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潘基文(パン・ギムン)事務総長の歴訪に見る世界の今~2012年1月

2012年02月17日

2012年、潘基文(パン・ギムン)事務総長は国連事務総長として2期目の任期を迎えました。各国のリーダーとの協議、現地の人々との触れ合いなどを通じて、あらゆる国際問題の解決、理解を深めることを目指して、今年も年明けから積極的に世界の歴訪をスタートしました。

1月はレバノン、アラブ首長国連邦へ。さらに、スイス、エチオピア、そして中東和平交渉の進展に向けて、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ自治区を訪れました。

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◇1月13日-15日 レバノン
~民主主義への改革と移行に関するハイレベル会合に出席~

2012年、潘務総長が最初に訪問したのは中東のレバノンです。首都ベイルートに入り、まずスレイマン大統領、ミカティ首相らと会談しました。

翌14日、事務総長はベイルートに本部を置く西アジア経済社会委員会(ESCWA)を訪れ、南部・ナクラにある国連レバノン暫定駐留軍(UNFIL)本部にヘリコプターで向かいました。UNFILは1978年に結成され、国連PKOとしては最も古く、規模の大きな活動の一つです。活動中に殉職した293人の隊員に対して献花を行い、追悼の意を表しました。

最終日の15日、レバノン訪問の主な目的であるESCWA主催の「民主主義への改革と移行に関するハイレベル会合」の開会式に出席し、基調演説を行いました。演説の中で事務総長は、「自発的に湧き起こった非暴力的な運動、これはアラブの人々にとって誇りです」と中東に押し寄せた民主化の波を称え、民主主義への移行のためには真の改革包括的な対話を実行し、女性の権利と若者の声をとり入れることが必要だと訴えました。

◇1月15日-17日 アラブ首長国連邦
~国際年のスタートを正式に宣言~

2012年は、国連の定める「すべての人のための持続可能エネルギーの国際年」です。アラブ首長国連邦のアブダビに到着した事務総長は、第3回世界未来エネルギー・サミットに出席し、国際年のスタートを宣言しました。

気候変動、持続可能な経済開発、そして貧困・飢餓の撲滅など8つの目標を掲げた「ミレニアム開発目標(MDGs)」を2015年の期限までに達成するためには、すべての人がエネルギーにアクセスでき、よりクリーンで、新しい持続可能なエネルギーを利用することが重要な課題です。「すべての人のための持続可能エネルギーの国際年」は、エネルギー問題への関心を世界中で高め、地域レベル、国際レベルで行動を起こすことを呼びかけます。

現在、世界の5人に1人が電力を利用できず、また30億の人々が木材、石炭などの化石燃料に頼っています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、産業革命以来の地球の温度上昇を摂氏2度以内に抑えるためには、2050年までに温室効果ガスの排出量を半減させなければならないとしています。事務総長は、世界未来エネルギー・サミットの開会挨拶でこれらの事例を挙げ、「今すぐ行動を起こす時だ」と訴えました。さらに、2030年までに達成すべき3つの目標を掲げ、ハイレベル・グループが作成した行動指針を基に、今年6月に開催される「リオ+20」に向け関係諸国・機関と協議を行っていくと述べました。
 
◇1月26日-27日 スイス
~ダボス会議で女性の健康への投資を呼びかけ~

スイス・ダボスでは、世界各国の政治、経済・企業のトップが集う世界経済フォーラム(ダボス会議)に出席しました。欧州の信用不安など幅広いテーマについて協議が行われる中、事務総長は、女性の健康に投資し、世界経済への参加を促すことが国の経済、そして世界経済の安定につながると述べました。昨年1年間で、30万人以上の女性が出産のために亡くなったことを挙げ、安全に出産できる環境を整えるためにも企業社会の協力が不可欠だと訴えました。

1月28日-30日 エチオピア
~AUサミット年次総会、地球の持続可能性に関するハイレベル・パネル報告を発表~

エチオピアの首都・アディスアベバに入った事務総長は、アフリカ連合(AU)の年次総会に出席。アフリカ諸国の安定と発展のために、市民、政治、経済、社会そして文化における権利の向上を訴えました。

また、「地球の持続可能性に関するハイレベル・パネル」が30日、アディスアベバで報告書を事務総長に提出しました。このハイレベル・パネルは、持続可能な開発と低炭素社会の実現に向け指針を示すことを目的に、2010年8月に事務総長が設置したもので、日本の鳩山由紀夫元首相も22人のメンバーの一人です。報告書には持続可能な開発を実行に移し、経済政策に取り入れるための提言56項目が盛り込まれました。事務総長は、2期目となる任期の最優先課題が「持続可能な開発」であるとし、「持続可能な開発は新たな道筋を切り開く一番の解決策となる」と述べました。

◇1月31日-2月1日 ヨルダン
◇2月1日-3日 イスラエル、パレスチナ自治区
~中東和平交渉の継続を促す~

中東和平プロセスの進展を目指して、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ自治区を訪れ、イスラエルのネタニエフ首相、パレスチナのアッバス議長らと協議しました。

イスラエルとパレスチナは昨年12月からヨルダンの首都・アンマンにて、ヨルダン国王および外相の仲介の下、交渉の下準備を開始しました。事務総長は、今年の終わりまでに同意に達するためにも、双方に領土と安全保障に関する具体的な案を用意し、交渉を続け信頼関係を築くよう訴えました。

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レバノン南部のナクラにて、国連レバノン暫定駐留軍(UNIFIL)本部の指令官の出迎えを受ける(2012年1月14日)© UN Photo/Pasqual Gorriz
アラブ首長国連邦・アブダビにて「すべての人のための持続可能なエネルギー」の関係諸機関のパートナーたちと(2012年1月15日)© UN Photo/Evan Schneider
スイス・ダボスで行われた世界経済フォーラムで、会合の合間を縫ってBBCのインタビューに応じる事務総長(2012年1月26日)© UN Photo/Eskinder Debebe
「地球の持続可能性に関するハイレベル・パネル」から報告書の提出を受ける事務総長(2012年1月30日)© UN Photo/Eskinder Debebe
エチオピアの首都・アディスアベバで開催されたアフリカ連合(AU)年次総会オープニングで演説。アフリカにおける人権の向上を訴えた(2012年1月31日)© UN Photo/ Eskinder Debebe
エルサレムにて、イスラエルのネタニエフ首相との会談後、記者会見を行う(2012年2月1日)©UN Photo/Eskinder Debebe
ヨルダン川西岸のラマラにて、パレスチナ自治区のアッバス議長と会談(2012年2月1日)©UN Photo/Eskinder Debebe
ガザ南部のハンユニスにて、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営する女子校で生徒と一緒に(2012年2月2日)©UN Photo/Shareef Sarhan