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日本証券サミットでのアミーナ・モハメッド副事務総長スピーチ 「持続可能な開発目標(SDGs)の資金調達」 (ニューヨーク、2018年2月7日)

プレスリリース 18-007-J 2018年02月20日

日本証券業協会(JSDA)の鈴木茂晴会長(右から3番目)ら一行を迎えるアミーナ・モハメッド副事務総長(ニューヨークの国連本部で、2018年2月7日)©UN Photo/Manuel Elias

鈴木彩果 国連事務総長室 戦略企画・モニタリング部門ディレクターによる代読

来賓の方々、

皆様、

日本証券サミットに参加できることを光栄に思います。

まず、私たちの世界が多くの危機と深刻な課題に直面しているという現状認識から、私の話を始めたいと思います。多発する紛争は相互の関連性を深め、グローバル・テロリズムという新たな脅威も生まれています。

世界の力関係が不明確になっていることが、予測と処罰を不可能にしています。危機の予防と解決に向け、世界が結束することは難しくなっています。

人口増加や移住、気候変動、食料不安、水不足といった地球規模のメガトレンドは、私たちが直面する危機をさらに増幅させています。

そして、技術が医療や通信を大幅に前進させ、貧困が劇的に減少し、生活水準が改善する中でも、私たちの世界は極めて深刻な不平等を抱え、それが人々と、政府や国際機関を含む制度機構との間の信頼の欠如を助長しています。

これは人々の恐怖や不安、そしてあからさまな怒りに反映されています。

持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、世界がこうした諸課題に総合的に取り組むための試みです。

人間、地球そして豊かさのためのこの大胆なグローバル・アジェンダは2015年、すべての政府によって合意され、国連が2030年まで各国政府に提供する支援を方向づける中核的な指針となっています。

「2030アジェンダ」は相互に連関する17の目標に基づいています。それが「持続可能な開発目標(SDGs)」です。

簡潔ながら野心的ないくつかのグローバルな目標をしっかりと説明すると、以上のようになります。これらの目標は健康、教育、雇用、食料の安定確保、気候変動、エネルギー、インフラ、持続可能な都市などに関係しています。

SDGsは全体として取り組むことで、世界により持続可能でレジリエントな道を歩ませながら、すべての人の人権と尊厳の尊重を確保する包括的なアジェンダを形成しています。

「2030アジェンダ」と「持続可能な開発目標」を達成する主たる責任は、各国政府にあります。国連は多様な形で、そのための支援を提供しています。

目標17は、各国政府と民間セクター、市民社会、国連、そしてすべての人々の真のパートナーシップがあって初めて、アジェンダの理想が実現できることを認識しています。

2030年までに17のSDGsを達成するためには、市民社会や民間セクター、そしてまさに証券業界を含め、あらゆる人の支援が必要となります。

私がきょう、ここで皆様にお話をしている理由も、そこにあります。

皆様、

私は民間セクターの中で、SDGsへの参画に対する関心が一気に高まっていることに、心を強くしています。私たちは過去3年の間、より多くの企業が自らの戦略をSDGsと整合させ、政府による国内での目標達成を支援していることを実感しています。

私たちは、民間企業のコアビジネスが、国際社会の戦略的目標へと徐々に収斂していく様子を目の当たりにしているのです。

事務総長が昨年、ダボスの世界経済フォーラムで述べたとおり、「ビジネスだけが企業の仕事ではない」という意識が高まっています。

このことは特に、気候変動への対応にはっきりと表れています。グリーンビジネスへの投資は企業のためになり、グリーン経済は民間セクターに利益をもたらす投資機会を多く作り出しているからです。企業は今まさに、気候アクションの重要な推進役となっています。

この団結の強まりは昨年7月、国連で開催された第2回SDGビジネスフォーラムでも明らかになりました。各国政府と民間セクター、国際機関、市民社会は、企業が「2030アジェンダ」の達成を支援できる具体的な方策について話し合いました。

企業の代表は、年金基金の運用益、政府開発援助(ODA)の民間セクターへのシフト、インフラ整備プロジェクト向けの資金調達の重要性などの問題について議論を行いました。

官民パートナーシップは、ビジネス界が公共セクターと手を携え、縦割りの弊害を崩し、イノベーションを促し、本当に必要な資源を活用することで、グローバルな課題に対する統合的な解決策を開発できることを示す好例です。

私たちには新たなレベルで「持続可能な開発目標」を達成するためのパートナーシップが必要です。それは魅力ある投資案件を作ると同時に、民間セクターがSDGs達成に欠かせない役割を果たせるようにするための機会です。

