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「人間の安全保障委員会」報告書を発表

プレスリリース 03/040-J 2003年05月14日

人間の安全保障委員会は2003年5月1日、国連本部において報告書発表のためのプレス・ブリーフィングを行いました。同委員会は前国連難民高等弁務官の緒方貞子氏とノーベル経済学賞受賞者のアマルティア・セン氏が共同議長を務める独立した委員会で、ブリーフィングに先立ち、アナン国連事務総長に同報告書を提出しました。
 
 報告において委員会は、紛争後の移行期に対応するための人間の安全保障基金の設立、危険な紛争および武器の拡散からの人々の保護、移動中の人々に対する安全保障の推進を提案しました。また、そのほかの政策上の結論として、最も貧しい人々の利益になる公正な貿易と市場の強化、世界中で最低限の生活水準を保障する活動、すべての人の基礎保険サービスへのアクセスを優先することも提案しました。
 
 21世紀のはじまりに比べ、現在では人も国も不安と心配を感じる傾向が強くなっている、と緒方氏は述べました。人間の安全保障委員会は、こうした脅威を取り除くことは可能であると示そうとしてきました。
 
 人間の安全保障委員会は、日本の森喜朗前首相とアナン国連事務総長の呼びかけにより、2001年6月に設立されました。森前首相と事務総長は、2000年のミレニアム・サミットで、「恐怖からの解放」と「欠乏からの解放」という2つの目標を達成することの重要性を強調しました。この報告書の焦点の1つは、紛争に関連した不安定と貧困に関連した不安定に対して、統合的な形で取り組むことです。
 
 報告書は、紛争下にある人々の保護、特に女性、子ども、障害者、高齢者といった民間人の保護を扱っています。また、移動中の人々、すなわち難民、国内避難民、および移民の安全保障と権利についても考えられています。さらに、戦争から平和への移行に伴う問題も委員会の視野に入っている、と緒方氏は説明しました。
 
 委員会はそのほかに、トップダウンの保護とボトムアップのエンパワーメント(能力強化)で構成される枠組みを提案しています。トップダウンとボトムアップが組み合わされたこの枠組みは、イラク、アフガニスタン、パレスチナなどの現状へ対応するものとなるでしょう。
 
 イギリスのケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ学長であるセン氏は、この報告書には識字教育と学校のカリキュラム改善のためになしうることを論じた部分が含まれていると述べました。また、経済危機の際に社会的なセーフティネットを提供するための取決めについても注意が払われています。委員会は、国や軍事的な安全保障ではなく、人間の安全保障を中心に据えることに特に力を注いでいます。さらに、委員たちは人間の安全保障を脅かす諸問題に対処、克服するための努力を、世界的に、全国的に、および地域的に結集させる方法や手段を見出すことに重点を置いた、とセン氏は述べました。
 
 ミレニアム宣言に含まれる貧困削減の進捗状況を委員会はどう評価するかという記者の質問に対し、緒方氏は、委員会はまだ成功や失敗を測定していないと答えました。これは同サミットのフォローアップを行っている他の委員会に委ねられています。緒方氏によると、人間の安全保障委員会は、もっとも開発の遅れた国々の大部分は紛争に苦しんでいる国であるとしています。その理由は明らかに政治的、経済的、および安全保障上の問題に関連しています。
 
 セン氏によると、この報告書の主な焦点は困窮あるいは人々の暮らしに当てられています。この報告書は「評価報告書」として書かれたものではありませんが、達成状況の評価について注目が集まるのは当然なことでしょう。ミレニアム・サミットのフォローアップ活動が継続中であるため、人間の安全保障委員会の目標達成状況が測定されるべきです。また、この委員会は広い意味でミレニアム開発目標を含むため、委員会の目標をミレニアム宣言と結びつけたいと考えています。委員会は、ミレニアム宣言で提起された問題に取り組んできました。
 
 別の質問に対し、緒方氏は、国家建設は大規模な軍事行動の重要な一部であると述べました。これはすでにイラクでの課題になっています。緒方氏は、委員会が提案している枠組み、すなわち法規、すぐれた統治、保護手段、能力ある政府というトップダウンのアプローチと、教育、医療、すぐれた市民社会組織というエンパワーメント(ボトムアップ)から成る枠組みは、すべての国家建設において非常に重要であると述べています。緒方氏は、これがイラクにも当てはまるという考えを示しました。
 
 アフガニスタンなどに見られるような戦争から平和への移行に関連する問題について、委員会がどのような提言をしているのかという質問に対して、緒方氏は、そうした国に中央政府を建設することが、提案される枠組みのトップダウン部分の重要な要素であると答えました。地域または現地の多様な軍指導者と中央政府との関係もトップダウンの要素の1つです。アフガニスタンはボトムアップの枠組みが非常に重要な社会であるとの考えを示し、国際社会がこの国の教育、女性、医療、学校といった問題に注意を払うことを歓迎すると同時に、こうした問題に取り組むには忍耐が求められるとしました。
 
 イラクの人々がより安心して暮らせるようにするためにどのような提言をするかとの質問に対し、緒方氏は、重要なのは身体的な安全だけではなく、政治的な安定の必要性、結社の自由、満足のいく政治的連携を達成する自由などをあげました。
 
 ブリーフィングの際の配布資料によると、人間の安全保障委員会は与えられた責務の下で、3つの目的を達成しようとしています。すなわち、人間の安全保障に関する人々の理解を深めること、人間の安全保障の概念を発展させること、そして人間の安全保障に対する重大かつ広範な脅威に対処するための具体的な行動計画を提案することです。