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COP23ハイレベル・イベントでの事務総長演説(ボン、2017年11月15日)

プレスリリース 17-063-J 2017年11月27日

来賓の方々、
各国代表団の方々、
皆様、

バイニマラマ首相の発言に感謝いたします。また、気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)議長国として、フィジーが顕著な役割を果たしたことについても、お祝いを申し上げます。フィジーとフィジー政府、そして首相ご自身による素晴らしい功績に対し、心から感謝いたします。

まさに首相が述べられたとおりです。私たちには、さらに大きな意欲が必要です。ともに力を合わせ、より速く、より遠くへ進まなければなりません。

気候変動による影響の矢面に立たされているフィジーが、今年の会議を主導したことには、大きな意義があります。

私は先月、アンティグア・バーブーダとドミニカという、同じく地球温暖化の影響に直面している小島嶼国を訪問しました。

ハリケーンによる被害には、想像を絶するものがありました。

気候変動の壊滅的な影響が、私たちに迫っています。

気候変動による影響の最前線に立たされている小島嶼国の声を、私たち全員の声にしなければなりません。

戦場で前線が総崩れになれば、全軍が壊滅します。気候変動の場合には、地球全体が同じ運命をたどることになるでしょう。

洪水、火災、激しい暴風雨や干ばつは、その威力と頻度を増しつつあります。

大気中の二酸化炭素濃度は、過去80万年で最も高い値に達しています。

気候変動は、私たちの時代にとって揺るぎない脅威なのです。

私たちのお互いに対する、そして将来の世代に対する義務は、意欲を高めることです。

私たちは排出量、適応、資金調達、パートナーシップ、そしてリーダーシップという、意欲を要する5つの行動分野で、さらに取り組みを強化する必要があります。

第1に、排出量の削減です。

国連環境計画(UNEP)による最新のギャップ報告書を見ると、現時点での約束を果たしても、パリ協定にいう安全圏にとどまるために必要な成果の3分の1しか達成できません。

グローバル・カーボン・プロジェクトは今週に入り、2017年の二酸化炭素排出量は3年ぶりに増加する見込みであるという報告を発表しました。

気温上昇を2度未満に抑えるという絶好のチャンスは、20年も経たないうちに潰えてしまうかもしれません。

また、気温上昇を1.5度に抑えるべく排出量の伸びを逆転させるための時間は、5年しか残っていないかもしれません。

2020年までに、排出量を最低でもさらに25%削減することが必要です。

その一方で、心強い前進の兆候も見られています。

何年も前から、排出量を削減すれば成長が抑えられてしまうため、大量の二酸化炭素排出は前進の代償としてやむを得ないと主張する向きは多くありました。

現在、この理屈は通用しません。私たちは排出量を経済成長から切り離し始めているからです。

中国やインドのような経済大国はそれぞれ、パリ協定での約束を上回る成果を達成できる見込みです。

炭素市場が生まれ、成長しています。グリーンボンド市場も拡大しています。

すべての国が、パリ協定の約束をきちんと果たさねばなりません。

パリ協定自体が、私たちに意欲を高めることを求めています。ですから、私は皆様に対し、2020年の自国が決定する貢献(NDC: nationally determined contribution)の改定を機会に、2030年の排出量ギャップを埋めることを強く訴えたいと思います。

皆様、

意欲を高めるべき第2の分野は、適応です。

緩和は不可欠ですが、気候変動の影響はすでに現れており、短期的には悪化の一途をたどることになります。

適応とレジリエンスの強化を図ることは欠かせません。

この点で、緑の気候基金は触媒的な役割を果たせます。私はドナーをはじめとする基金のメンバーに対し、このメカニズムを十分に機能させるようお願いしたいと思います。

私は国連システムに対しても、各国レベルでの適応とレジリエンスに向けた取り組みを促進するよう要請しています。

2015年、G7諸国は2020年までに、社会的に弱い立場にある人々さらに4億人に対し、異常気象に対する保障を提供する旨約束していますが、私はこの約束を称賛します。

また、ここボンでドイツ政府の主導により、この意欲を前倒しで行動に表すことが発表されたことも歓迎します。

保険業界自体も、気候変動によるリスクに関し、以前から警鐘を鳴らしてきました。

保険業界には、リスクにさらされた人々に保障を提供する意欲があります。また、企業と政府の双方に対し、計画や政策、業務で気候変動の影響を考慮に入れるよう、強く働きかけています。

私はこうした取り組みを全力で促進していきます。

皆様、

第3に、資金調達の問題があります。

排出量や適応、レジリエンスに対する意欲を高めるためには、資金調達が欠かせません。

すでに合意されているとおり、私たちは毎年1,000億ドルを開発途上国に供与する必要があります。

信頼と信用を構築するためには、この役割を守ることが不可欠です。

すべての国、特に最も脆弱な国が、避けられない気候変動の影響に立ち向かい、クリーンな経済成長を図れるようにすることが極めて大切です。

加えて、市場にも、低炭素の気候変動に強い未来に向けた資金を確保するうえで、中心的な役割を果たす能力と義務があります。

しかし、そのためにはこれらに逆行する短絡的な動きから市場の方向性を変える必要があります。

2016年には、化石燃料と排出量の多い部門に8億2,500万ドルが投資されたと見られています。

私たちは、貯蓄や社会を危険にさらすような、持続不可能な未来に賭けることをやめなければなりません。

経済協力開発機構(OECD)は今年になって、成長と気候変動対策を組み合わせれば、2021年までにG20諸国の平均経済生産が1%伸びる可能性もあることを明らかにしました。