国連は今年4月に「SDG投資フェア」を開催し、SDGsへの投資規模の拡大に関する取り組みを披露するとともに、政策対話を促進する予定です。

このイベントのねらいは、SDGs達成を支援する大規模プロジェクトの財源として民間資本を活用できる方法につき、政府担当者の理解と知識を高めることにあります。

SDG投資フェアに続き、7月には第3回SDGビジネスフォーラムも開催されます。

今後も多くのイベントが予定されていますので、ぜひともご参加ください。

皆様、

「持続可能な開発目標の資金調達」ほど重要なトピックはありません。

その課題は明らかです。私たちは毎年、SDGsの財源を確保するため、数兆米ドルを必要としています。

そして、私たちがこれを達成できる方法は、民間の金融と投資を動員し、公共セクターによる投資と資金供与を補足すること以外にありません。

必要とされる水準の投資を確保することは、骨の折れる仕事です。

そのためには、「数十億から数兆ドルへ」という課題にもあるとおり、官民の投資をともに大きく引き上げることが必要になります。

国連は「開発資金に関するアディスアベバ行動目標」を通じ、SDGsの達成を支援する資本と投資の動員に全力で努めています。

具体的には、開発途上国による税制改革や、脱税、マネー・ローンダリング、そして不正な資金の流れと闘う国際的な取り組みが含まれます。

それはつまり、ドナー国が政府開発援助の誓約を守ることを意味します。

また、革新的な資金を誘致し、金融市場と民間投資へのアクセスを広げようとしている開発途上国を支援することも意味します。

しかし、私たちは目標を達成するために欠かせない数兆ドルの資金を運用する金融・投資部門の潜在能力も活用せねばなりません。

その中には公的・企業年金基金、制度的資産管理者、銀行および保険会社が含まれます。

言い換えれば、私たちは社会的な影響力に重きを置く「インパクト投資」の将来性ある若芽を、メインストリーム金融を全面的に取り込んだ、より大きく幅広い「SDG投資」というグローバル運動へと進化させねばならないのです。

今のところ、メインストリーム金融を活用するために必要な規模を備えた手段はほとんどありません。

私たちは、これを変えねばなりません。

私たちは、過去に類を見ないイノベーションで、新しい理念、解決策、投資可能手段を中心に官民の投資家を結束させて、グリーンファイナンスの一歩先を行き、SDGsのニーズに取り組まねばなりません。

国際的な機関投資家は、75兆ドルから85兆ドルの資産を保有すると見られています。

これは、持続可能な開発にとって重要な潜在的財源と言えます。

よって、年金基金のような機関投資家は、SDGsと足並みをそろえる企業への投資を拡大するとともに、その投資決定にESG要因、すなわち環境面、社会面、ガバナンス面の要因を組み込むよう求められることになります。

このような投資案件には支持が集まってきています。また、株式市場のベンチマークから見ても、ESGに関わる課題でパフォーマンスが良い企業は、ESGパフォーマンスが悪い企業よりも高い業績を上げる傾向にあることを示す強力な証拠があります。

顧客が持続可能な投資を求めれば、機関投資家もこれに関心を向けるのです。

私たちは、サステナビリティレポートを強化し、資産管理担当者のインセンティブを持続可能な投資と整合させることにより、こうした投資への移行を促進する必要があります。

格付機関にも、長期的な投資機会について信頼できる情報を提供するうえで、重要な役割があります。

証券取引所はますます、ESG関連の事項を上場要件で考慮するようになっています。

現在までに68の取引所が「持続可能な証券取引所イニシアティブ」に加わっています。行動を変えるためには、このイニシアティブの影響力を高めるための取り組みがさらに必要です。

グローバル金融システムのあらゆる部分に、持続可能な開発の資金調達への移行を図るうえで果たすべき重要な役割があります。

来賓の方々、

皆様、

国連にはSDGsの達成に向けた進捗状況を審査するプロセスがあります。昨年は日本を含む43カ国が、このプロセスに参加しました。素晴らしい審査結果が出ています。

安倍晋三総理を本部長とするSDGs推進本部も内閣に設置されました。皆様は、様々なイニシアティブが相互に関連し、補強し合うよう、国内でのSDGs達成に向けて政府一体型のアプローチを採用しています。また、政府は多様な形で、日本国民のSDGsに対する認識を高めています。

「2030アジェンダ」に対する日本のコミットメントは、先進国にとっての模範と言えます。

ESG投資は大きな潮流になっています。インパクト投資とグリーンボンドの分野での取り組みは歓迎できます。日本経団連の「ソサエティ5.0」の理念と改定版「企業行動憲章」はSDGsとよく整合が取れており、民間セクターのSDGsへのアプローチを示す好例として共有すべきです。

責任投資原則(PRI)は最近、日本に関するロードマップを発表しましたが、ここでは日本が責任投資市場として高度成長を遂げていることが明らかにされています。

私は皆様に対し、PRIが出した多くの優れた提言に留意するようお願いしたいと思います。

世界で最大級の規模を誇る日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、SDGsの発足と同時にPRIに加わりました。安倍総理は国連総会で、これが持続可能な開発の達成に寄与することは間違いないと発言しています。

GPIFはその後、運用額の少なくとも10%をESGに向けることを発表しました。これは約300億米ドルに相当する金額です。

日本は「人間の安全保障」という原則を指針として、開発途上国でのSDGs達成に向けた取り組みにも貢献しています。これによって健康、災害リスク削減、国際協力におけるジェンダーの平等が大きく前進しました。

私は日本の決意と意欲に感謝するとともに、今後の取り組みの継続をお願いしたいと思います。

皆様、

日本と世界が「持続可能な開発のための2030アジェンダ」から何を得られるか、そして、それがどれだけ重要かを皆様が理解するうえで、私の発言が何らかの参考になれば幸いです。

私たちが下す選択には、大きな重みがあります。

それは、今日の世界情勢についてただ嘆くのか、それとも「持続可能な開発目標」によってできた機会を捉え、将来に投資するのか、どちらかの選択です。

私は皆様全員に対し、SDGsを投資の枠組みとして捉え、皆様の投資をこれら目標と整合させることをお願いしたいと思います。

「持続可能な開発目標」の達成に向けて果たすべき役割は、私たち全員にあります。

その達成に向け、パートナーシップを通じて、ともに取り組もうではありませんか。

ありがとうございました。

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