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充実するアフリカの統計

担当:マシンバ・タフィレニーカ
『Africa Renewal(アフリカ・リニューアル)』:2015年8月号

パリ・レホラ南アフリカ統計局主任統計専門家。写真:ITU/ R. Farrell

南アフリカ統計局のパリ・レホラ主任統計専門家は先日、女性の地位委員会の年次会合に出席するため、ニューヨークの国連本部を訪れました。レホラ氏は『Africa Renewal(アフリカ・リニューアル)』のマシンバ・タフィレニーカによるインタビューに答え、アフリカの統計が抱える課題と、統計の質的改善についてアフリカがこれまでに遂げてきた前進について語りました。

Africa Renewal:アフリカでは、統計データの収集に大きな問題があると指摘する専門家がいます。どこに問題があるのでしょうか。

パリ・レホラ:アフリカ大陸は統計面で大きな課題を抱えています。しかし、この問題に対する見方は大きく2つに分かれています。まず、事実というよりも誇張に基づく解釈があります。この見方は極めて賛同者が多く、広く宣伝されています。もう一つの解釈は、確かに困難があることは認めながらも、アフリカは統計を整えつつあるという見方です。これについて触れられることはほとんどありません。

モルテン・イェルウェン氏の著作のように、アフリカが劣悪な統計で世界に嘘をついている、などと主張する研究*は数多くあります。しかし、こうした文献を少し眺めただけでも、その著者が自分たちの主張を正当化するための調査をほとんど行っていないことが分かります。国内生産、国民勘定、国際比較プログラムという点でアフリカの統計を見れば、世界の他の地域と遜色なく、データが劣悪だとすれば、それは国際的な統計プログラムに参加できていないからだということが判明します。

確かに、不備な点はあります。例えば、アフリカがその将来の人口動向や、統計からどのような利益を得られるかを理解するためには、労働市場や教育の成果を把握しなければなりません。しかし、四半期ごとはおろか、年間の雇用統計さえ取っていない国が多くあります。とはいえ、国勢調査という点で見れば、アフリカの統計は充実してきました。状況に差はあるものの、アフリカは一貫した前進を遂げています。いくつか問題はあるとしても、アフリカの統計は整備されてきたといえるでしょう。

それでも、アフリカの統計は信頼できるのか、という声が聞かれますが。

それは非常に興味深い質問です。私たちは数多くの原則に従っています。例えば、国連の「公的統計の基本原則」があります。「統計に関するアフリカ憲章」もでき上がっています。さらに「アフリカの統計調和戦略」もあります。これらはすべて、私たちの統計データ作成を律する公的文書です。そしてもちろん、私たちのデータの質を確保するグローバル・パートナーシップもあります。今では、アフリカ開発銀行が実施するものを含め、データの比較対照や査読も行われるようになっています。データを検証する活動は多く行われているということです。そしてもちろん、消費者物価指数のハーモナイゼーションも行われています。これはフランス語圏諸国で特に進んでいます。コートジボワールには訓練校も設置されています。よって、アフリカの統計学者が信用できるかどうかが問題なのではなく、統計学者が受ける訓練で、質の高い統計を作成できる人材が生まれているのかどうかが問題なのです。事実、世界のその他地域で作成されるものと同等の統計を作成する訓練機関もあります。幅広い統計の範囲をカバーできるソースの問題はあるかもしれませんが、アフリカ人が作成する統計の質という点では、他地域に決して引けは取らないはずです。

不定期の取り組みに依存するよりも、国家統計局が短期間の調査を頻繁に行ったほうがよいのではないかという提言は出されています。私たちは2015年から2024年までを「住民登録および人口動態統計の10年」に指定し、死因を含めてあらゆる出生と死亡を把握しようと努めています。もう少し安価な方法で継続的に重要なデータを収集するための重要な一歩と言えるでしょう。

他の国々は統計データの収集について、南アフリカから何を学ぶことができますか。

それは、南アフリカが他の国々から何を学んだか、ということです。統計データの収集という点で、アパルトヘイト廃止直後の南アフリカは、他のアフリカ諸国とまったく変わらない状況にありました。確かに、近代的な経済と近代的な銀行部門で用いられる極めて高度な経済統計はありましたが、その他の統計は惨憺たる有様でした。アパルトヘイト時代の政府は、消費者物価指数など、自分たちが必要としていた主要統計以外、統計にほとんど関心を向けなかったからです。

国連の統計機関の利点は、統計に関する知識のある人々から支援が得られることにあります。国際統計学会も非常に重要です。これらはいずれも、実務的なコミュニティーとして、私たちの統計改善を加速するうえで不可欠な支援を提供しました。人材養成に投資し、専門家を養成すること、そしてそのうえで、ステレンボシュの地域・都市イノベーション・統計研究センター(CRUISE)などの学術機関に投資することが重要です。南アフリカ統計局はステレンボシュ大学に、統計地理学をいわゆるデータ革命の原動力とするために、知的リーダーシップの拠点となる教授のポストを設けています。

