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開発と平和のためのスポーツの国際デー特集シリーズ
スポーツの力を平和と開発のために
~第1回~ ユースリーダーシップキャンプとレムケ国連事務総長特別顧問

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YLCで車椅子バスケットボールを体験

国連がスポーツの重要性を認識してきたのは、2008年に「国連開発と平和のためのスポーツ事務局(UNOSDP)」が設置されたことからもわかります。国連事務総長の特別顧問であり、現在、UNOSDPのトップを務めるウィルフリード・レムケ氏を中心に、国連は開発と平和のためにスポーツを活用することの理解・促進を図っています。

とりわけUNOSDPが力を注いでいるのが「ユースリーダーシップキャンプ(YLC)」です。2011年に始まったこのプログラムには、開発と平和に向けたスポーツ分野のスタッフや、ボランティアとして携わる18~25歳の若者が世界から集まります。お互いの社会的立場や経験、文化的背景を認め合い、その多様性を生かして学び合うこと、未来のスポーツ界のリーダーを育成することを目標にしています。この度、国連広報センター(UNIC)のインターンは、第8回YLCの取材とレムケ氏へのインタビューを行ないました。若者の目線から取材した様子をお伝えします。

「未来のスポーツリーダーを育成するUNOSDP主催の“ユースリーダーシップキャンプ”が東京で開催」

YLCは1月20日(月)から30日(木)にわたって、UNOSDPと文部科学省の主催で開催されました。8回目となる今回は、アジアを中心とした14カ国から30名が参加し、スポーツを通じてリーダーシップを養うことを目的に様々なプログラムを展開しました。

国連広報センターのインターン3名が取材に訪れたのは、東京武道館(東京都足立区)で行われたYLCの3日目。この日は一般公開日とされており、彼らがどのようなアクティビティーやレクチャーを受けているのかを見ることができました。参加者の多くが英語を母国語としませんが、皆真剣に英語のレクチャーに耳を傾け、ディスカッションを繰り広げました。帰国後のフィードバックにつなげようと、必死にノートに講義内容を書き取る様子も多く見られました。

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柔道-準備体操

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柔道-練習

午後からは実際に体を動かすアクティビティーも。この日は国際パラリンピック委員会(IPC)によるプログラムが実践されました。ブラインドサッカー、ゴールボール、シッティングバレーボールといったパラリンピックでも公式競技とされているスポーツを体験し、新たな知見を広げました。

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車椅子バスケットボール

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ゴールボール

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ブラインドサッカー

また、この日は茶道体験も催されました。難しい茶道のお点前もとても上手に実践することができ、皆得意気な様子。初めて飲む抹茶は苦そうでしたが、運動後の甘い和菓子には笑みをこぼしていました。

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お茶を点てる参加者

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初めて食べる和菓子に興味津々の様子

この他11日間にわたって行なわれたプログラムでは、卓球や水泳、柔道、ボクシング、車椅子バスケットボールといったスポーツ体験から、東京観光、相撲観戦、といった日本文化に触れる機会、さらには2011年3月11日に大きな被害を受けた宮城県石巻を訪れて、災害防止策について学ぶワークショップも用意されました。

国境や文化、宗教、言語といった垣根を越えて、「スポーツ」は人々を平和につなげる架け橋になる、と実感できるのがこのキャンプ。スポーツに従事する若者たちの熱意や、将来への期待がインタビューを通じて伝わってきました。今回のキャンプ参加者のこれからがとても楽しみです。なぜなら、彼らは世界中にネットワークを広げ、将来のスポーツ界を担う先駆者となる可能性を秘めているからです。

このキャンプの取材を担当したのは、国連広報センターのインターンです。レムケ国連事務総長特別顧問(下記)をはじめ、異なるバックグラウンドを持つ4名の参加者にインタビューを行いました。その4名は、ゼナブ・サリームさん(パキスタン/スポーツ開発機構)、久保アンリさん(日本/筑波大学)、ラジニー・ジャさん(インド/インド国際パラリンピック委員会)、ドー・シャティーさん(イスラエル/Budo For Peace)です。

Wilfried Lemke(ウィルフリード・レムケ)国連事務総長特別顧問

ウィルフリード・レムケ氏は、UNOSDPの国連事務総長特別顧問を2008年から担当されています。就任以来、スポーツをツールとした開発と平和のための活動に努めてきました。2012年から始まったYLCも今年で3年目。今回、キャンプを視察に訪れたレムケ顧問から、興味深いお話を伺うことができました。

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インタビューに応じるレムケ顧問

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集合写真

「UNOSDP担当就任以来、HIVやエイズをはじめとした病気、貧困が蔓延している地域を中心に多くの途上国を訪れ、その現状を自分の目で確認していきました。そうした訪問を重ね、現地の若者との対話を通じて彼らの生の声を汲み取っていくことで、スポーツをツールとした開発と平和の重要性を再確認したのです」現在までに7回ものYLCを成功させている背景には、こうしたレムケ顧問の地道な現地調査や構想がありました。驚くべきことに、レムケ顧問は「年棒1ドル」で、この職務を務めています。現職就任前は、ドイツのサッカーリーグのゼネラルマネージャーや、ブレーメン市のスポーツや教育担当相も歴任してきました。長きにわたってこういった分野に携わってきたこともあり、スポーツへ懸ける思いは誰よりも大きいのです。

「YLCに参加するために乗った飛行機が『人生で初めて乗る飛行機』だった参加者も多いです。私はこのキャンプを通じて『彼らの生活を変える』ことができると確信しています」スポーツを学ぶ他に、仲間との出会いや新たな知見を参加者が得られるのがYLCの特徴です。

「私は、このキャンプの歴代参加者全員の連絡先を知っていますよ。常に彼らの成長を見守っています。また参加者同士の情報交換もできるようにネットワークを形成し、いつでも連絡ができるようにしています。『スポーツで頑張る仲間が世界にいる』ということは参加者のモチベーションに大きく影響しています」

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自身のスマートフォンに入っている
参加者の連絡先を見せるレムケ顧問

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国連広報センターのインターンとレムケ顧問
 

「今後は情勢が緊迫した国家を訪問し、草の根レベルでスポーツを軸とした活動を行っていきたいです。世界を変えるためにスポーツを用い、努力を積むことは素晴らしいこと。若者はそんな力を持っているのです。YLCをUNOSDPの活動の中心に据え、今後は開催地をさらに増やして、より多くの若者を巻き込んでいきたいです。こうして私は将来のリーダー育成に寄与していきたいと思っています」スポーツの持つ可能性を最大限に生かしながら、世界中の若者を巻き込み、スポーツ界のリーダー育成に取り組むレムケ顧問。こうした草の根運動を進めていくことで、未来のスポーツ界を担う若者が多く育っていくでしょう。
「2014年はベルリン、フロリダ、光州、ストックホルムでのキャンプが予定されています。開催国側もこのキャンプに献身的に協力してくれて、非常に感謝しています」多くの支えがあることで、このキャンプの成功があり、若者の未来があるのです。

「夢だけで終わらせず、叶えよう。行動を起こそう。ゴールを決めて、それを達成しよう。逆境や困難に落胆しないで、諦めないで、世界を変えよう。私たちは毎日の実践を通じて、世界を変えることができる」これがレムケ顧問が若者へ向けるメッセージです。

2014年1月20日〜30日に開催された「UNOSDPユースリーダーシッ­プキャンプ2014 東京」の模様(Youtube:YLC Tokyo Channenlより)