• プリント

国連は何ができるのか? ― 5つのよくある質問への回答(UN News 記事・日本語訳)

2022年05月30日

激化する戦闘の中で大きな被害を受けたアパートを撮影する男性(ウクライナ・キーウにて)© UNICEF/Anton Skyba for The Globe and Mail

 

2022年4月5日 ― ロシアによる侵攻を受けたウクライナでの戦争が、国連、特に安全保障理事会、総会、事務総長の果たす役割に関する様々な問いを触発しています。

以下、国連憲章をもとにして、UN News が5つのよくある質問に答えます。

 

安全保障理事会は戦争を止められるのか?

まず安全保障理事会の任務を確認しましょう。

安全保障理事会の任務と権限は、国連の設立文書である国連憲章に規定されています。国連憲章は、国際機構に関する連合国会議の最終日の、1945年6月26日にサン・フランシスコ市において調印され、同年10月24日に発効しました。

安全保障理事会は15の理事国で構成され、うち中国、フランス、ロシア連邦、英国、米国が5常任理事国を占め、その他の国連加盟国の中から交代で10の非常任理事国が選出されます。安全保障理事会は国際の平和と安全の維持に主要な責任を負い、平和に対する脅威、平和の破壊および侵略行為の存在を決定する上で主導的役割を担っています。

知っている人は多くないかもしれませんが、1965年より前の安全保障理事会は11の理事国で構成され、そのうち非常任理事国は6カ国でした。国連総会決議(A/RES/1991(XVIII))が採択されたことを受け、国連憲章第23条第1項が改正されて15の理事国に拡大されたのです。

安全保障理事会の理事国をまだ経験したことのない国連加盟国は約60カ国あります。しかし、国連のすべての加盟国は、国連憲章第25条に基づき、安全保障理事会の決定を受諾かつ履行することに同意しており、安全保障理事会が講じる措置は、すべての国連加盟国を拘束します。

安全保障理事会は、危機への対応にあたり、国連憲章に基づいていくつかの措置を講じることができます。

安全保障理事会は国連憲章第6章に基づいて行動し、平和的手段によって解決することを紛争の当事者に要請し、調整方法や解決条件を勧告することができます。また、国際司法裁判所(ICJ)への紛争の付託を勧告することもできます。ICJは「世界法廷」として広く知られている国連の主要な司法機関で、オランダ・ハーグに所在しています。

安全保障理事会は、場合によっては国連憲章第7章に基づいて行動して制裁を課したり、紛争を解決するための平和的手段が尽くされた時に、最後の手段として、国際の平和と安全の維持または回復のために加盟国、もしくは加盟国連合、または国連が権限を付与した平和活動による武力の行使を承認したりすることもできます。

重要なことは、国際の平和と安全を維持するための安全保障理事会の決定を履行するのに必要な行動が、国連憲章第7章に基づき、安全保障理事会が定めるところに従って国連加盟国の全部または一部によってとられるということです。

安全保障理事会が、軍事的強制行動と言われる行動に基づく武力の行使を初めて承認したのは1950年のことであり、北朝鮮軍を韓国から撤退させることを目的としたものでした。

2022年2月27日、ウクライナ情勢を巡る会合を開く国連安全保障理事会© UN Photo/Loey Felipe

 

「拒否権」とは何か、どのように行使されるのか?

安全保障理事会の表決手続きは国連憲章の第27条に基づいており、各理事国が1個の投票権を有することが規定されています。

「手続事項」に関する決定の採択には、9理事国の賛成投票が必要です。その他のすべての事項については、「常任理事国の同意投票を含む」9理事国の賛成投票が必要となります。

すなわち、常任理事国5カ国(中国、フランス、ロシア連邦、英国、米国)のうち1カ国でも反対投票を行った場合、実質事項に関連するいかなる決議案についても、安全保障理事会による採択を阻止することができます。

1946年以降、常任理事国5カ国(通称「P5」)のすべての国が、時に様々な問題について拒否権を行使してきました。これまで行使されてきた拒否権のうち、ソビエト連邦とその後のロシア連邦(国連加盟国としてのソビエト連邦の地位は、安全保障理事会を含めてロシア連邦が継承)が約49%、米国が29%、英国が10%、中国とフランスがそれぞれ6%を占めています。

1946年以降の安全保障理事会における拒否権の詳細については、こちらをご覧ください。

激化する戦闘を逃れ、ウクライナから国境を越えてポーランド・ベルディシュチェに到着した家族© UNICEF/Tom Remp

 

安全保障理事会が戦争を止める決定を下せないとき、総会は介入できるのか?

