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潘基文(パン・ギムン)事務総長の歴訪で振り返る激動の2011年 (その④)

2011年12月16日

2011年、世界は激動しました。アラブに押し寄せた民主化の波、東日本を襲った大震災、アフリカの角で発生した大飢饉、世界人口の70億人突破。潘基文(パン・ギムン)事務総長の歴訪から、この1年を振り返ります。
(*本文中の肩書きは訪問当時のものです)

米国・デンバー、フランス・パリ
~42年間のカダフィ政権に終幕

◇8月24日 米国・デンバー、9月1日 フランス・パリ

米コロラド州のデンバーに入り、風力、太陽光、天然ガスなどエネルギー関連団体の代表らとのラウンドテーブルに出席。持続可能なエネルギーや、9月に国連がスタートさせる「Sustainable Energy for All(すべての人に持続可能なエネルギーを)」について、意見を交わしました。この新たな取り組みは、近代的なエネルギーをすべての人に供給する、エネルギー効率を倍増させる、世界のエネルギー供給における再生可能なエネルギーの割合を倍増させる、という3つの目標を、政府と市民社会が一緒になって、20年後までに達成しようというものです。

デンバーには当初2日間滞在する予定でしたが、リビアの差し迫った情勢を考慮し、翌朝には急きょニューヨークに戻りました。

リビアでは、反体制派がカダフィ大佐の拠点を攻略し、42年にも及ぶ独裁を続けたカダフィ政権が崩壊しました。国連は新しい国づくりを支援するため、様々な取り組みに力を入れていきます。

リビア・コンタクト・グループ(国連、EU、NATO、アラブ諸国連盟などにより構成)の会合で、構成国は国連主導でリビアに対する国際的な援助を行っていくことを決定しました。関係諸国とのテレビ会議の中で、潘事務総長は食料・水などの緊急支援、そして民主的な政権への移行に国際社会が協力していく必要性を訴えると共に、早い段階で国連ミッションを派遣したいと述べました。パリではフランス政府の呼びかけによる「新生リビア支援国会議」に参加、各国のリーダーと共に、新生リビアへの協力を表明しました。

オーストラリア、ソロモン諸島、キリバス、ニュージーランド
~太平洋諸島の美しい島に見る気候変動の影響

◇9月3日-9日 オーストラリア・キャンベラ、ソロモン諸島、キリバス、ニュージーランド、オーストラリア

パリからオーストラリア・キャンベラに飛び、太平洋諸島歴訪をスタートした潘事務総長。この旅の主要テーマは「Sustainable Development(持続可能な開発)」です。太平洋に浮かぶ美しい小さな島々が、気候変動によって受けている深刻な影響をじかに感じ、その脅威を訴えると共に、いかに持続可能な開発を進めていくことが重要かを世界に知らせることが目的です。

キャンベラからソロモン諸島の首都ホニアラに向かう上空からは、ギゾ島とマロボ環礁への森林伐採と気候変動による影響を視察しました。

その後、ソロモン諸島の首相、閣僚、議長、野党党首らと会談し、気候変動や持続可能な開発について協議したほか、女性の地位向上と女性に対する暴力撤廃を強く訴えました。政府、野党、そして議会に対しては、首相の公約に従い、国会において女性の5議席確保を遂行するよう促しました。

飛行機でキリバスの首都・タラワに向かう事務総長。日没直前の機内からは、タラワ全体を見渡すことができました。低地で細い地形から、気候変動による海面上昇の影響をいかに受けやすいかが見て取れます。

到着後エイタ村に向かい、かやぶき屋根の集会場で、村の長老らから伝統的な儀式で歓迎を受けました。その後の大統領との夕食会では、キリバスは気候変動の最前線に立っているとし、この国の生活と存在にとって気候変動がいかに深刻な脅威であるか、人々の意識を高めることがこの旅の目的だと語りました。

翌日、事務総長はアバラオ地区とテビニコラ村を訪れ、海面上昇の影響を実際に目にし、地元の人々と言葉を交わしました。海岸のすぐそばから引っ越しを余儀なくされた人、井戸が塩水となってしまったため政府から飲料水を供給されている人の話も聞きました。ある少年は「水没するのではないかと思うと夜眠るのが怖い」と訴え、潘事務総長は「その言葉をニューヨークで世界のリーダーに伝える」と約束しました。

タラワ島で最も標高の高い海抜3メートルのポイントを訪れた事務総長。海抜わずか3メートル、しかも海岸のすぐそばにあるポイントが「高台」という現実を目の当たりにし、いかにキリバスが海面上昇や津波の被害を受けやすいかを痛烈に認識させられました。バイリキでは高潮の影響を視察、スチュワート・コーズウェイでは、大統領およびユ・スンテク夫人、そして若者たちと共に、海岸にマングローブの苗を植樹しました。マングローブを植えることで気候変動による影響が緩和できるとされていますが、苗を植える事務総長の手にも自然と力がこもります。

その後ニュージーランド・オークランドに入り、太平洋諸島フォーラム(PIF)に出席、各国首脳と持続可能な開発と女性のエンパワーメント(権利向上)について議論しました。オークランド大学では、持続可能性と安全保障について、過渡期の世界におけるニュージーランドの役割について演説をしました。

再びオーストラリアに戻った事務総長は、シドニーにある豪連邦警察の訓練施設を訪問。ここでは、オーストラリアと太平洋諸国の警察官が、国連PKOミッションなどに派遣される前のトレーニングを受けています。この日行われた選挙の監視や群衆整理の演習を見学しました。

