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太陽の恵みを得る

太陽光発電の拡大で、アフリカのエネルギー需要充足を

筆者:フランク・クウォヌ
『Africa Renewal(アフリカ・リニューアル)』 2016年4月号に掲載

モロッコにある世界最大の太陽光発電所。最終的には110万人に電力を供給する予定だ
Photo: World Bank/Dana Smillie

 

ニジェールからチャドに至るサハラ砂漠に広がる広大な砂地は、テネレ砂漠とも呼ばれています。その南端に位置するニジェール東部のディファ州には、1世紀前の植民地時代に建設された要塞の廃墟があります。米航空宇宙局(NASA)によると、その周辺にあるアガデムと呼ばれるオアシスは、太平洋の中央部にあるハワイやキリバス島に次ぎ、世界で最も日照量の豊富な地点の一つに数えられています。

NASAの研究者から入手したデータは、1983年から2005にかけ、アガデムには1日1平方メートル当たり平均6.78キロワット時という強烈な日差しが降り注いだことを示していますが、これは当時、米国の典型的家庭で毎日の給湯を賄える量の電力を生産できるエネルギーに相当します。

ニジェールに限らず、サハラ砂漠一帯は巨大なソーラーパネルさながらであり、専門家は現在、この地域のエネルギー見通しを一気に改善する存在として、この発見に注目しています。大規模なソーラーパネルの設置などを通じた太陽エネルギーの捕集は、アフリカの大部分に電力を供給できる可能性を秘めています。
しかし、モロッコのワルザザート太陽光発電所を除き、サハラの持つ巨大なエネルギーの潜在性を活用しようとする大がかりなプロジェクトは見受けられません。ニジェールの事例はある意味、豊富な日射量にもかかわらず、捕集が相対的に進んでいないアフリカの逆説的な現状を物語るものと言えます。

地球上で最も日射量が多い10カ国のうち、チャド、エジプト、ケニア、マダガスカル、ニジェール、南アフリカ、スーダンの7カ国はアフリカに位置しています。アフリカの他の国々ではこの数年の間に、数件の太陽光発電プロジェクトが実施に移されており、新たなプロジェクト構築に対する関心も着実に高まっています。しかし、アフリカでの太陽光発電開発は、まだまだ本格化していないのが現状です。

深刻な電力不足

米国を本拠とする経済・エネルギー市場調査会社HIS Technologyによると、2013年には全体で312メガワット程度と見られていたアフリカの太陽光発電能力は、2015年に1,315メガワットへ増大していますが、これは2017年までに3,380メガワットへと、わずか4年間で10倍に成長する見込みです。

HIS Technologyの太陽光発電上級アナリスト、ジョセフィン・バーグさんは『Africa Renewal(アフリカ・リニューアル)』の取材に対し「大きな転機は2014年に訪れました。この1年だけで、約900メガワットの能力増強が見られたからです」と語っています。

アフリカ主要都市の市街地では、電力不足が恒常化しています。一方、広大な農村部では依然として、電気のない状態が続いています。

「サハラ以南アフリカの電力不足は極めて深刻だ」コフィー・アナン元国連事務総長が座長を務める「Africa Progress Panel(アフリカ進捗パネル)」は2015年6月、年次報告書『Africa Progress Report 2015(アフリカ進捗状況報告書2015)』でこのように指摘し、さらに次のように付け加えています。「この地域の電力網には90ギガワット(GW)の発電能力があるが、その半分は南アフリカ1カ国が占めている」。この出力量は、人口がサハラ以南アフリカのわずか5%に過ぎない韓国の発電能力を下回っています。

サハラ以南アフリカ全体で、一年を通じて恒常的に電力を供給できているのは、トーゴを含む数カ国にすぎません。その結果、この地域では国内総生産が年間2~4%引き下げられる格好になっています。サハラ以南アフリカの電力の半分を占める南アフリカでさえ、国民は計画停電を免れていません。停電は経済生産性に悪影響を与えていますが、この状況は2017年まで続くと見られており、南アフリカ準備銀行は2015年と2016年の経済成長がこれによって0.6%引き下げられると予測しています。

アフリカ電力部門の劣悪な現状は、干ばつによる水力発電ダムの渇水、燃料価格の上昇による火力発電所運営費の増大、既存インフラの不十分な管理、投資の不足といった原因から生じています。

ポテンシャルの活用

南アフリカは他の国にも増して、電力危機への対応策としての太陽エネルギーに注目しています。太陽光発電の設備容量は2030年までに8,400メガワットに達し、これに風力発電8,400メガワットが加わるものと見られています。数カ所の太陽光発電所の建設がすでに委託されていますが、中でもアフリカ最大の太陽光発電所の一つとなる96メガワット規模の「ジャスパー太陽エネルギー・プロジェクト」は、3万世帯への電力供給を目指しています。事実、2013年の312メガワットから2015年には1,315年へと伸びているアフリカ大陸全体の太陽光発電の増分のうち、約90%はこの2年間の南アフリカでの生産能力向上によるものです。

モロッコは世界でも有数の太陽エネルギー・プロジェクトを実施中であり、2016年2月にはその第1段階が完了し、運転を開始しています。また、同国はすでに2018年の完成をめどに、プロジェクトの第2段階にも着手しています。これによって2020年までに、110万人に電力が供給され、国内のエネルギー需要の14%が賄われる見込みです。

