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SDGs:誰も置き去りにしないために

― デビッド・ナバロ氏インタビュー

担当:マシンバ・タフィレニーカ
『Africa Renewal(アフリカ・リニューアル)』 2016年4月号に掲載

デビッド・ナバロ持続可能な開発目標(SDGs)担当国連事務総長特別顧問

デビッド・ナバロ氏はこのたび、潘基文(パン・ギムン)事務総長の持続可能な開発目標(SDGs)担当特別顧問に任命されました。SDGsは2015年9月、国連加盟国がミレニアム開発目標(MDGs)の後継目標として採択した貧困終結に向けた行動計画です。ナバロ氏は2030年までにSDGsを実現することを目指し、加盟国と協力していくことになります。ナバロ氏は、『Africa Renewal(アフリカ・リニューアル)』のマシンバ・タフィレニーカとのインタビューに答え、次のように語りました。

Africa Renewal:まずは、今回の任命の重要性について聞かせてください。これまでの中で、おそらく最も困難でやりがいのある職務だと思いますが、この新しい仕事について初めて聞いたとき、どんなことが思い浮かびましたか?

デビッド・ナバロ:そうですね。12月に事務総長から電話があって、この仕事について打診されました。最初に思ったのは、自分がアミーナ・モハメッドさんの後任になるよう要請されているということでした。彼女は稀に見るカリスマ的リーダーとして、国連が持続可能な開発目標(SDGs)を作り上げるうえで大きな力となりました。ですから、その後任にあたるポストに就くよう求められたことは、私にとって名誉でした。何しろ巨大で気の遠くなるような責任を伴う仕事ですから。それと同時に、SDGsが世界の人々と地球の将来を決める計画を定めているという点で、恐ろしく重要な仕事でもあります。世界のリーダーたちの野心が適切に実行されるよう、事務総長を支援していくことが求められるという意味で、極めてタフな職務となるはずです。

加盟国その他のステークホルダーと協力し、2030アジェンダの実施を図るというのが、その主な職務の内容ですが、具体的にはどのようなことが必要になりますか?

「持続可能な開発のための2030アジェンダ」実施の作業は、ほとんどが加盟国自身、すなわち各国の政府や担当機関が行うことになります。すでに、各国がこのアジェンダに沿った国家計画を策定する動きは加速しています。この取り組みは国連によって支援されるだけでなく、市民社会や企業、宗教団体、学会、メディアその他による大規模な運動によっても支持されることでしょう。私の仕事は、誰が何をしているか、このプロセスを前進させるために、どこにエネルギーを注げばよいのかについて、事務総長が常に気を配れるよう支援することにあります。

SDGsの達成責任は誰にありますか。目標を達成できない場合、政府にその責任を問うことはできますか?

世界のリーダーがその国民を代表し、目標達成の当事者となります。よって実際のところ、責任は各国政府と国民の双方にあり、国民には自国で目標達成への取り組みがなされることを期待し、リーダーにこれを要求する権利があります。

SDGsを達成するためには、今後15年間で数兆ドルの資金が必要になると見られています。この資金はどこから調達するのですか? また、貧困国に資金を多く配分することを求めるつもりですか?

SDGsは世界のあらゆる国に適用されます。世界のリーダーたちはSDGsを策定した時、これら目標をすべての国の国家開発計画の基盤とするという理念を持っていました。それは、既存の財政支出をSDGsに見合うよう調整すべきことを意味します。そのための資金の多くは、既存の国家予算から調達されます。しかし、当然のことながら追加的資金も必要となります。目標の中には、達成に多くの経費を要するものもありますが、特に比較的貧しい国々においては、各国民に機会を確保し、誰も置き去りにしないようにするための資金が必要です。よって、開発金融は不可欠ですが、場合によってはこれを民間セクターの投資で補わねばなりません。開発資金を確保するため、〔ドナーに対しては〕その支援を維持し、国内の圧力に屈して援助額を引き下げないようにすることが求められます。国連内での私たちの仕事には、貧困国向けの開発援助継続を求めることも含まれています。

専門家の中には、不正な資金の流れを阻止すれば、SDGsの達成に必要な資金は一部捻出できるのではないかという意見も聞かれます。2030アジェンダは、不正な資金の流れの削減を求めるとともに、盗難資産の回復と返還を強化する必要性を定めています。これについては、どのような意見をお持ちですか?

