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COP24で、締約国がパリ協定実施に向けた具体的な方策に合意

2018年12月20日

20181215日-ポーランドのカトヴィツェで開催された国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)に集った締約国約200カ国は12月15日、(延長を含め)2週間に及ぶ緊迫した交渉の末、地球温暖化を産業革命以前との比較で2℃をはるかに下回る水準に抑えることを目指す2015年の画期的なパリ協定の実施に向け、一連の「確固たる」なガイドラインを採択しました

数日間にわたる徹夜の作業を経て、歓声と拍手で迎えられたミハウ・クリティカCOP24議長は、10回以上にわたって延期された最終全体会合の冒頭で発言しました。

議長は、列席する各国代表数百人の「忍耐強さ」に感謝するとともに、昨夜が「長い夜」になったことを明らかにしました。ある代表が大きなあくびをする姿が議場の大きな画面に映ると、一斉に笑いが起きました。会議は本来、前日に終了することになっていたからです。

パトリシア・エスピノーサ国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局長は、アントニオ・グテーレス国連事務総長に代わり、「カトヴィツェ会議は再び、私たちの気候変動対策に関する揺るぎないロードマップとしてのパリ協定の強靭性を実証しました」と述べました。

気候変動への影響への対処を事務総長として最優先課題の一つに掲げているグテーレス氏は、この2週間の間に3度にわたってカトヴィツェを訪れ、交渉の支援にあたっていましたが、閉会式が数度にわたって延期されたことから、先約のために閉会式の場にいることはできませんでした。

採択された一連のガイドラインは「ルールブック」とも呼ばれ、気候変動対策に向けた野心を高めるとともに、最も脆弱な立場にある人々をはじめ、あらゆる方面の人々に利益を及ぼすよう策定されています。

信頼醸成と気候変動対策のための資金

「カトヴィツェ・パッケージ」の重要な要素として、あらゆる国が気候変動に取り組む役割を果たしているという認識に基づき、国家間の信頼を促進することを目的とする詳細な透明性枠組みが挙げられます。また、温室効果ガス排出量の削減や、緩和と適応のための措置を含め、各国がそれぞれの行動計画について情報を提供する方法も定められています。

温室効果ガス排出量を統一的に計測する方法について合意が見られたほか、比較的貧しく、所定の基準を満たせないと感じる国は、理由を説明したうえで、これに関する能力構築に向けた計画を提示することができます。

開発途上国における気候変動対策への先進国からの資金供与という困難な問題に関し、最終文書は2025年以降について、2020年までに年間1,000億米ドルを動員するという現状の公約よりも野心的なターゲットを新たに設けることを定めています。

今回の交渉で注目すべきもう1つの成果として、2023年に気候変動対策の実効性を集団的に評価することと、技術の開発と移転に関する進捗状況をいかに監視、報告すべきかについて、各国の合意が得られたという点が挙げられます。

「各国代表団が連日連夜、検討を重ねてきたガイドラインは、世界各国による責任分担をはっきりと反映する、バランスの取れたものとなっています。ガイドラインは、各国の能力と国内の経済・社会情勢には違いがあるという事実を認めつつ、絶えず野心を高めてゆくための基盤を提供しています」エスピノーサ事務局長はプレス・ステートメントで、このように述べています。

また、エスピノーサ事務局長は「今後さらに詳細を詰め、改善を図る必要はありますが、システムとしてはほぼでき上がっています」と付け加えました。

第6条:各国が合意を見出せなかった唯一の重要事項

交渉は最終的に、ある重要問題で躓きましたが、この問題はチリで開催予定の次回の締約国会議(COP25)で再び取り上げられることになりました。関係者の間で「第6条」と呼ばれるこの問題とは、各国に国内の軽減目標を部分的に国外で達成することを認める、いわゆる「市場メカニズム」の問題です。

例えば「炭素市場」または「炭素取引」は、各国がそれぞれの炭素排出権を取引できるようにする仕組みです。パリ協定はこの問題に関し、あらゆる国による取り組みの誠実性を守り、大気中への排出量を1トンも漏らさずに把握できるようにするため、世界的ルールを定める必要性を認識しています。

エスピノーサ事務局長は「今回のCOPでは冒頭から、この分野についてさらに多くの作業を要すること、そして、パリ協定のこの部分を実施に移すための詳細が十分に詰められていないことが、すぐに明らかになりました」と説明し、大半の国には、市場メカニズムに関するガイドラインを含めることに同意する用意があったものの、「残念ながら最終的に、立場の違いは解消できなかった」ことを明らかにしました。

COP24のその他重要な成果

パリ協定ガイドラインに関する加盟国間の政治的交渉に加え、COP24の会場では、2万8,000人近い参加者が活発な意見交換を行ったり、革新的なアイディアを共有したり、文化的行事に参加したり、部門横断的かつ協調的な取り組みに向けたパートナーシップを構築したりする姿が目につきました。

特に気候変動対策に向けた資金拠出の公約に関し、多くの心強い発表が行われました。例えばドイツとノルウェーは、開発途上国の行動を可能にするために設置された「緑の気候基金(GCF)」に対する拠出額の倍増を誓約しました。世界銀行も2021年以降、気候変動対策への拠出額を2,000億ドルへと増額することを発表しました。気候変動適応基金は、計1億2,900万ドルの資金を受け取りました。

民間セクターも全体として、積極的な関与の姿勢を示しました。スポーツ界とファッション界という2大産業が「Sports for Climate Action Framework(気候変動対策のためのスポーツ枠組み)」と「Fashion Industry Charter for Climate Action(ファッション業界気候変動対策憲章)」の立ち上げを通じ、そのビジネス実践をパリ協定の目標と整合させる動きに加わったことは、今次COPの大きな収穫となりました。

その他にも多くの公約が行われ、具体的な手本となる行動が実施に移されています。

「私の今後の5つの優先課題は、5つの野心です。具体的には、緩和の野心、適応の野心、資金調達の野心、技術協力と能力構築の野心、そして技術革新の野心です」パトリシア・エスピノーサ事務局長は最終全体会合で、アントニオ・グテーレス事務総長に代わり、このように述べました。

これを実現するため、国連事務総長は来年の9月23日、ニューヨークの国連本部で気候サミットを開催し、各国政府首脳と話し合うことになっています。

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原文(English)はこちらをご覧ください。