国連総会が開幕
~世界中の指導者が顔を合わせる、年に一度の貴重な機会

◇9月13日
 
毎年9月中旬、193カ国の加盟国のリーダーたちがニューヨークの国連本部に集まり、国連総会が開幕します。総会の開幕にあわせて、各国の首脳、市民社会の代表、ビジネスリーダーらが参加し、ハイレベル会合なども開催され、国連本部は一年でも最も忙しい時期となります。世界各地を飛び回る潘事務総長も、この時ばかりはニューヨークで各国のリーダーたちを迎え入れます。

ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、米国
~クリーンエネルギー問題に注目

◇10月10日-12日 ノルウェー、デンマーク、スウェーデン

国連総会での各国首脳による一般討論、各種のハイレベル会合が一段落したこの頃、事務総長は北欧3カ国を訪れました。気候変動、エネルギー、グリーン経済、持続可能な開発についての会合への出席が目的です。

まずは、ノルウェーの首都オスロに入り、「Energy for All: Financing Access for the Poor」の会合で基調講演を行いました。この会合は国際エネルギー機関(IEA)とノルウェー政府が、ブラジル、エチオピア、リベリア、南アフリカのパートナーと共同で開催したもので、70カ国以上が参加しました。会合では、エネルギーをすべての地域、国で利用できる資金供給システムの導入を探りました。国際エネルギー機関の試算によると、世界のエネルギー投資総額のたった3パーセントを投じれば、すべての人が近代的なエネルギーを利用できるようになると言われています。「すべての人がエネルギーを利用できるだけでなく、それがクリーンで、持続可能なエネルギーである必要があります」と、潘事務総長は訴えました。

また、ノルウェー政府主催のハイレベル会合「Energy and the Road Towards Rio」では、ノルウェー、ケニアおよびエチオピア首相と共に、来年6月にブラジル・リオデジャネイロで開催されるリオ+20(国連持続可能な開発会議)に向けて、いかにリーダーシップを発揮し、持続可能なエネルギーを広め、持続可能な開発を成し遂げることができるかを議論しました。

そしてナンセン生誕150周年記念式典に出席。フリチョフ・ナンセンは、ノルウェーの探検家・政治家で、第一次大戦後、国際連盟初の難民高等弁務官として難民救助に活躍し、1922年にノーベル平和賞を受賞しました。潘事務総長は、ナンセン氏を今日の国連の活動の根底となった人物だとして称えました。

この後デンマーク・コペンハーゲンに移動し、グローバル・グリーン成長フォーラム(3GF)に出席しました。Global(地球規模の)、Green(環境に優しい)、Growth(成長)の3つのGは社会、経済、そして環境の変化に対応していかなければならないとして、地球を守り人々の幸福を促進するためにすべての力を結集しようと訴えました。

スウェーデン・ウプサラでは、ダグ・ハマーショルド第2代国連事務総長の没後50周年記念式典に出席しました。ハマーショルド氏は、現在のコンゴ民主共和国の和平調停に向かう途中、飛行機事故で殉職しました。スピーチの中で潘事務総長は、「平和維持、そして平和構築活動の創始者であり、仲介者、問題解決者として事務総長の果たすべき役割を示した前世紀の傑出したリーダーだった」と述べ、ハマーショルド氏を称えました。

◇10月13日-14日 米国・ワシントン

米国・ワシントンにて、オバマ大統領の招待により、訪米中の李明博大統領を歓迎する公式晩餐会にユ・スンテク夫人と参加し、翌日の朝、ニューヨークへと戻りました。

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事務総長の歴訪で振り返る激動の2011年(その⑤・最終回)へ続く

その①

その②

その③

米コロラド州デンバーの国立再生可能エネルギー研究所で、太陽光発電の実験施設を視察(2011年8月24日)© UN Photo/Mark Garten
オーストラリアからソロモン諸島に向かう事務総長。飛行機の窓に顔を寄せ、マロボ環礁とギゾ島上空から、森林伐採、気候変動の影響を視察(2011年9月3日)© UN Photo/Eskinder Debebe
上空から見たソロモン諸島のマロボ環礁(2011年9月3日)© UN Photo/Eskinder Debebe
海抜の低い島に暮らす住民たちからは、気候変動の影響による海面の上昇を心配する声が相次いだ(2011年9月5日)© UN Photo/Eskinder Debebe
キリバスの環境大臣(右)と共に、キリバスで最も標高の高いタラワ環礁の海抜3.5メートルの地点に立つ。タラワは温暖化による海面上昇の深刻な影響を受けている(2011年9月5日)© UN Photo/Eskinder Debebe
キリバス・タラワにて、マングローブの苗を植樹する事務総長(2011年9月5日)© UN Photo/Eskinder Debebe
キャンベラにあるオーストラリア連邦警察の視察を訪れ、訓練中の警察官と言葉を交わす(2011年9月8日)© UN Photo/Eskinder Debebe
国連総会が開幕する9月中旬、国連本部は一年で一番忙しい季節を迎える。66回目となる今年の総会には、日本から野田佳彦総理が出席(2011年9月21日)© UN Photo/Evan Schneider
ノルウェーの首都オスロでナンセン生誕150周年記念式典に出席。著名な探検家であり人道支援活動に尽力したナンセン氏を「国連活動の根底となった人物」と称えた(2011年10月10日)© UN Photo/Eskinder Debebe
スウェーデン・ウプサラにてダグ・ハマーショルド没50周年記念式典に出席、花輪を供える。ハマーショルド氏は50年前、現コンゴ民主共和国の和平交渉に向かう途中、飛行機事故で殉職した(2011年10月12日)© UN Photo/Eskinder Debebe