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都市化は開発のツール

筆者:ニュートン・カンヘマ
『Africa Renewal(アフリカ・リニューアル)』 2016年4月号に掲載

ナイロビに本部を置く国連人間居住計画(UN-Habitat)のジョアン・クロス事務局長 ©UN Photo/Rick Bajornas

ジョアン・クロス氏は、ナイロビに本部を置く国連人間居住計画(UN-Habitat)で事務局長を務めています。クロス事務局長は『Africa Renewal(アフリカ・リニューアル)』のニュートン・カンヘマとのインタビューに答え、アフリカにおける都市化の影響と、2016年10月にエクアドルのキトで開催予定の、住宅と持続可能な都市開発に関する国連の重要会議「ハビタットIII」について語りました。以下はその抜粋です。

Africa Renewal:アフリカの急速な都市化は、どのような影響を及ぼしていますか? また、アフリカはこの現象に歯止めをかけるべきですか?

ジョアン・クロス:アフリカの都市人口の割合は、今のところ30%程度ですが、これはごく短期間で50%にまで増えるものと見られます。これによって、ガバナンス上の課題のほか、都市はもとより、中央政府による対応能力上の課題も生じます。地方の取り組みへと転換できる都市政策を、国家レベルで策定することが重要です。開発と並行して進む都市化は、課題というよりもむしろ機会と言えます。都市化をしっかりと計画、デザインできる政府は、都市化が社会にもたらす恩恵を受けることができるでしょう。都市化は今後、アフリカにとって大きな機会になると見られます。

つまり、都市化は利益になり得るということですか?

そうです。アフリカ社会のあり方やペースから見て、都市化は開発の結果であるとともに、この開発を加速する原動力でもあるからです。

多くのアフリカ諸国では、政府が既存の都市の混雑を解消するため、新たなメガシティーを開発する傾向にあります。この解決策は持続可能でしょうか。それとも場当たり的な対策にすぎないのでしょうか?

メガシティーは持続的ではないことが多いものの、しっかりと計画すれば、経済的な繁栄につなげることができます。事実、世界にはアフリカのメガシティーをはるかに上回る巨大都市が多くあります。例えば、東京圏には3,500万人以上が暮らしているのに対し、アフリカのメガシティーの人口は1,000万人から1,200万人程度です。問題は規模ではなく、都市が自然発生的でなく、デザインと計画が行き届いた形で発展できるかの都市の能力にあります。メガシティーの出現それ自体が問題なのではなく、計画性のなさが問題なのです。無計画な都市化による問題をため込むことなく、生産性を高められるようにメガシティーを変容させることこそが課題と言えます。

UN-Habitatは、各国政府が環境的に持続可能な形で人間居住を開発できるようにするため、どのような支援を提供していますか?

私たちは加盟国に対し、効率と生産性を向上させるために適用できる都市化戦略に関する助言を行っています。その中には、3つの柱からなるナショナルアーバンポリシーの提案も含まれています。第1の柱となるのはルールと規制ですが、これは都市化に法の支配が伴わねばならないという意味で、重要な要素です。第2の柱となるのは都市デザインの質であり、第3の柱は財政計画です。都市化は膨大な資源を要する高価な取り組みだからです。

アフリカでは、新たな都市が出現すると同時に、スラムも広がっています。スラムの蔓延に取り組むため、アフリカ各国の政府はどのような政策を採用すべきですか?

スラムは、自然発生的な都市化の必然的帰結です。その意味で、スラムは開発の一時的な結果と見なすべきです。スラムの形成を防ぐためには、開発を加速する必要があります。スラムは住宅を得る適正な権利とよりよく関連づけるべきです。スラムの問題だけを切り離して対策を講じることはできません。雇用や所得、訓練、人的資本など、人々の生活に取り組む総合的な政策が必要です。当局は中間層に手が届く価格で住宅を提供する必要があります。これは長く困難なプロセスであり、急進的な解決策はありません。

世界にアフリカ諸国が採用できるベストプラクティスはありますか。キガリやラゴスから何を学ぶことができるのでしょうか?