気候変動の影響による被害の回避という経済的利益をこれに加えれば、2050年の国内総生産は5%も伸びることになります。

インフラ整備への投資は欠かせません。

世界は、環境に配慮しない大型インフラ整備プロジェクトは承認しないという、単純なルールを採用すべきです。

さもなければ、私たちは今後何十年も、間違った選択を続けざるを得なくなります。

気候に優しい開発への投資こそが、賢い資金の使い方なのです。

私は来月、資金調達について集中的に話し合うため「ワン・プラネット・サミット」を招集するという、マクロン仏大統領のイニシアティブを歓迎します。

2020年までに炭素排出量を少なくとも10億トン削減するため、私は再生可能エネルギーと省エネのプロジェクトに対する国際的な資金供与の増額に努めていきます。

デンマークが提案した「クリーンエネルギー投資連合」の結成は、検討する価値のある構想です。

私たちはカーボンプライシングについても、さらに強い決意を持って取り組むべきです。

それは温室効果ガス排出量の削減の鍵を握る手段だからです。

パリ協定NDCの過半数には、カーボンプライシングの必要性が盛り込まれています。

昨年は、カーボンプライシングの取り組みで220億ドルの資金が生まれました。

ヨーロッパと北米で炭素市場が成長していることと、中国が世界最大級の排出量取引制度の発表を予定していることは、良い兆候といえます。

しかし、パリ協定の目標を達成するためには、世界の50%以上をカバーし、炭素価格を引き上げることで、大規模な気候変動対策を推進する必要があります。

私はG20諸国に対し、しっかりとした手本を示すよう、強く訴えます。

皆様、

意欲を高めるべき第4の行動分野は、パートナーシップです。

必要とされる大胆な措置を取るためには、すべての重要部門とすべての主体を巻き込んだ行動に向けた連合を作り上げなければなりません。

民間企業や地方自治体、市民社会とのパートナーシップは、パリ協定履行の成否を左右することになるでしょう。

特に、気温の上昇を2度未満に抑え、かつ、これをできるだけ1.5度に近づける道は、民間部門をエネルギー転換に向けて動員すること以外にありません。

クリーンエネルギーやクリーン輸送政策など、政府からのインセンティブがあれば、企業は私たちに必要なグリーン経済の推進に向け、市場を動かすことができます。

私たちはテクノロジー関連の大手グローバル企業や石油・ガス部門、自動車業界を巻き込むことで、その事業計画をパリ協定の目標と整合させる必要があります。

また、農林業部門にも働きかけ、気候に優しい土地利用を確保することも必要です。

しかし、私たちは政府や地方自治体、慈善団体、投資家、消費者など、あらゆる主体を低炭素経済への転換に参画させねばなりません。

市民と市民社会には、この根本的なシフトを実現するうえで欠かせない役割を果たす能力と義務があります。

来年、カリフォルニア州知事と、私の事務総長特使であるマイケル・ブルームバーグ氏は、アナンド・マヒンドラ氏とともに、都市や州、企業、市民団体を招集し、これら不可欠な主体の一層の参画を促す予定です。

各地で、あらゆる規模で、そしてあらゆるレベルで、ますます幅広い主体や機構が参画する行動が見られています。

この勢いをさらに強めていこうではありませんか。

皆様、

第5に、私たちには強力な政治的リーダーシップが必要です。

気候変動の問題を解決すれば、持続可能な開発のための2030アジェンダに盛り込まれた目標の多くが達成できるようになります。

私は皆様に対し、ここボンで、そして自国でも、大胆な討議を続けることをお願いします。

低炭素の気候変動に強い政策立案を受け入れることで、皆様は世界を正しい道へと導くことができます。

そして、皆様が向かう先には、企業と市民社会がついて来るでしょう。

私は2019年9月、最も高いレベルで政治的、経済的エネルギーを結集させるため、気候サミットを招集する予定です。

差し当たっては、京都議定書採択20周年と、気候変動枠組条約採択25周年にあたる今年、私はまだ京都議定書ドーハ改正を批准していない国に対し、速やかにこれを批准するよう呼びかけます。

また、私は世界のリーダーに対し、オゾン層破壊につながるハイドロフルオロカーボン(HFC)使用の段階的削減を定めるキガリ改正の批准と履行も呼びかけたいと思います。

皆様が国民の福祉について真剣に取り組んでいることを人々に証明する手段として、気候変動対策でのリーダーシップ発揮に勝るものは考えられません。

既得権と闘う勇気を見せてください。

将来の機会に投資する英知を示してください。

私たちの子どものために、どのような世界を作っていくかを考える人々に、共感を表しください。

私自身も元政治家として、今日の世界でこれこそが今の前進と、将来の有意義な遺産構築へとつながる道であることを確信しています。

来賓の方々、皆様、

結局のところ、本当に大切なのは、すべての人々が健全な地球で平和と豊かさ、尊厳、そして機会を得られるような、安心できる世界を作るという意欲だけです。それは持続可能な包摂的開発を実現することに他なりません。

世界は皆様の英知と先見の明を頼りにしているのです。

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原文(English)はこちらをご覧ください。