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環境のための行動出典「国連の基礎知識」

国連システム全体が多様な方法で環境の保護に取り組んでいる。この領域での先導機関は国連環境計画(United Nations Environment Programme: UNEP)(https://www.unenvironment.org/)である。UNEPは、世界の環境状況を評価し、国際協力を必要とする問題を明らかにする。国際環境法の作成を支援し、環境への配慮が、SDGsも含め、国連システムの経済社会政策やプログラムに反映されるようにする。

UNEPは、一国だけの行動では対処できないような問題の解決を支援する。また、コンセンサスを築き、国際的合意を作り出すためのフォーラムを提供する。そうすることによって、UNEPは、企業や産業界、科学・学術団体、NGO、市民グループ、その他が持続可能な開発により一層参加するように努める。UNEPの七つの優先領域は、気候変動、生態系の管理、環境管理、化学物質・廃棄物と大気環境、災害と紛争、資源効率、そして調査の対象となっている環境、である。

UNEPが推進、調整する科学研究は、環境に関する多様な報告書を生み出している。たとえば、「グローバル環境概観(Global Environment Outlook)」、毎年出版される「排出ギャップ報告と海洋ごみ:グローバルな課題(Emissions Gap Report and Marine Litter: A Global Challenge)」で、新たに発生する環境問題についての認識を高めることに役立ったばかりか、環境条約に関する国際交渉の引き金にもなった。UNEPは、卓越した研究拠点のネットワークを持ち、「世界自然保護モニタリング・センター(World Conservation Monitoring Centre:WCMC)」、「地球資源情報データベース(Global Resource Information Database: GRID)」、「国際資源パネル(International Resource Panel: IRP)」などが含まれる。

UNEP経済部(Economy Division)は、政府、産業、企業の政策決定者がよりクリーンで安全な政策や戦略、慣行を採択し、天然資源をより効率的に利用し、人間や環境に対する汚染リスクを削減するよう奨励する活動を積極的に進めている。経済部は、より安全できれいな、環境上適正な技術の移転を容易にし、化学物資の管理と化学物質の安全を改善するための能力強化を支援する。また、オゾン層破壊物質の削減を支援し、政策決定者がより良い、十分な情報に基づいてエネルギーの選択を行えるように支援するとともに、政府や民間セクターと協力して、環境に対する配慮がその活動、慣行、生産、サービスに取り入れられるようにする。

「持続可能な金融システムの設計に関するUNEP調査(UNEP Inquiry into the Design of a Sustainable Financial System)」のグローバルな報告書、「われわれが必要としている金融システム(The Financial System We Need)」は、「静かな革命」について述べている。持続可能な要因が金融システムを規制する規則の中に取り入れられている。

UNEPケミカル(UNEP Chemicals)(www.unep.org/chemicalsandwaste)は経済部の化学物質部門で、各国が有害な化学物質に関する情報にアクセスできるようにするとともに、化学物質を安全に生産し、使用し、廃棄できる能力を構築できるように支援する。また、化学物資のリスクを軽減もしくは排除するために必要な国際および地域の行動を支援する。2001年、UNEPは「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants)」の作成に貢献した。これは、長期にわたって環境にそのまま残留し、地理的に広く移動し、生命のある有機物の脂肪組織に蓄積し、人間や野生動物にとって有害である特定の化学物質の排出を削減および廃絶することを目的とした条約である。これには殺虫剤、工業用化学物質、副産物などが含まれる。

これまで、UNEPはいろいろな国際協定を交渉するための触媒の役目を果たしてきた。これらの協定は地球に対する損害を食い止め、もしくは転換させる国連の努力の礎石をなすものである。歴史的意義をもつ1987年の「モントリオール議定書(Montreal Protocol、1987年)とその後の改正(Amendments)は上層大気におけるオゾン層の保護を求めたものである。2016年、モントリオール議定書のキガリ改正のもとでは、200カ国近くの国々がハイドロフルオロカーボン(代替フロン)の使用を徐々に削減し、今世紀末までに摂氏0.5度の地球の温度上昇を防止することに同意した。1989年の「有害廃棄物の国境を越える移動およびその処分の規制に関するバーゼル条約(Basel Convention on the Control of Hazardous Wastes and Their Disposal、1989年)」は、有害廃棄物による汚染の危険を減少させた。FAOとの協力で、UNEPは、1998年の「国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続きに関するロッテルダム条約(1998 Rotterdam Convention on the Prior Informed Consent Procedure for Certain Hazardous Chemicals and Pesticide in International Trade)の交渉を容易にした。同条約のもとに、輸入国は受け取りを希望する化学物質を決定し、かつ安全に管理できない化学物質は除外することができるようになった。

2013年1月、140カ国以上の国々は水銀の排出、放出を防止する法的に拘束力のある条約、「水銀に関する水俣条約」に合意した。

野生生物と生物の多様性に関しては、1973年の「絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(Convention on International Trade in Endangered Species、1973年)が、野生動植物の取引を規制する上で果たした功績が広く認められている。UNEPはまた、1994年の「野生動植物の違法取引に対する協力執行活動に関するルサカ協定(Lusaka Agreement on Cooperative Enforcement Operations Directed at Illegal Trade in Wild Fauna and Flora、1994年)の締結についてアフリカ諸国政府を支援した。1992年の「生物の多様性に関する条約(Convention on Biological Diversity)と2000年の「バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書(Cartagena Protocol on Biosafety)」は、地球上の多種にわたる動植物や微生物を保護し、その持続可能かつ公平な利用を奨励している。UNEPはまた、砂漠化や気候変動に関する条約の交渉や実施も支援してきた。