そうですね。域外にも域内にも多くの経験が蓄積されています。都市化に簡単な早期解決策はありません。なぜなら、それは社会変容のプロセスであり、時間がかかるからです。大事なのは、適切な戦略と、中長期的なビジョンを持って都市化の問題に取り組むことです。私たちは都市が抱える多様な問題に取り組むアイデアを提供しています。私たちはキガリが市街地の拡張、計画的な都市化、質の高い公共空間、そして公共空間と建設可能な空間との間のバランスに関し、新たな理念を導入する支援をしています。ラゴスは、アフリカの超巨大都市の一つに数えられていますが、所得を創出し、国内サービスを持続させ、住民の豊かさを変容させることができる政策を導入する能力を備えた、極めて興味深い大都市の事例と言えます。ラゴスは、アフリカのその他の都市も見習うべき好例を提供しています。

今年はハビタットIIIという重要なイベントが控えていますが、このイベントはアフリカ大陸にとってどれだけの意味がありますか?

これは、トルコのイスタンブールでのハビタットII開催から20年を経て、今年エクアドルのキトで開催される大変重要な会議です。ハビタットIIIでは、この20年間の都市化の動きを見直します。また、ここで合意される都市化戦略を今後20年間実施に移すプロセスの出発点にもなります。今後、都市化の動きが加速することは必至であり、中でもアフリカでは、世界で最も急速な都市化が進むことになるでしょう。私は、アフリカのリーダーたちがハビタットIIIに向け、政府部内の力を結集していることを嬉しく思います。アフリカ諸国は今後、都市化に関する議論に積極的に参加するとともに、これを推進し、深めていくことになるからです。

アフリカのリーダーたちは、ハビタットIIIにどのような成果を期待できますか?

ハビタットIIIは、開発のツールとしての都市化の変容に関する経験を共有する重要な機会となります。私たちは都市化を貧困やサービスの欠如といった問題として捉えがちで、開発を加速する機会としては考えないことが多くなっています。ハビタットIIIでは、都市化を開発ツールとして、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」と整合する観点から考えることになります。

多くのアフリカ諸国は、深刻な都市化の問題を抱えています。このような国々が資金のないまま、十分な人間居住を確保する政策をどのように実施できるというのでしょうか?

都市化対策のための資金調達は、非常に複雑な問題ですが、経済学者によると、都市化により生まれる富は、都市化のコストを上回ります。都市化により生まれた富を、すべてのステークホルダーの間でどのように共有すべきか、ということが問題なのです。例えば、都市化とは単にビルを建てることではなく、街づくりとビル建設の理念のバランスを見極めるという点は、なかなか難しいところです。

気候変動に関するパリ協定に署名が行われたばかりですが、この中にUN Habitatの活動の参考となるものはありますか?

はい。気候変動は都市化の重要な課題です。都市が温室効果ガスの排出源となっている先進世界には、これが特に当てはまります。しかし、気候変動の最も大きな影響を受けるのは、インフラが十分に整備されていない都市です。これには複雑な事情が絡むため、グローバルな取り組みが必要です。つまり、温室効果ガス排出量を削減する措置を講じながら、その影響を受ける都市が新たな条件に適応できるよう支援しなければならないのです。世界には、都市が温室効果ガスの主要な排出源となっている地域と、都市が気候変動の最悪の影響を被っている地域があるからです。

最後に、アフリカへのメッセージをお願いします。

アフリカには、新たな都市化の課題に取り組める大きなチャンスがあります。都市化は波であると同時に、プロセスでもあります。都市化が豊かさを作り出す能力に焦点を絞った戦略を考案すべきです。一番の問題は、このプロセスをどのような方向性、目的、そしてビジョンを持って進めていくかということです。私はアフリカの人々と政府に対し、都市化を機会として、そして開発に向けたツールとして捉えるよう、強く訴えたいと思います。