本文へスキップします。

  • プリント

ここから本文です。

日本のビジネスリーダーとの朝食会における潘基文国連事務総長の冒頭あいさつ(東京、2009年7月1日)

2009年07月01日

桜井代表幹事、有馬議長、高須大使、経済同友会およびグローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワークの皆様、おはようございます。どうもありがとうございます。

また皆様にお会いできて嬉しく思います。昨年の訪問の折にお会いした方もいらっしゃいますが、今回新たに友人、知人を得ることができて嬉しく思っています。ありがとうございます。

日本のビジネス界を代表しておられる桜井代表幹事、有馬議長に対しましては特に感謝の念をもっています。国際社会においては、経済および事業活動を通してグローバルな目標に向かって貢献していくことが大事であり、その面で日本のビジネス界および企業の皆様が強くコミットされていることを大変嬉しく思っており、深く御礼申し上げます。
世界は多くの緊急性の高い課題に直面しています。気候変動、グローバルな経済危機、食糧安全保障など、複数の危機に同時にみまわれています。国連としましては、是非皆様の忌憚のないご意見をお聞かせいただきたくよろしくお願いいたします。

経済同友会が非常に重要な機関であるということは十分承知しております。皆様は経済の発展や進歩に貢献されていることのみならず、国連が取り組む多くの重要課題についてもいろいろ関与していただいております。特にグローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワークは大きな進歩を遂げており、いまや90社を数える大きなビジネス団体や企業が参加されています。責任ある持続可能なビジネスをめざして、日本のビジネス界の皆様が大きな役割を果たされていることをとても嬉しく思います。

経済危機が起きている現在、人々は企業や市場に対して、また政界のリーダーシップに対しても信頼を失いつつあります。この人々の信頼や信用を回復する唯一の方法というのは、我々がグローバルな危機に一致団結して対応していくことであると思っています。

もっとも重要かつ緊急性を帯びている問題のひとつは気候変動です。コペンハーゲンで12月に重要な会議が開かれます。日本には政治的に、さらに歴史的にも責任を持って、積極的にリーダーシップを果たしていただきたいと強く願っています。コペンハーゲンでは、従来どおりのビジネスのやり方で破綻の道を歩むのか、それとも持続可能なグリーンな成長の道をとるのかを決める、まさに正念場となる会議になると思っています。もちろん答えはわかっているわけで、コペンハーゲンにおいては、気候変動について持続可能なグリーンな成長を世界で図っていくことを合意できるよう願っています。

この点で企業が果たす役割はとても重要です。政府、企業、市民社会の三者がパートナーシップを築く必要があると思います。皆様企業の方はイノベーションに富む最先端の技術開発を行う最前線に立っておられます。資金力があり、経験も十分あり、企業として既にグローバルなネットワークも築かれているので、皆様は極めて重要で不可欠な役割を果たしていける立場におられます。こういった道に進むことが正しい選択であるだけでなく、競争力を強化し、利益の増大につながる賢い選択であることに皆様のほとんどがお気づきであることを嬉しく思います。

国連グローバル・コンパクトのイニシアチブは世界的に大きな進歩を遂げています。グローバル・コンパクトの世界的な広がりとして、現在140カ国以上をカバーしており、数千社以上の企業が世界的に参加しています。それぞれ環境保護、人権擁護、腐敗防止など、よりよい世の中をつくるという共通原則のもとに活躍しています。

しかしながら、我々にはまだまだやるべきことが多く残されているというのが現状であります。グローバルな金融危機というのは我々の生活のありとあらゆる側面に大きな影響を与え、まさに全世界を揺るがしています。より深いレベルで、このような危機が生じた原因を究明し、そこから教訓を学ぶべきであると考えます。今回の危機によって、共通原則を守っていくことがいかに重要かということが明らかとなりました。そうでないと市場は破綻してしまいます。もしリスク対応策をとらずに短期的な目標だけに集中し、自らの行動が長期的にどういう影響を与えるのか考えることなしに突き進んでしまうと、結局は危機や破綻を何度も何度も繰り返すことになってしまいます。

その最たるものが気候変動であると思います。我々は低炭素社会への移行を目指す必要があります。これこそが我々の進むべき道であり、皆様方のリーダーシップとコミットメントに大きな期待をしています。今アクションをとることができれば、企業としてグローバルな競争力を上げることができますし、今後何十年間に亘って大きく恩恵を享受できることになります。無理無策でやってしまうと、その策にかかるコストのほうが、今アクションをとるコストよりもずっと大きくなってしまいます。

経済同友会およびグローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワークの方々には、十分この原則を理解していただいているわけであり、それに匹敵したビジョンをお持ちであると拝察いたします。グリーン技術への投資やオペレーションの省エネ化に際して、環境にとってよいことは、皆様方の事業についても結果的にはよいことになるということを示してください。

皆様には、私がグローバル・コンパクトのメンバーに対して立ち上げた国連のイニシアチブであります“Caring for Climate ”、特に“CEO Water Mandate”がありますので是非ご賛同いただきたく思います。今年コペンハーゲンで気候変動について“Seal the Deal”(合意)するために、国連事務総長として私なりの政治力をできるだけ発揮して、世界の政界のリーダーに呼びかけたいと思います。また、気候変動に焦点をあてたサミットを、ニューヨーク国連本部にて9月22日に開催する予定です。

数週間前に日本政府が中期目標について発表したことは承知しています。これは日本政府が国内で行った努力の結果であると感謝しています。しかしながら、資金サポートや技術サポートの面でさらにオフセットできるという点についてはまだこの中期目標に入っていないようです。是非この資金および技術サポートを通じて、近い将来、日本として地球温暖化ガスのさらなる低減を果たせることを期待しています。先進国は好例を示してリードすべきだと思っていますので、グローバル企業を代表する皆様方も自ら好例を示すことによって、世界をリードしていただきたいと思います。

最後に結論としまして、私の皆様方に対する期待ということでお話ししたいと思います。重要なメッセージですので是非お聞きいただければと思います。皆様方はすでに立派なビジネス界でのリーダーであられ、大きな成功を収めておられますので、是非それを活かして、指導者や政治家にもなっていただきたいと思います。皆様方から政界のリーダーや議員、主務大臣に対して、世界に向けて発信してもらうように働きかけていただきたいと思います。加えて関連企業の方にもこの共有するネットワークへの参加を呼びかけていただくようにお願いします。そうすることで、すべての政界のリーダー、企業のリーダー、または関連企業のリーダーが一丸となり、国連との連携をめざしていただきたいと思います。それがこの朝食会を通して皆様にお願いしたいことです。

ビジネス界のリーダーとして、企業活動を通してビジネスパーソンとしての責任を果たすことができますように、そしてあわせてコミュニティーのリーダーとしても活躍していただけるようにお願いします。また親や祖父母として、子どもの世代、孫の世代により安全で持続可能な、そしてより住みやすい世界を残していただけるように共通目標に向かって是非一緒に進んでまいりたいと思いますのでよろしくお願いします。