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女性と平和、安全保障をめぐる取り組み強化へ~国連を中心に、議論が活発化

2013年11月18日

平和構築や安全保障に、女性はもっと役割を発揮できるのではないか ―。世界各地で暴力や人権侵害にさらされている女性を守るだけでなく、より積極的に女性の力を活用しようという試みが、国連を中心に活発化しています。今回は2013年後半の動きを中心に、国際社会に広がる女性のエンパワーメントの取り組みを紹介します。

国連において、最も影響力を持つ国連安全保障理事会は2013年10月18日、紛争解決や平和構築における女性の積極的な関与を促す決議2122(2013)を全会一致で採択しました。決議は、「国際平和と安全を保つためには、女性や少女のエンパワーメントおよびジェンダー平等が欠かせない」ことを再確認し、国連や各加盟国、その他の関係当事者に対し、女性の「保護」と「参加」をともに促進することを呼びかけました。

具体案として、保護の面では、医療、法律から心理ケア、生活サービスに至るまで、紛争下ならびに紛争後の女性が必要とする人道支援や必要な財政援助を提供することを提案。特に、レイプによる妊娠への対応など、包括的なセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスサービスなどを、差別なく提供する必要性を強調しました。また、女性のエンパワーメントに関しては、紛争解決や平和構築において女性のリーダーシップと参加を進め、その進捗を定期的にモニターすることを提唱。その成果を確認し、次のターゲットを設定するために、2015年にハイレベル会合を開くことも盛り込みました。

採択にあたり、潘基文(パン・ギムン)事務総長は「持続可能な平和、経済復興、社会の結束ならびに政治的正当性の獲得には、女性の参加が不可欠だ」と強調。法の支配の確立や、社会の再構築、移行期の正義といった取り組みにおいて、女性は「すべての段階から参加する必要がある」として、「彼女らの声を聞き、その人権を守らなければならない」と力強く訴えかけました。

潘事務総長が安保理の場を借りて、このようなメッセージを発したことには理由があります。女性と平和、安全保障を関連付けた初の安保理決議が採択されたのは2000年。このときの決議1325(2000)は、女性が紛争により多大な影響を受けていることを認識した上で、紛争解決、和平プロセス、ガバナンスなど、意思決定のすべての段階における女性の平等で積極的な参加を促す画期的な内容でした。決議の採択を受けて、国連機関だけでなく、女性の課題解決に取り組む諸団体や個人から賞賛とともに大きな期待が寄せられましたが、平和構築や安全保障の分野における女性の参加は、当初期待されていたほど進んできませんでした。

こうした状況を打開するため、同決議に盛り込まれた取り組みの実現を促す決議が近年、相次いで採択され、「紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表」の設置も決まりました。2人目となる現在の特別代表は、2012年に就任したザイナブ・ハワ・バングーラ元シエラレオネ保健衛生大臣。今年10月には、ババトゥンデ・オショティメイン国連人口基金(UNFPA)事務局長らとともに、いまだ政府と反政府勢力との対立が続くコンゴ民主共和国を訪れ、現場で直接、性的暴力の問題解決に向けたさらなる努力を求めました。

こうした地道な活動に支えられ、女性の問題に対する国際社会の関心も高まってきています。今年9月下旬には、第68回国連総会の開幕に合わせ、バングーラ特別代表と英国ウィリアム・ヘーグ外相が主催する形で、「紛争下の性的暴力防止イニシアティブに関するサイドイベント」を開催。日本岸田文雄外相も参加したこの場で、紛争下の性的暴力に対する不処罰の文化を打開するための行動や、犯罪者にきちんと責任を負わせることに対する決意、そして被害者へのより長期的な支援を呼びかける宣言が発表されました。この宣言には、これまでに日本を含む135カ国が賛同しています。また、時期を同じくして、国連平和構築委員会主催で「平和構築に向けた女性の経済的エンパワーメント」をテーマにした閣僚級会合が開かれるなど、多くの国々を巻き込みながら議論は活性化しています。

こうした動きは、国連の枠を超えて、G8などにも広がっています。日本も決議1325(2000)に基づき、市民社会と連携しながら、国としての具体的な行動計画の策定を急いでいるところです。11月18日から23日にかけては、バングーラ特別代表が来日し、安倍首相らとの会談を通じて、日本のさらなる協力とリーダーシップを求める予定です。性的暴力を受けた被害女性の保護はもちろんのこと、平和構築、復興プロセスの段階における女性の参画を推進するために、日本に何ができるのか。女性と平和、安全保障をめぐる問題は、ますます目が離せないトピックとなりそうです。

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ー関連プレスリリース:バングーラ 紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表の来日について

https://www.unic.or.jp/news_press/info/5445/

-関連プレスリリース:安保理、紛争関連の性暴力不処罰に終止符を打つ取り組みを強化

https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/4298/

今年4月、ソマリアの首都モガディシュを訪れ、母子ヘルス・センターを視察するバングーラ 紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表。10月にはコンゴ民主共和国を訪れるなど、世界各地の現場で直接、性的暴力の問題解決に向けた取り組みを行っている©UN Photo/Tobin Jones
安全保障理事会は10月18日、紛争解決や平和構築における女性の積極的な関与を促す決議2122(2013)を全会一致で採択©UN Photo/Eskinder Debebe
今年6月に開催された紛争下での性暴力犯罪に関する討議では、国連難民高等弁務官(UNHCR)の特使を務める、女優で活動家のアンジェリーナ・ジョリー氏も発言した©UN Photo/Rick Bajornas
コンゴ民主共和国の東部には今年8月、ポリス・ステーションが新たに建設された。女性と子どもの保護を目的とした特別施設が含まれている©UN Photo/Sylvain Liechti
9月下旬、国連総会の開幕にあわせて開催された「紛争下の性的暴力防止イニシアティブに関するサイドイベント」から。英国のヘーグ外相と共に記者からの質問に答えるバングーラ特別代表©UN Photo/Amanda Voisard