1950年の国連総会決議377A (V)、いわゆる「平和のための結集」決議によると、拒否権を行使できる常任理事国5カ国の全会一致の合意が得られないために安全保障理事会が行動をとれない場合、総会は、国際の平和と安全を維持または回復するための集団的措置を求める勧告を、より広い国連加盟国に行う権限を有しています。

例えば、国連の平和活動を展開する時期と場所は安全保障理事会が最も多く決めていますが、歴史的に見ると、安全保障理事会が決定を下せない時は、総会が決めていました。例えば1956年に、総会は中東に第1次国連緊急軍(UNEF I)を創設しました。

さらに総会は、安全保障理事会の9理事国または国連加盟国の過半数の要請があった場合、緊急特別会期で会合を開くことができます。

これまでに、総会は緊急特別会期を11回開催しました(うち8回は安全保障理事会の要請によるもの)。

直近では2022年2月27日、常任理事国の全会一致の合意が得られないために国際の平和と安全の維持に関する主要な責任を果たすことができないことを踏まえ、安全保障理事会は、決議2623(2022)において総会の緊急特別会期を招集することを決定しました

その結果、総会は2022年3月1日に緊急会期で会合を開き決議を採択しました。その中で総会は、「国連憲章第2条第4項に違反するロシア連邦によるウクライナ侵攻」を非難し、ウクライナに対する武力行使を直ちに停止し、国際的に認められた国境内のウクライナの領土からすべての軍隊を完全かつ無条件に撤退させることをロシア連邦に要求しました。

しかし、安全保障理事会の決議とは異なり、総会決議に拘束力はないため、各国は総会決議を履行する義務を負いません。

国連憲章に違反するロシア連邦によるウクライナ侵攻を非難する決議を採択する国連総会© UN Photo/Loey Felipe

 

国連加盟国の地位は剥奪できるのか?

国連憲章第6条では、以下のように規定されています。

この憲章に掲げる原則に執ように違反した国際連合加盟国は、総会が、安全保障理事会の勧告に基づいて、この機構から除名することができる。

国連の歴史の中で、除名が行われたことはありません。

第5条では、加盟国の資格停止について規定されています。

安全保障理事会の防止行動又は強制行動の対象となった国際連合加盟国に対しては、総会が、安全保障理事会の勧告に基づいて、加盟国としての権利及び特権の行使を停止することができる。これらの権利及び特権の行使は、安全保障理事会が回復することができる。

加盟国の資格停止や国連からの除名は、安全保障理事会の勧告に基づいて総会によって実施されます。かかる勧告には、安全保障理事会の常任理事国による同意投票が必要です。

常任理事国の排除は、自国の除名または資格停止に同意しない限り、国連憲章第18章の規定によって国連憲章を改正せずには、実現することはできません。

しかし国連は、重大な不公正に終止符を打つため、特定の国に対する措置を講じてきました。一例としては南アフリカが挙げられ、国連はアパルトヘイトに対するグローバルな闘いに寄与しました。この時は、アパルトヘイト体制の非人道性に世界の関心を向け、民衆による抵抗を正当化し、各国政府や非政府組織による反アパルトヘイト活動を推進し、武器禁輸を課し、石油の禁輸や多くの分野におけるアパルトヘイトのボイコットを支持しました。

アパルトヘイト廃止までの過程において、安全保障理事会が1963年に南アフリカに対する任意の武器禁輸を課したほか、総会は1970年から1974年にかけて同国の委任状を拒否しました。この禁止によって、南アフリカは1994年のアパルトヘイト廃止まで、総会でのその後の審議には参加しませんでした。

ウクライナでの戦争について記者ブリーフィングを行うアントニオ・グテーレス事務総長© UN Photo/Mark Garten

 

事務総長による「周旋」とは何か?

重要な平和創造の主体としての事務総長の役割は、幅広い実践を通じて発展してきました。事務総長が行う活動の範囲には、周旋、仲介、便宜、対話プロセスのほか、仲裁も含まれます。

事務総長が果たす最も重要な役割の一つは、彼(国連のこれまでの75年の歴史の中で、9人の事務総長全員が男性)による「周旋」の利用です。周旋とは、国際紛争の発生や激化、拡大を防止するために、独立性、公平性と誠実性、そして静かな外交力をもって公的または私的に講じる措置のことです。

これは、実際には国連事務総長がその権限、正当性、外交に関する幹部チームの専門知識を活用し、国家元首やその他の当局者と面会して、当事者間における紛争終結について交渉することを意味します。

3月末、アントニオ・グテーレス事務総長周旋の利用に乗り出し、ロシア、ウクライナ、そしてこの戦争の平和的解決を模索するその他の国々の間で人道的停戦の可能性を探るよう、国連の緊急援助調整官であるマーティン・グリフィス事務次長に指示しました。

 ウクライナ戦争に関する記事は In Focus(国連本部ウェブページ)をご覧ください。https://news.un.org/en/focus/ukrai

* *** *

原文(English)はこちらをご覧ください。