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国際海運出典「国連の基礎知識」

国際海事機関(International Maritime Organization: IMO)(www.imo.org)が1959年に第1回総会を開いた時、加盟国の数は40カ国にも満たなかった。現在、加盟国の数は170カ国(169の国連加盟国とクック諸島)となり、さらに3カ国の準加盟国を持つ。世界の商船(トン数)の98パーセント以上がIMOによって開発された主要な国際海運条約に基づいて運行されている。

海事立法措置の採択がIMOのもっともよく知られた活動である。IMOはこれまでおよそ50件の条約や議定書を採択した。ほとんどは世界の海運事情の変化に合わせて改定されたものである。また、海の安全、汚染防止、その他の関連事項についておよそ1,000件の規則や勧告が採択された。国際海運の安全を確保し、船舶による海洋汚染を防止するというIMOの目的に、海上における保安という任務が新たに加わった。現在取り上げられている主な環境上の関心事は、バラスト水や沈殿物の中の有害な水性有機物の移動、船舶からの温暖化ガスの排出、船舶のリサイクルの問題である。

当初、IMOは海上における人命の安全の問題に重点的に取り組んでいた。その後、環境問題が任務の一部となった。油による汚染に始まって化学剤の輸送、汚水、廃棄物、大気汚染、防染塗料、バラスト水、船舶のリサイクルの問題にまで拡大した。損害に対する責任や補償に関する条約が採択され、最近では、セキュリティの問題、とくにソマリア沿岸沖の海賊の問題がIMOの重要課題の1つとなった。技術援助、実施、能力開発が新規もしくは改正規則の採択に重要な要素となった。IMOは現在加盟国の監査を任意的なものから強制的なものにする方式へと移行中で、これによって加盟国の海運管理の実績がより強調されるようになる。

現在発効中の海上の安全や船舶による海洋汚染防止に関する主なIMO条約には、以下の条約がある。満載喫水線に関する国際条約(International Convention on Load Lines: LL、1966年);海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約(International Regulations for Preventing Collisions at Seas: COLREG、1972年);安全なコンテナに関する国際条約(International Convention for Safe Containers:CSC、1972年);船舶による汚染の防止のための国際条約(International Convention for the Prevention of Pollution from Ships: MARPOL、1973年)とその修正に関する1978年の議定書;海上における人命の安全のための国際条約(International Convention for the Safety of Life at Sea: SOLAS、1974年);船員の訓練および資格証明ならびに当直の基準に関する国際条約(International Convention on Standards of Training, Certification and Watchkeeping for Seafarers: STCW、1978年);海上における捜索および救助に関する国際条約(International Convention on Maritime Search and Rescue: SAR、1979年)。

その他、危険物質の輸送や高速クラフトのような特定の問題を取り上げた規則も数多く採択された。そのうちのいくつかは強制的なものである。国際安全管理(ISM)コードは、1994年のSOLASの修正によって強制的なものになった。これは船舶を運行し、所有するものに適用される。1978年の船員の訓練と資格証明に関する条約の1995年の完全な改正など、船員の資格基準についても特別の注意が払われた。これによって、IMOは初めて条約の順守を監視することになった。

海上における人命の安全を守ることが、IMOの主要な目的の1つである。1999年、全世界海上遭難安全システム(Global Maritime Distress and Safety System)が完全に運用されるようになった。これによって、世界のいかなる海上においても遭難した船舶は実質的に援助を保証されるようになった。たとえ船員が無線で救助を要請する時間がなくてもメッセージは自動的に送信されるからである。

IMO条約の多くは損害に対する責任と補償の問題を取り上げている。もっとも重要な条約に、「油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約(International Convention on Civil Liability for Oil Pollution Damage: CLC, 1969年)の1992年議定書」と「 国際油濁補償基金の設立に関する国際条約(International Convention on the Establishment of an International Fund for Compensation for Oil Pollution Damage: IOPC, 1971年)の1992年議定書」がある。これらの2つの議定書によって、油濁による損害は補償を受けられるようになった。「乗客およびその手荷物の海上運搬に関するアテネ条約(Athens Convention relating to the Carriage of Passengers and their Luggage by Sea: PAL, 1974年)」は、船舶による乗客に対する補償限度を規定している。

2002年、IMOは「国際船舶および港湾施設保安コード(International Ship and Port Facility Security Code)」を採択した。これは、テロ攻撃から海運を保護する目的の新しい措置である。保安コードは「海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS)」の改正のもとに採択され、2004年に義務的となった。翌年、IMOは「1988年海洋航行の安全に対する不法行為の防止に関する条約(Convention for the Suppression of Unlawful Acts Against the Safety of Maritime Navigation, 1988年)の改正と関連「議定書」を採択した。これによって、船舶もしくは乗船中の人が条約に規定される罪を犯し、または過去に犯し、もしくはそうした犯罪に関与するとの正当な理由を締約国がもつ場合は、他の締約国の国旗を掲げる船舶を臨検する権利が認められる。

IMOの技術協力計画は、とくに開発途上国において、国際基準や規則が実施されるように支援し、また政府の海運業が成功するように支援することを目的とする。とくに訓練に力を入れており、スウェーデンのマルメに世界海事大学(World Maritime University)、マルタに国際海事法研究所、イタリアのトリエステに国際海事アカデミーを持つ。