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開発のための融資出典「国連の基礎知識」

世界銀行は、国際復興開発銀行(International Bank for Reconstruction and Development: IBRD)と国際開発協会(International Development Association: IDA)の2つの機関から構成される。100カ国以上の開発途上国で活動し、これらの国が貧困を削減できるように融資や技術的専門知識を提供する。現在のプロジェクト・ポートフォリオはラテンアメリカとカリブ、中東と北アフリカ、ヨーロッパと中央アジア、東アジアと太平洋、アフリカ、南アジアに及んでいる。

世界銀行は、現在、ほとんどすべての部門や開発途上国で1,800件以上のプロジェクトに関係している。世界銀行は世界最大の開発援助機関として、学校や保健所の建設、給水や電力供給、病気との闘いや環境の保全などで、開発途上国政府の努力を支援する。こうしたことはすべて融資を通して行われる。しかし、融資は返済されなければならない。開発途上国が世界銀行から融資を受けるのは、資本ばかりでなく、技術援助や政策アドバイスも必要だからである。2009年、世界の開発途上国の303件のプロジェクトに対して469億ドルが提供された。また、2010年1月にハイチで全国土を破壊した壊滅的な地震から立ち直ろうと再建を進めるハイチも支援を受けた。

世界銀行の貸付けには2つのタイプがある。最初のタイプは、比較的高所得の開発途上国を対象としたもので、市場金利に近い利率で返済することができ、もしくは商業銀行から借りることのできる国のためのものである。これらの国は国際復興開発銀行(Internat ional Bank for Reconstruction and Development: IBRD)から融資を受ける。IBRDは中所得国もしくは信用力のある貧しい国の貧困削減を目指し、そのために融資や保証、リスク・マネジメント・プロダクト、分析・諮問サービスを通して持続可能な開発を促進する。IBRD融資の返済期間は商業銀行から借りた場合よりも長く、15年から20年で、また元金の返済が始まるまで3年から5年の支払猶予期間がある。資金を借りるのは、貧困の削減、社会サービスの提供、環境保全、経済成長など、特定の事業に対して支援を受けるためである。2009年会計年度において、中所得国および信用力のある低所得国の126件のプロジェクトに対して329億ドルのコミットメントがあった。2008年の135億ドルに比べ144パーセントの増加である。2010年には440億ドルのコミットメントを目標としている。IBRDはAAAの信用格付けで、その資金のほとんどを世界の金融市場で債券を売却して得る。

第2のタイプの貸付けは、最貧国に対して行われるものである。これらの国は一般に国際金融市場では信用されず、また借りた金額を市場金利に近い利率で返済することができない。最貧国に対する貸付けは世界銀行グループ機関の1つである国際開発協会(IDA)が行う。IDAは、世界のもっとも貧しい国々に融資し、貧困の削減を目指す。そのため、無償資金や信用を供与して経済成長を上昇させ、不平等を解消し、人々の生活水準を改善できるようにする。「信用」とは実際には無利子の融資で、10年間の支払猶予期間があり、返済は35年から40年である。IDAの援助資金は主に40カ国の豊かな加盟国からの拠出である。2009年、IDAのコミットメントは79カ国の後発開発途上国の開発活動に対して150億ドル近くまで増加した。ハイチの2010年1月の地震に続く復興努力の一環として、およそ21万人の子供たちが毎日の食事を受けた。

その規則のもとに、世界銀行が貸付けを行うことのできるのは政府だけであるが、実際にはローカルの共同体、非政府組織(NGO)、民間企業と緊密に協力し合いながら作業を進めている。そのプロジェクトは、もっとも貧しい人々を援助することを意図したものである。開発を成功させるには、政府や地域社会が自身の開発プロジェクトを持たなければならない。世界銀行は、銀行融資のプロジェクトの影響を受ける人々の参加を強化するために、NGOや市民社会と緊密に協力するよう政府を奨励している。借入国に事務所を持つNGOは、これらのプロジェクトのおよそ半分のプロジェクトに協力している。

世界銀行は、民間部門を奨励する。そのため安定した経済政策、健全な政府財政、そして公開された、正直かつ説明責任のある統治を積極的に進めている。世界銀行は多くの部門を支援しているが、その中で民間部門への支援が急増している。金融、電力、電気通信、情報技術、石油およびガス、工業である。世界銀行は規則によって民間部門へ直接融資を行うことは禁じられているが、世界銀行の姉妹機関――国際金融公社(IFC)――は、民間部門への投資を促進するために存在する。そのため、ハイリスクの部門や国を支援する。もう1つの姉妹機関、多数国間投資保証機関(MIGA)は、開発途上国へ投資または貸付けを行う人々に政治的リスク保険を提供する。

しかし世界銀行の活動は貸付けだけではない。世界銀行融資のプロジェクトに技術援助を行うことも日常的に行われている。総合的な国家予算の規模と予算の配分をどうするか、また、どのようにして農村に診療所を設立するか、道路を建設するにはどのような設備が必要かなどについても助言を与える。世界銀行は、専門的な助言や訓練を提供する若干のプロジェクトにも毎年資金援助を行っている。また、借り入れ国の人々を対象に開発計画の策定や実施に関する研修も行う。

世界銀行は、植林、汚染対策と土地管理、水や衛生と農業、天然資源の保存などの領域で持続可能な開発プロジェクトを支援する。また、グローバル環境ファシリティ(Global Environment Facility: GEF)の主要な資金提供者である。GEFはグローバルな環境を改善するプロジェクトに対する最大の資金提供者である。IBRDとIDAはまた、重債務貧困国イニシアチブ(Heavily Indebted Poor Countries(HIPC)Initiative)を支援している。これは世界の最貧国で最も重い債務を抱えている国の対外債務を削減することを目的とする。2009年会計年度では、IDAの債務返済の部分的免除のもとに7,600万ドルの開発クレジットと1000万ドルの手数料が債務救済として帳消しとなった。2005年7月のサミットにおいて、「主要8カ国」の開発先進国は、主にアフリカやラテンアメリカを中心に、世界の最貧国のいくつかの国がIDA,IMF,アフリカ開発基金に負う債務の全面的な帳消しを提案した。その結果生まれた「多国間債務救済イニシアチブ(Multilateral Debt Relief Initiative: MDRI)」による債務救済は、すでに4カ国がHIPC完了基準に達したため、2010年会計年度に帳消しとなる開発クレジットは11億ドルとなった。2010年6月現在、累計総額として345億ドルの開発クレジットがMDRIのもとに帳消しとなった。