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安保理、紛争関連の性暴力不処罰に終止符を打つ取り組みを強化

プレスリリース 13-036-J 2013年07月02日

安全保障理事会は2013年6月24日、紛争下での性暴力犯罪者に対し、その罪が容認されることはないという強い姿勢を示すため、新たな決議を採択し、多数の女性と女児だけでなく、男性や男児も被害者となっている惨禍に終止符を打つ取り組みを強化する決定を下しました。

安保理はこれまで、決議1820(2008)1888(2009)および1960(2010)の3件の決議採択によって、戦争の手段として用いられる組織的な性暴力が、国際の平和と安全にとって根本的な脅威であり、治安面、司法面での対応が必要となっていることを確認しています。

理事国15カ国は女性と平和、安全に関する討議で、決議2106を全会一致で採択し、性暴力犯罪のさらに一貫した厳格な捜査と訴追がその抑止、そして最終的には予防の中心的側面となることを強調しました。

決議は「かかる行為を予防し、これに対処するための実効的な措置は、国際の平和と安全の維持に著しく貢献する」ことを強調するとともに、「いかなる予防と保護の取り組みにも欠かせない要素として、女性の参加を重視する」としています。

安保理は、予防と対策に向けた基盤として、「より迅速、客観的、正確かつ信頼できる情報」の必要性を認識するとともに、潘基文(パン・ギムン)事務総長と関連の国連組織に対し、紛争関連の性暴力に関する監視、分析および報告取り決めを早期に確立するよう要請しました。

「いつ、どこで起ころうとも、性暴力が下劣な犯罪であることに変わりはありません。これを白日の下にさらし、当然の怒りと報いを浴びせなければなりません」潘事務総長は会合の冒頭でこのように語り、権力と影響力を持つ者たちには、自ら進んで、この「悪」を打ち砕く決意に満ちた擁護者のグローバルな連合に加わる特別な責務があることを強調しました。

事務総長は最近のコンゴ民主共和国(DRC)訪問で、紛争のあらゆる側に立つ武装集団によってレイプされ、身体に障害を受けた女性と女児に面会したことを振り返りました。そして、こうした女性たちを助ける病院はあっても、彼女たちを守ることはできていないとしたうえで、「その責任はコンゴ当局と国際社会、特に安保理にあるのです」と述べました。

紛争時における性暴力に関する事務総長特別代表を務めるザイナブ・ハワ・バングーラ氏は会合で、紛争時に女性や子ども、さらには男性をレイプすることが依然として「やり得」となっている現状を指摘しました。「しかし、歴史上初めて、この現実を変えられる時がやってきました。そのためには、リーダーシップと政治的英断だけでなく、軍事的または政治的利得のために罪のない人々をレイプすることも辞さない冷血で計算高い蛮行に立ち向かうという、ゆるぎない決意が必要です」

特別代表は今日の決議を、信頼できる迅速な情報と分析、および、このような情報を基に政治的、戦略的、戦術的レベルでとるべき行動に基づくコンプライアンス重視体制を補強するものとして称賛しました。

「安保理と国際社会全体の決断により、私たちは説明責任と予防への道をしっかりと歩みだしました」特別代表はこのように語っています。「私たちは最も歴史が古く、最も有罪判決を受けることが少ない犯罪につき、形勢を一転させるような行動の『クリティカル・マス』を達成するまで、この道を歩み続けなければならないのです」

各国政府閣僚数人を含め、60人以上が発言を予定しているこの会合の議長は、6月の安保理議長国となっている英国ウィリアム・ヘイグ外務大臣が務めています。

ヘイグ氏は英国の立場として、国際社会が紛争関連の性暴力にまつわる不処罰の文化に取り組まなければ、さらに数百万の女性、子ども、男性が今後とも、紛争下で同じような恐ろしい仕打ちを受けることになりかねないと警告しました。

「よって、私たちが先頭に立って行動を起こせば、全世界で人々の命を救い、事態の成り行きを変えられる可能性があります。それこそまさに、私たちのねらいです…。今こそ声を合わせて、戦争の武器として用いられるレイプと性暴力は許し難いこと、私たちはその予防が可能だと認識していること、そして、私たちはその根絶のために立ち上がるということをはっきりと訴えるべきなのです…」

この討議では、国連難民高等弁務官(UNHCR)の特使を務める、女優で活動家のアンジェリーナ・ジョリー氏も発言し、交戦地帯での性暴力への対処は安保理の責任であると同時に、それによって影響を受ける国々の政府の責務でもあることを強調しました。そして、政府が対処できない場合、安保理が介入し、リーダーシップと援助を提供しなければならないとしたうえで、次のように述べました。

「安保理にとって合意が難しい問題が多くあることは理解しています。しかし、紛争時の性暴力をその一つにすべきではありません。幼い子どもをレイプすることが罪であるという点について、この部屋にいる誰かが同意できないことなど想像しえないからです」

ジョリー特使は、必要なのは政治的意志であり、また、世界のあらゆる国が性暴力の影響を受けていることから、介入の責任はすべての国にあるとしたうえで、次のように発言しました。「しかし、安保理の皆様はその先頭に立って責任を担い、リーダーシップを発揮しなければなりません…。安保理がレイプと性暴力を優先課題とすれば、団結して前進を遂げることができるでしょう。さもなければ、恐怖は続くことになります」

「ジェンダー正義を求める女性の率先行動」のジェーン・アドング・アニワール氏は弁護士、活動家として、紛争時における性暴力の犠牲者に正義をもたらすことに取り組んできた経験を基に発言し、性暴力を含む紛争関連犯罪を処罰するためのリーダーシップは国家のレベルで発揮しなければならず、そのためには資源の確保、性暴力行為を禁じる適切な立法、そして警察官、捜査官、弁護士、および、これら犯罪に判決を下す裁判官の能力育成を優先課題とする必要があると述べました。

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女性と平和、安全に関する討議を行う国連安全保障理事会(2013年6月24日、ニューヨーク)©UN Photo/Devra Berkowitz
女性と平和、安全に関する討議で発言する潘基文(パン・ギムン)事務総長©UN Photo/ UN Photo/Rick Bajornas
紛争時における性暴力に関する事務総長特別代表を務めるザイナブ・ハワ・バングーラ氏(中央右)©UN Photo/Devra Berkowitz
6月の安保理議長国である英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣© UN Photo/Rick Bajornas
国連難民高等弁務官(UNHCR)の特使を務める、女優で活動家のアンジェリーナ・ジョリー氏。安保理がレイプと性暴力への対処を優先課題とし、団結して前進を遂げるよう求めた©UN Photo/Rick Bajornas