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*日本語訳(非公式)ができましたのでお知らせします
気候変動に関するハイレベル会合 議長要旨
(ニューヨーク、2007年9月24日)

プレスリリース 07/089-J 2007年11月01日

気候変動が史上初めて、最高レベルでこれほど直接的かつ建設的に話し合われたことを、私は非常に心強く感じています。この会合で、私たちは新たな時 代に突入したのです。きょう私は、世界の指導者から、バリ会合で気候変動問題解決への突破口を求める声をはっきりと聞きました。そして今、その実現に向け た政治的決意がしっかりと固められたものと信じています。
(議長:潘基文国連事務総長)

科学、影響、迅速な行動の必要性

世界の指導者たちは、気候変動が現実に起こっており、その原因の多くが人為的なものであることを確認しました。最も弱い立場に置かれた国々、特に小 島嶼開発途上国の指導者の発言には、説得力がありました。この問題に断固とした対処を行わない限り、経済と社会の開発は持続できないとのメッセージが大き く、はっきりと伝わったからです。

行動は今すぐ可能であり、しかもそれは経済的に見ても有意義です。対策を講じなければ、早期に対処するよりもはるかに大きなコストがかかるでしょう。

「わが国は世界で最も貧しい国の中に入るが、(開発)目標達成のために決して環境を犠牲にすることはない」という、ある開発途上国からの発言にも、 私は勇気づけられました。事実、環境と開発をともに追求することが唯一の長期的な視野に立った持続可能なやり方であることを考えれば、問題はそのどちらか を選ぶことにはないのです。

  応

皆様の中には、自国がすでにどのような適応課題に直面しているか、実例を挙げて説明する向きも多くありました。皆様は、小島嶼開発途上国や後発開発 途上国をはじめ、気候変動問題の発生をほとんど助長していないにもかかわらず、その影響をまともに受け、最も弱い立場に置かれている国々との連帯感を表明 しました。また、気候変動の避けられない影響に適応するため、これらの国々を支援することも約束しました。

皆様は、政治的意思を実証し、持続可能な開発に向けた国内・国際計画策定の改善、能力育成の強化、そして追加的資金を求めました。国内適応行動計画 (NAPA)はその出発点として推奨されました。これを用いて、当面の緊急ニーズだけでなく、より広い適応ニーズに取り組むべきです。皆様からは「開発と 適応への取り組みは表裏一体」との指摘もありました。別の表現をすれば、公共セクターと民間セクターも、官民パートナーシップを通じた表裏一体の関係にあ るといえましょう。

適応基金(Adaptation Fund)などのメカニズムを通じ、さらに多くの資金を利用できるようにする必要性を指摘し、そのできるだけ早い活動開始を求める声もありました。こうし た資金は、開発途上国による貧困からの脱却とミレニアム開発目標(MDGs)達成を支援するために拠出済みの資金とは別のものとする必要があります。

皆様はまた、防災に努めるとともに、組織的な計画策定と能力育成により、激化の一途をたどる異常気象に対するコミュニティの抵抗力を強める必要性に ついても合意しました。この側面は、各国によるすべての開発計画の策定に取り入れるべきであり、開発機関はその際の支援を提供すべきです。防災と気候変動 対策との相乗効果を高める一助として、私は、どのようにすれば防災能力を高められるのかを検討しているところです。

  減

問題の根本的原因に対処し、断固とした行動によってその影響を逆転させる必要性は、幅広く認識されています。現状の程度の取り組みでは不十分です。

長期的目標という理念への言及があり、多くの国々は法的拘束力のある目標値を求めました。2050年までに排出量を半減させ、気温上昇を摂氏2度に 食い止める必要性も多く指摘されました。これについてはさらに協議が必要であり、バリ会合以降の重要な交渉事項となるでしょう。もちろん、どのような解決 策を講じるにせよ、それは公平で、共通だが差異化ある責任という原則に基づくものとすべきです。また、行動要件を設ける場合には、各国の能力に沿ったもの とせねばなりません。

さらに排出量を削減することが求められている先進国が、この取り組みを引き続き主導しなければならないことは明らかです。多くの先進国の指導者が自 ら、その意思を示したことは心強い限りです。また、開発途上国の指導者の中にも、排出量増大に歯止めをかける策を講じる必要性を認める向きが多くありまし た。

開発途上国が国民の生活水準を向上させるチャンスを逃したくないと考えるのは、無理からぬことです。それでも途上国は、エネルギー効率と計画策定の 向上を伴う、より持続可能なエネルギー・システムなどを採用すれば、エネルギー集約度を抑えた成長が可能であることを認めています。今後の気候変動対策に これらの国々を積極的に関与させるためには、一層の誘因の提供が必要です。

皆様の中には、森林破壊による排出量を最小限に食い止めることの重要性を強調する向きもありました。また、十分な土地利用管理を行えば、さらに幅広い利益が生まれるだろうとの指摘もありました。この関連で開発途上国に誘因を提供する必要性を認める向きが多くありました。

