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安定のための融資出典「国連の基礎知識」

多くの国は、国内もしくは国外の要因によって、自国の国際収支、財政の安定、債務返済能力が大きく損なわれると、国連の専門機関の一つである国際通貨基金(IMF)(www.imf.org)の助けを求める。IMFはこうした問題の解決のために助言や政策勧告を行い、しばしば経済改革計画を支援して加盟国に資金を提供する。

国際収支に失調をきたすと、加盟国は一般にIMFの財源を利用する。そうした加盟国は、他の国の通貨もしくは特別引き出し権(Special Drawing Rights)の形で、自国通貨額に相当する額の準備資産をIMFから「購入」するのである。IMFはこのローン運用に手数料を徴収し、加盟国は特定の期間IMFから自国通貨を再購入することによってローンを返済する。

2010年、IMFは低所得国(LICs)に対する支援を高めた。これはこれらの国において経済状態の性格が変わり、またグローバルな経済危機の影響によってその脆弱性が増したことを反映してのことであった。2014年には、LICsに対する融資を2倍以上にして170億ドルにまで拡大されると見込まれる。通貨基金の財政支援をより柔軟なものにして、LICsのニーズによりよく合わせられるようにするとの幅広い改革の一環として、IMFは「貧困削減・成長トラスト(Poverty Reduction and Growth Trust)」を設立した。3つの新しい譲許的融資の窓口、すなわち拡大クレジット・ファシリティ、スタンドバイ・クレジット・ファシリティ、ラピッド・クレジット・ファシリティを持ち、2010年1月に有効となった。

IMFの主なファシリティは以下の通りである。

  • スタンドバイ取り決め(Stand-by arrangement):一時的、短期もしくは周期的な赤字に対して中期的な国際収支の支援を行う。返済期間は支払より3.25-5年となっている。
  • フレキシブル・クレジット・ライン(Flexible Credit Line: FCL):すべての国際収支上のニーズに対処できるように考案されたクレジット・トランシュの柔軟な道具で、予防としても実際のニーズでも利用でき、支払後3.25-5年で返済しなければならない。
  • 予防的信用枠(Precautionary Credit Line: PCL)健全な経済の基礎的条件と制度的な政策枠組みを持っているが、一定の脆弱性を抱えていることから、FCLを利用することができない国のニーズを満たすためのもので、危機予防のための信用枠である。返済は支払後3.25-5年である。
  • 拡大信用供与ファシリティ(Extended Fund Facility: EFF):長期的性格やマクロ経済および構造問題から生じる国際収支問題の解決のために長期的な支援を提供することを目的とする。支払後、4.25-10以内に返済しなければならない。
  • 拡大クレジット・ファシリティ(Extended Credit Facility: ECF)構造的性格の非常に根深い国際収支困難を抱える低所得国に対して、持続可能な貧困削減を目標に、長期的な支援を提供する新しい譲許的なファシリティである。資金提供を受ける資格のある加盟国は、3年取り決めのもとに、自国クオータの100パーセント(もしくは累積の300パーセント)まで引き出すことができる。融資はゼロ金利で、返済は支払後5.6年に始まり10年に終わる。
  • スタンドバイ・クレジット・ファシリティ(Standby Credit Facility: SCF)国内外に起因するショックもしくは政策ズレなどによる短期の資金および調整のニーズを抱える低所得国に対して柔軟な支援を行う新しい譲許的ファシリティである。融資はゼロ金利で、返済は支払後4年で始まり、8年で終わる。
  • ラピッド・クレジット・ファシリティ(Rapid Credit Facility: RCF)自然災害、商品価格の変動、もしくは隣接国の危機によるショックから生じる緊急の資金調達に直面している低所得国に対して一括前払いで限定的な条件のもとに迅速な金融支援を提供する新しい譲許的なファシリティである。
  • 緊急援助(Emergency assistance)社会不安や政治的混乱、国際武力紛争の影響のように、自然災害や紛争後の情勢に関連した国際収支の困難に対して支援を提供する。緊急融資には基本金利が適用される(十分は資源があればある国々に対しては、利息補助も可能である)。返済は、支払後3.3年から5年までである。

健全な政策を進める重債務貧困国の債務救済のために、IMFと世界銀行は「重債務貧困国イニシアチブ(HIPC)」の下に、その対外債務の負担を持続可能なレベルまで緩和する特別の援助を有資格国に提供している。両機関は現在、HIPCイニシアチブを補足すために開発された「マルチ債務救済イニシアチブ(Multilateral Debt Relief Initiative: MDRI)を支援している。

サーベイランスは、IMFがそれぞれの加盟国の一般的な経済情勢と政策を包括的に分析し、加盟国の為替政策を評価するためのプロセスである。IMFは、個々の国との年次協議によるサーベイランス、年に2回の多国間サーベイランス、地域グループとの話し合いによる地域サーベイランス、予防的取り組みの強化サーベイランスを行っており、それ以外にもプログラム・モニタリングを実施している。プログラム・モニタリングは、IMF資源の利用がない場合でもIMFによるサーベイランスを加盟国に提供するものである。

IMFは、財政および通貨政策の策定と実施、機構の整備、統計データの収集と効果的活用など、加盟国に対して幅広い領域で技術援助を行っている。また、ワシントンD.C.とアブダビ(アラブ首長国連邦)、ブラジリア、大連(中国)、プネ(インド)、シンガポール、チュニス、ウィーンにある地域センターで、加盟国の担当官の研修を行っている。