政府に最も必要なのは、公共セクターに必要な資金が国民に裨益することを確保できる公正かつ透明な制度です。これはSDGsの根底を流れる一連の原則の中心でもあります。仮に、貧困国に限らず、〔資金が〕適切な説明責任なしに国外に送金されたり、税金〔の支払を免れるための〕資金流用があったりすれば、SDGsの実現に大きな影響が出ます。税収の適切な使用と、政府資金の適切な使用がSDGs実現に向けて絶対的なカギを握る理由は、ここにあります。

グローバルなテロや過激主義との闘いが、SDGsから資金を奪ってしまうのではないかという不安はありますか?

過激主義やテロの影響を受けている国々の政府からは、若者、特にある程度の教育を受けた若者が、過激派の行動に魅力を感じないようにするため、SDGs実現のための資金を増やしてほしいという声を聞いています。私としては、SDGsへの投資を、暴力的過激主義のリスク削減に絶対に必要な前提条件として捉えています。

ミレニアム開発目標(MDGs)が直面した課題の一つに、各国からの定期的な進捗状況報告がなかったことが挙げられます。SDGsに関する定期報告を通じ、市民への情報提供を確保するという計画はありますか?

2030アジェンダについては、すべての国による定期的なフォローアップと見直しを行う予定です。そのための年次メカニズムとなる「ハイレベル政治フォーラム」は、各国に対し、SDGs実現に向けて何をしたかを説明する機会を与えるものです。フォーラムでの審議は、国民が各国政府の実績に疑問を投げかけ、一部の活動があるべき形で行われなかった可能性があるのはなぜかを理解するとともに、うまく行った分野を評価できるよう、透明な形で進められます。

独自の開発計画を有する国や地域も多くあります。例えば、アフリカ連合(AU)は「アジェンダ2063」を策定しています。SDGsはこれら計画とどのような関係にあるのでしょうか?

世界のリーダーはすべて、SDGsに合意しており、自国の活動の中には直接、SDGsの内容を反映するものがあることも分かっています。この場合には、国家計画をはじめから作り直すのではなく、これをSDGsと整合させることになります。国によっては、まったく手直しが不要なケースもあるでしょうし、逆に、整合性を高めるために国家計画の変更を迫られるケースもあるでしょう。

では、SDGsのターゲットに話を移しましょう。目標の策定に関わったのは誰ですか。豊かな国にも、貧しい国にも、同じターゲットが設定されているのですか?

SDGsのターゲットは、各国が目標達成に向けた進捗状況を判断するための目安として設定されています。各ターゲットについて、各国が進捗状況の検証に利用できる指標(インディケーター)も用意されています。〔このプロセスは〕国を最優先し、国に基づき、国に焦点を絞り、国を中心とするものとなっています。どのターゲットと指標を用いるかに関する決定は、各国に委ねられています。何らかの外部のグループによって押し付けられるものではありません。

「どれも重要なら、何も重要でない」という格言があります。アフリカ諸国が最も優先すると思われるSDGsは何だとお考えですか?

私はこれまで40年以上にわたり、開発の仕事に携わってきたので、特に貧困・弱者層の生活の現状を多く目にしてきました。こうした人々の生活には、複雑な相互関連性があります。農業や気候、ジェンダーの平等、健康と教育といった問題が、極めて密接に絡み合う傾向にあるのです。ある分野や、人間の存在の一側面だけを取り上げ、他の側面と切り離して取り組むことはできません。ですから、私は実際、SDGsで明らかにされた多様な問題をすべて重要だと考えています。その一部分だけを取り上げることは、橋梁の中央にある大きな石を外すのと同じで、そんなことをすれば、橋自体が崩れ落ちてしまいます。だから、すべてが重要なのです。

今から15年後に、世界のほとんどでSDGsが達成されることを楽観視できる理由は何ですか?

私が楽観的なのは、全世界の人々が、人間の諸条件を改善するために合意された目的のもとに結集し、成果の達成に向けて全力で取り組むことができるという、素晴らしい能力を目の当たりにしてきたからです。ニュースではうまく行かないことばかりが報道されていますが、うまく行かないことが1つあるごとに、うまく行っていることは数千あるのです。単にニュースになっていないだけの話です。人々が力を合わせ、気候変動やジェンダーの平等、長引く危機、人権、そして開発資金の調達に重点的に取り組むことにより、目標は達成されることを私に確信させてくれているのは、まさにこの楽観的な見方なのです。