 

技 術

私たちの集団的な気候変動対策においては、科学技術が不可欠な役割を担うことになるでしょう。クリーン・テクノロジーは、持続可能な開発と気候変動対策にとって中心的な存在です。皆様の中からも指摘があったとおり、「世界は技術革命を必要としている」のです。

皆様からは、適応と軽減という目標の達成を目指す上で、すでに数多くの技術的解決策が存在するとの発言がはっきりと聞かれました。効果的な政策枠組 みと協力メカニズムは、先進国・途上国間で、また、それぞれの内部で、こうした解決策の普及を大きく加速することができます。

解決策の普及は重要な課題であり、技術的、経済的、政治的障壁を克服するためには、持続的な取り組みが必要となるでしょう。効果的な政策枠組みと協力メカニズムは、普及を大きく加速できます。現行の技術移転と協力のメカニズムを大幅に拡大する必要がありましょう。

研究開発にさらに投資すれば、将来的に大きく役立つ可能性があります。しかし、この可能性を実現するためには、官民による持続的な協力が必要である ことを認識する向きも多くありました。開発途上国からの発言でも改めて指摘されたとおり、エネルギー政策は開発途上国による貧困根絶への取り組みを促すも のとすべきです。

エネルギー需要が増えつつある開発途上国が、再生可能な低炭素エネルギーと化石燃料を用いるクリーナー・テクノロジーへの道を歩めるようにするためには、国際協力を直ちに拡大する必要があります。クリーン・テクノロジーは経済成長の原動力となれる可能性も秘めています。

化石燃料は当分の間、不可欠なエネルギー源となり続けることから、私たちはエネルギー効率を改善するとともに、炭素捕捉・貯蔵など、最新技術の技術的、経済的な実用可能性を高めてゆかなければなりません。

気候変動の影響に対する各国の抵抗力を高めるためには、適応技術が欠かせません。後発開発途上国や小島嶼開発途上国をはじめ、開発途上国がこうした技術を利用できるようにする必要があります。

資金調達

気候変動への積極的な対策が、持続的経済開発と貧困根絶という根本的優先課題と切り離せない関係にあることについては、皆様も異論がないと思いま す。財界の方々からも明言があったとおり、現在の投資決定は今後数十年間の長期にわたり、排出量に影響を及ぼすことになります。ある企業代表の言葉を借り れば、「国際社会ははっきりと、長期にわたり、法律的な態度を示さねばならない」ということになります。その目標は、軽減と適応への取り組みをともに支援 するような、グローバルな低炭素経済の実現にあります。

皆様からは、気候変動対策が経済開発を脅かさないようにすべきだとする意見も多く聞かれました。開発途上国には、追加的な投資資金を提供するととも に、持続可能な成長の確保に役立つような一連の公共政策手段を見極め、これを実施する能力を育成するための資金も提供すべきです。

皆様の中からも指摘があったとおり、すべての先進国における意欲的な排出量削減に基づき、炭素市場をさらに拡充すれば、低炭素経済への費用効果的な 移行に資する柔軟性が生まれるだけでなく、開発途上国に誘因を提供するために必要な資金も捻出できます。クリーン開発メカニズムは強化すべきです。先進 国、途上国双方から、2012年以降の体制において、現存する森林の保護をカーボン・ファイナンスの対象とすることの重要性を強調する発言がありました。

前 途

今回の会合は、交渉の舞台として予定されたものではありません。その趣旨は、世界の指導者が最高レベルで、協調的な取り組みを通じて気候変動の課題 に取り組むという政治的意思を表明することにありました。皆様は改めて、この問題に関する決定を下せる唯一のフォーラムが国連気候変動枠組み条約 (UNFCCC)であることを明らかにしました。

私たちは、このような合意を必ず、2012年末までに発効させる必要があります。来るUNFCCC締約国会議は、合意された課題を中心に据えた集中 的交渉の出発点とすべきです。交渉は幅広い参加を得た上で包括的に行い、単一の多国間枠組みの確立を目指すものとすべきです。

その他のプロセスやイニシアティブはすべて、UNFCCCプロセスとの一貫性を備え、その妥結に貢献できるような場とすべきです。

私たちは今年に入り、理解と新たな合意の構築に向けて大きな前進を遂げました。さらに課題は残っていますが、今回の会合は、過去と決別し、決定的な 行動を起こす意思と決意が最高レベルにあるとの強力な政治的メッセージを世界に、そしてバリ会合に送ることとなりました。再び、ある発言者の言葉を借りれ ば、「私たちの取り組みは固い決意、創造性、そして強力なリーダーシップを必要とする」ものだといえるでしょう。私たちは交渉を進める上で、地球を守ると いう課題の全体像を見失ってはならないのです。