アフリカ諸国の政府と、アフリカの社会・経済問題に関する統計を発表する国連との間では、どの程度の協力が行われているのですか。

私たちが抱える問題を特定し、これに取り組むということだけでも、多くの協力が行われています。例えば、アフリカ経済委員会(ECA)が2004年、その統計センターを崩壊寸前にまで追い込んだのは、統計の重要性をまったく無視していたためでした。私たちが事態を収拾した時に気が付いたのは、ECAが自分たちのものであり、他の誰のものでもないということでした。ECAを強化するためには、私たちアフリカ人自身を強化しなければならなかったのです。そして、私たちが自らを強化するためには、国連統計委員会との関係を構築し、そこから新たに生まれる手法について、視野を広げなければなりませんでした。「統計開発のためのアフリカ・シンポジウム」をはじめとするイニシアティブを通じ、私たちは前進を大きく加速し、統計手法でもキャッチアップすることができました。また、住民登録と統計動態に関するイニシアティブは、パートナーの間でも大きな関心を呼びました。ECAの再活性化は、新たなエネルギーをもたらしましたが、その一方で暗雲も立ち込めています。私たちは成功の姿を知ったために、悪い兆候も掴めるようになったのです。

統計ベースの変更を行ったことで、ナイジェリアがアフリカ最大の経済国となりました。このプロセスでは何が起きたのですか。

いろいろなことがありました。私たちは、アフリカ諸国の政府による統計と投資の軽視について話し合いました。ナイジェリアもその例外ではありませんでした。これが長い間続いたため、経済統計のベース変更を行っていなかったのです。ナイジェリアの経済は急速な変化を遂げたにもかかわらず、政府はそれを正確に測定していませんでした。石油の産出量の測定ばかりを注視し、フォーマル・セクターにも、映画産業(通称ナリウッド)にも目が行かなかったのだと思います。この問題はようやく解決しました。

ベースを変更する際には、各部門や構造の経済への寄与度がどれだけかを把握し、それぞれにウエイトを与えたうえで推計を行い、経済の脆弱性を判断します。ナイジェリアは現在、購買力平価で見ても名目GDPで見ても、アフリカ最大の経済国です。一番の課題は、相変わらず貧困が広がり、失業率も高いということです。経済成長はコミュニティーに恩恵をもたらすものでなければなりません。統計を正すことは、そのための第一歩ですが、ナイジェリアはこれをクリアしたと思われます。第二に、成長の恩恵を見ることが必要ですが、この点については、政策立案者が懸命に取り組んでいるところだと思います。

ベース変更を怠ったのは、ナイジェリアだけですか。それとも、アフリカには他にも、長期にわたって経済統計のベース変更を行わなかった国があるのですか。

キャッチアップすべき点はまだ多く残っています。私たちは近代経済の構造を把握するとともに、貿易統計、農業統計、卸売・製造統計といった一次情報を国民勘定に組み込む必要があるからです。ベース変更を怠ったことで、アフリカの信用は地に墜ちました。「アフリカの経済成長は実に素晴らしい」と言っていた人々が、最善の手法によるベース変更が必要となった途端に「そんな結果はあり得ない」と言い出し、しまいには「きちんと測定できていない」と非難するのです。そして、きちんと測定して変化が明らかになると「この変更幅はあまりにも大きい」となります。統計手法に疑いが生じたのは、私たちが規則的にベース変更を行っていなかったからなのです。これだけ皮肉な態度をとるのが人間です。しかし、このように皮肉な言葉を浴びないようにするためには、定期的な見直しを行うしかありません。

こうした皮肉には、アフリカ経済の大半が測定困難なインフォーマル・セクターに支配されているという事実も関係しているのではありませんか。

インフォーマル・セクターは測定可能です。私たちは実際、信頼性の高い手法を用いて大きなインフォーマル・セクターをシステムに取り込んでいます。例えば、南部アフリカ開発共同体(SADC)でインフォーマル・セクターが最も大きいタンザニアは、しっかりした手法を確立しています。南アフリカのインフォーマル・セクターはかなり小さいものの、これを測定する手法は確保しています。

統計の重要性全般について、読者の方々にメッセージはありますか。

アフリカは大きな進歩を遂げましたが、まだ長い道のりが残っています。専門性の高いアフリカ統計学者のチームが、本格的な取り組みを行っていますが、現在はそのための政治的環境も整っています。行動規範を定める「アフリカ憲章」もあります。アフリカ諸国の統計法も改正されています。統計局は抜本的な変革を遂げ、職務能力を高めているだけでなく、人的能力の育成にも最重要課題として取り組んでいます。アフリカの統計は他地域の統計に決して引けを取りません。統計の対象となる事項の範囲という点では、物足りなさが残るかもしれませんが、この問題の解決にもそう長くはかからないはずです。アフリカに関する悲観主義者や懐疑主義者はきっと、アフリカの統計学者について、もっとよく考えてからものを言わねばならなくなるでしょう。

* モルテン・イェルウェン氏の著書名は “Poor Numbers: How We Are Misled by African Development Statistics and What to Do about It” (Cornell Studies in Political Economy)。日本語版は『統計はウソをつく―アフリカ開発統計に隠された真実と現実』(渡辺景子訳、青土社)