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知的所有権出典「国連の基礎知識」

書籍、長編映画、芸術的パフォーマンスメディア、コンピューター・ソフトウェアなど、さまざまな形態の知的所有権は、国際商取引との関連で重要な問題となった。世界では何百万という特許、商標、工業デザインが登録され、効力を有している。今日の知識集約的経済においては、知的所有権が富の創造と経済的、社会的、文化的発展を促進するための道具となっている。

国連の専門機関の1つ、世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization: WIPO)(www.wipo.int)は、加盟国間の協力を通して世界の知的所有権を保護し、知的所有権(IP)の法律的、行政的側面に関する国際条約を管理する。知的所有権(IP)は大きく2つに分けることができる。1つは工業所有権で、おもに発明、商標、工業デザイン、原産地表示などである。もう1つは著作権で、おもに文学、音楽、美術作品、写真、視聴覚作品のためのものである。

WIPOは知的所有権の重要な側面をカバーする25の条約を管理する。そのうちのいくつかは1880年代にまでさかのぼることができる。国際IP制度の2つの柱は「工業所有権の保護に関するパリ条約(Paris Convention for the Protection of Industrial Property, 1883年)」と「文学的および美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(Berne Convention for the Protection of Literary and Artistic Works、1886年)」である。2006年には「商標法に関するシンガポール条約(Singapore Treaty on the Law of Trademarks)」が締結された。有名なマーク(1999年)、商標ライセンス(2000年)、インターネット上のマーク(2001年)のようなテーマに関する勧告を採択するというWIPOの方針は、国際的な法的基準を設定する条約に基づくアプローチを補完するものである。

WIPOの仲裁・調停センター(Arbitration and Mediation Centre)は、世界の個人や企業の紛争の解決を支援する。とくに、知的所有権に関係した技術、エンターテイメント、その他の紛争が多い。また、一般に「サイバー・スクワッティング」として知られる、インターネット上のドメイン名の不法な登録や使用に関連する紛争についても主導的な紛争解決機関となっている。たとえば、.com、.net、.org、や.infoのように、インターネットに特有のトップレベルのドメイン名やある種の国別コードのドメイン名に対してもこうしたサービスを提供している。WIPO の紛争解決は、裁判所での訴訟に比べて速く、かつ安い。オンラインで手続きをするため、ドメイン名に関する事件の場合でも一般に2ヵ月以内で解決する。

WIPOは、加盟国がその知的所有権のインフラ、組織、人的資源を強化できるように支援する一方で、国際IP法の漸進的発達を促す。また、政策策定のフォーラムを提供し、伝統的知識、民間伝承、生物の多様性、バイオ技術に関する知的所有権に関する国際会議も主催する。さらに、WIPOは、開発途上国がその経済的、社会的、文化的発展のために知的所有権を戦略的に利用できるように支援する。国内法の起草や改定に必要な法的、技術的助言や専門知識を提供する。また、政策決定者、担当官、学生などのために研修計画も実施する。WIPOの研修の中心機関は、「WIPOワールドワイド・アカデミー」である(www.wipo.int/academy/en)。

また、複数の国で、単純かつ効率的に、かつコスト効率のいい方法でIP権利を獲得するプロセスを容易にするサービスを産業や民間セクターへ提供する。これには、「特許協力条約」、「標章の国際登録に関するマドリード・システム」、「工業意匠の国際登録に関するハーグ・システム」、「原産地名称の保護および国際登録に関するリスボン協定」、「微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約」の下に行われるサービスが含まれる。こうしたサービスからの収入がWIPO所得のおよそ95パーセントを占める。