ガーナはンゼマ・プロジェクトにより、地域のソーラー革命をリードする存在となるはずでした。首都アクラから270kmの地点に建設される野心的な太陽光発電所は、2015年に稼働し、10万世帯分に相当する155メガワットの電力を生産するという計画が立てられていました。全国の電力網に接続されるほか、ガーナの近隣国へのエネルギー輸出の増大にも資することになっていました。プロジェクトの後援者は、これによってアフリカの姿は一変すると喧伝していました。しかし、プロジェクト発表の4年後、ンゼマ発電所はまだ実現していません。報道によると、発電所の建設は間もなくスタートする予定であり、早ければ2017年にも完成すると見られています。

アフリカの太陽光発電プロジェクトのほとんどで、遅れが生じる状況が続いています。ンゼマ発電所プロジェクト責任者のダグ・コールマンさんは『Africa Renewal』のインタビューに答え、西アフリカでは、太陽光発電プロジェクトの完成に平均5年から6年を要することを明らかにしています。これに対し、南アフリカでの所要期間は平均で9カ月から24カ月です。HIS Technologyのバーグさんもコールマンさんも、南アフリカの市場がより発展、成熟していることをその理由に挙げています。コールマンさんは「その他の場所では、政策や規制がまだ発展途上の段階にあります」と指摘しています。

世界銀行は、民間投資を妨げる障害として、市場の細分化、取引費用の高さ、見込まれるリスクの大きさ、資本コストなどを挙げています。

世界銀行は昨年前半、「入札者や投資家にとっての開発期間と不確実性」を減らしつつ、「公共料金を引き下げる」ために、「Scaling Solar(スケーリング・ソーラー)」イニシアティブを立ち上げました。世銀グループの国際金融公社が管理するこのプログラムでは、入札と資金調達に関するノウハウを提供し、民間資金によるプロジェクトを2年以内に稼働させるための支援を行うことになっています。国際市場でソーラーパネルの価格が低下を続け、太陽光発電プロジェクトが収益を上げ始める中で、新たな再生可能エネルギー市場は、民間投資家にとってさらに魅力の大きいものとなる、と世銀は見ています。

南アフリカ科学産業研究協議会(CSIR)は8月、2015年1月から6月までに、同国の風力・太陽光発電による節約額が5億8,400万ドルと、前年同期の10倍に達したという試算を発表しました。CSIRは、さらに多くのプロジェクトが稼働を開始する中で、この節約額が増大することを期待しています。

幸いなことに、アフリカで太陽光発電の見通しが明るくなり続ける中で、ソリューションの開発に関心を示す企業も出てきています。昨年8月、米国のソーラー企業SkyPowerはケニアとの間で、今後5年間で出力1ギガワットの発電所を建設する契約を締結しています。

HIS Technologyのバーグさんは「このような大規模プロジェクトの発表は、もう当たり前のことになってきました」と語っていますが、仮に実現する場合でも、こうしたプロジェクトは時間のかかるものになっています。

他のサハラ以南アフリカ諸国も太陽光発電の導入に乗り出す中で、世界銀行のイニシアティブと南アフリカの経験はともに、現状の制約にもかかわらず、アフリカにおける再生エネルギーの将来は明るい可能性を示唆しています。

アフリカに根づく太陽光発電

筆者:アーネスト・ハーシュ

ブルキナファソの首都ワガドゥグ―から北西に向かって伸びる幹線道路沿いの商店では、ありとあらゆる商品が売られています。皮革製品や木製家具、色鮮やかなポリバケツ、グリルチキン、オートバイの部品のほか、最近では新たな商品が見られるようになりました。ソーラーパネルです。

このバサンコ地区では、安価な住宅の建設が進み、人口も急増しています。しかし、電力供給は不安定で、停電も繰り返し起きるため、追加的な電力源に対する需要が高まっています。商店では交換用ソーラーパネルが飛ぶように売れ、零細企業や家庭向けのソーラーシステムの設置や保守を専門に行うビジネスも生まれています。

アフリカ全土の開発専門家は以前から、太陽エネルギー活用の潜在的可能性を指摘してきました。アフリカには一部、石油資源が豊富な国々があるものの、電力供給は必ずしも安定せず、しかも炭素排出によって環境に悪影響が及んでいます。水力発電を大幅に拡大したり、火力発電のポテンシャルを備えていたり、風力発電の開発が可能であったりする国もあります。しかし、アフリカ諸国にはいずれも、豊富な日照という資源があります。

ところが、ソーラー技術のコスト高という経済的現実により、太陽光発電は一般のアフリカ人にとって長い間、手の届かない存在となってきました。

ブルキナファソのポール・カバ・ティエバ首相によると、政府は「クリーンな再生可能エネルギー」への移行計画の一環として、太陽エネルギーを具体的に重視することを決定しました。

政府は、太陽光発電所の建設と、企業に対するソーラーパネル設置の奨励に加え、銀行や金融機関と協力し、太陽光発電設備購入向けの新たな信用供与枠を設けています。

ブルキナファソの太陽光発電への取り組みを資金面で支援している世界銀行のマクタール・ディオップ・アフリカ担当副総裁は、同国の太陽光発電能力が最終的に「数十メガワット」に達すると見ています。