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国連環境計画、戦後イラクの人々と環境を守る戦略を発表

プレスリリース 03/037-J 2003年05月09日

国連環境計画(UNEP)は4月24日、イラクの環境に関する報告書を発表しました。同報告書はイラクが直面する重要な環境上の脅威に関する暫定的な評価(アセスメント)を示し、当面の救済と長期的な復興を目指す行動を勧告しています。
 
 報告書は、人道問題に取り組むための緊急措置の必要性を強調しています。優先すべき課題としては、水供給・衛生システムの復旧、汚染多発の可能性がある場所の浄化、および、都市ゴミと医療廃棄物の蓄積による伝染病蔓延のリスクを軽減するためのゴミ集積場の浄化があげられます。
 
 また、劣化ウラン弾の攻撃を受けた場所で科学的評価を実施することも優先すべき課題です。報告書は、劣化ウランに偶発的にさらされる危険をできる限り減らす方法に関するガイドラインを軍事・文民要員と一般市民に速やかに配布するよう勧告しています。
 
 「環境保護は人道問題だ」と語るのは、UNEPのクラウス・テプファー事務局長です。「環境上の危険は人間の健康と安寧を脅かすだけでなく、援助活動への障害にもなりうるのです」。
 
 環境保護を紛争後の幅広い浄化・復興プロセスに統合するために、追加的な行動が必要とされています。今回の勧告には、環境評価を実施すること、大規模な復興プロジェクトで環境にやさしい技術を利用すること、そして、人間の健康と環境へのさらなる偶発的危険を回避するために主要な利害関係者間で情報交換を最大限に行うことが含まれています。
 
 「イラクの環境問題の多くは極めて深刻なため、速やかな評価と浄化計画が急務となっています。イラクが力強い持続可能な復興を遂げるためには、すべての復興計画に環境を全面的に組み入れなければなりません」。調査班長を務めるペッカ・ハービスト氏は、このように語っています。
 
 イラクの環境に関するUNEPの報告書は2003年2月、スイス政府がジュネーブで開いた人道会議に端を発しています。スイス政府はこの報告書についても、資金の提供を行っています。この会合以降、イラクで本格的な評価を実施するというUNEPの提案は、2003年3月28日に発足した国連人道問題調整部(OCHA)のイラク危機の人道支援に関する緊急アピールの中に含まれています。
 
 報告書はまた、慢性的環境問題に取り組むための知識基盤の構築も呼びかけています。現地調査やデータ収集を含め、さらなる調査を行うために、国内的・国際的専門知識を結集すべきです。優先度の高い問題としては、有害な廃棄物と排出物、水資源管理、生態系(特にメソポタミア川の湿地帯)および劣化ウランをあげることができるでしょう。
 
 また、長期的な環境マネジメントのために、強力な国内制度と能力を築き上げる必要もあります。民主的な統治と制度的機構の開発において、環境は優先課題として取り扱わなければなりません。国連の枠組みの中で活動する国内・国際専門家は、実効的で持続可能な環境マネジメントのための制度、立法、能力構築および資源のニーズの定義付けに取り組むべきです。イラクが主要な環境条約へ加入することは支援されるべきです。
 
 UNEP報告書は、現在のイラク紛争が、過去20年間にイラクで積み重なってきた環境への慢性的ストレスを悪化させたことは疑いないと結論づけています。同国の環境は1980年代のイラン・イラク戦争、1991年の湾岸戦争、前イラク政権による環境面での失策、および、経済制裁への影響によって、深刻な打撃を受けています。
 
 イラクの人々に対する重大な脅威の一つは、同国の環境インフラに対する物理的損害の蓄積です。特に、水道・衛生システムの破壊と、これに対する投資の欠如により、汚染と健康へのリスクが増大しています。
 
 さらに、継続的な停電のため、下水を除去し淡水を循環させるポンプがしばしば稼動を停止しました。停電はまた、南部の氾濫原にある灌漑地から塩水を取り除くポンプにも影響を与え、広い地域で浸水と塩水化が発生しました。
 
 イラクの数次にわたる紛争中には、軍産インフラが破壊され、重金属やその他の有害物質が大気、土壌および淡水中に放出されました。しかし、同国における化学的リスクと環境汚染のレベルについては、まだ評価が行われていません。
 
 過去2カ月間の油井火災と塹壕に張られた石油の燃焼による煙で、局地的な大気汚染と土壌汚染が起こっています。近年では、石油産業への投資も行われていないため管理が行き届かず、原油の漏出の危険性が高まっています。
 
 集中的な爆撃、および、多数の軍事車両と兵員の移動は、自然と農業の生態系をさらに劣化させました。砂漠の固い地表が撹乱されると、その下にあった砂が露出し、浸食あるいは流出がしばしば発生します。その一方で、越境汚染と河川流域管理の欠如は、イラクの主要な水路の劣化を引き起こしました。
 劣化ウラン弾の集中的な投下により、環境汚染が引き起こされていると見られますが、その規模も影響もまだわかっていません。劣化ウランの調査を行うためには、爆撃目標の正確な位置を軍から入手する必要があるでしょう。また、イラクの数次にわたる軍事紛争により、不発弾を含む戦争の遺物が大量に拡散しています。
 
 イラクの環境に関するUNEP調査は、イラクに対する人道援助提供への国際的取り組みの一環として、UNEPの紛争後評価班が実施しました。調査報告書は、至近の紛争に関する報道記事や軍による発表にもとづき、出版物およびオンライン資料を参考に概観を示したものです。
 
 幅広い環境データ、および、中東地域での紛争と環境に関する文書はwww.unep.orgで、またUNEPによるこれまでの劣化ウランおよびその他紛争後評価に関する報告書はpostconflict.unep.chで、それぞれご覧になれます。