努めている。特別代表は、戦時における子どもの権利の侵害に関する監視・報告メカニズムを強化し、子どもの福祉を和平の議題に載せることや紛争後の復興計画の中心に子どものニーズを反映させることなど、重要な措置の主要な唱道者である。

「18歳未満ゼロ」キャンペーン(http://zerounder18.org)は、2010年、子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表室が「子供に対する暴力に関する事務総長特別代表」、国連児童基金(ユニセフ)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)との協力のもとに開始した。その目的は、2012年までに「武力紛争における子どもの関与に関する選択議定書」の普遍的批准を達成することである。2010年末までに、国連加盟139カ国が批准した。ユニセフは、その活動の一環として、政府や反政府勢力とともに、子どもの兵士の動員解除、家族との再会、社会への的統合の促進に努めている。