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安全保障理事会決議1546(2004)
2004年6月8日、安全保障理事会第4987回会合で採択

プレスリリース 04/070-J 2004年07月22日

安全保障理事会は、

 イラクの民主的に選ばれた政府への移行における新段階の始まりを歓迎するとともに、占領を終結させること、および、2004年6月30日までに完全な主権と独立を備えたイラク暫定政府が責任と権限を全面的に掌握することを期待し、

 これまでのすべてのイラク関連決議を想起し、

 イラクの独立、主権、統一および領土不可侵性を再確認し、

 また、イラク国民が自らの政治的将来を自由に決定し、自らの天然資源を支配する権利も再確認し、

 イラク国民が安全と繁栄を達成するための取り組みにおいて、国際的な支援、特に地域諸国、イラクの隣接国および地域機関からの支援の重要性を認識するとともに、本決議の実施成功は地域の安定に貢献することに留意し、

 2004年6月7日付(S/2004/461)の事務総長書簡に述べるところに従い、イラク国民によるイラク暫定政府の樹立を支援するための事務総長特別顧問の取り組みを歓迎し、

 イラク統治評議会の解散に留意するとともに、2003年10月16日の決議1511(2003)で言及されたイラクの政治的移行に関する取極めの実施に進展が見られたことを歓迎し、

イラク暫定政府が、政治的な権利と人権が十分に尊重される、連邦制の、民主的で、多元主義的な統一イラクを目指し、努力する決意を固めていることを歓迎し、

 すべての当事者がイラクの考古学的、歴史的、文化的および宗教的な遺産を尊重し、これを保護する必要性を強調し、

 法の支配、国民の和解、女性の権利を含む人権、基本的自由、および、自由で公正な選挙を含む民主主義の重要性を確認し、

 2003年8月14日の国連イラク支援団(UNAMI)の設置を想起するとともに、イラク国民と政府が代表的政府のための制度構築を行う上で、国連が主導的な役割を果たし、支援すべきことを確認し、

 安定と治安の回復に向けた国際的な支援は、イラク国民の安寧、および、イラク国民のために努力している全ての関係当事者の能力にとって不可欠であることを想起するとともに、この関連で、2003年5月22日の決議1483(2003)および決議1511(2003)による加盟国の貢献を歓迎し、

 2004年4月16日、多国籍軍による取り組みと進捗状況に関して国連が安全保障理事会に対して行った報告を想起し、

 本決議の付属として添付の2004年6月5日付のイラク暫定政府首相から安保理議長宛の書簡において、多国籍軍の駐留を継続するようにとの要請が伝えられていることを認識し、

 また、主権を有するイラク政府が多国籍軍の駐留に同意すること、および、多国籍軍と同政府との密接な協力を図ることの重要性も認識し、

 予定される選挙をはじめとして、政治的移行の支援によってイラクにおける治安と安定の維持に貢献するための取り組みを継続し、本決議付属の2004年6月5日付の米国務長官から安保理議長宛の書簡に述べられているとおり、イラクにおける国連活動の安全を確保するという多国籍軍の意向を歓迎し、

 イラクにおける治安と安定の維持を促進する全勢力が、国際人道法による義務を含めた国際法を順守し、関連国際機関と協力するとの公約を行っていることに留意し、

 イラク経済の復興と発展にとっての国際支援の重要性を確認し、

 イラクの石油収益とイラク開発基金が享受する免除と特権がイラクにもたらす利益を認識するとともに、暫定占領当局の解散の際に、イラク暫定政府およびその後継機関がこの資金の利用を継続できるようにすることの重要性に留意し、

 イラク情勢は引き続き、国際の平和と安全に対する脅威であると判定し、

 国連憲章第7章に従い、

  1. 2004年6月1日に提示したところに従い、主権を有するイラク暫定政府を樹立し、2004年6月30日までに、イラク統治の責任と権限を全面的に委譲する一方で、以下のパラグラフ4によってイラク移行政府が選出されるまでの限定的な暫定期間を超えて、イラクの将来に影響を及ぼすような行為を差し控えさせることを承認する。
  2. また、2004年6月30日までに、占領が終結し、暫定占領当局は解散し、イラクがその主権を全面的に回復することを歓迎する。
  3. 自らの政治的将来を自由に決定し、自らの天然資源に対して全面的な権限と支配権を行使するイラクの人々の権利を再確認する。
  4. 以下を含め、イラクの民主政府への政治的移行に向けて提案された行程を承認する。
    1. 主権あるイラク暫定政府を樹立し、2004年6月30日までに統治の責任と権限を委譲すること。
    2. イラク社会の多様性を反映する国民会議を招集すること。
    3. 可能であれば2004年12月31日までに、かつ、いかなる場合でも2005年1月31日までに、暫定国民議会を選出する直接民主選挙を実施し、この議会にとりわけ、イラク移行政府の樹立、および、イラクの最終的憲法の草案を作成する責任を担わせるとともに、2005年12月31日までに憲法による民選政府を成立させること。
  5. イラク政府に対し、国際会議の招集が上記の行程をどのように支援しうるかを検討するよう促すとともに、イラク国民の利益となり、地域の安定に資するようなイラクの政治的移行と復興を支援する会合が開催されるとすれば、安全保障理事会はこれを歓迎することに留意する。
  6. すべてのイラク国民に対し、これらの取極めを平和裏に、かつ、全面的に実施するよう呼びかけるとともに、すべての国々と関連機関に対し、このような実施を支援するよう呼びかける。
  7. 事務総長特別顧問および国連イラク支援団(UNAMI)は、イラク国民と政府を支援するという任務を遂行する際、イラク政府の要請に応じ、状況が許す限り以下を行うものとすることを決定する。
    1. 次の目的のために、主導的な役割を果たす。
      1. 2004年7月中、諮問評議会を選出するための国民会議の招集を支援する。
      2. 選挙実施のプロセスに関し、イラク独立選挙管理委員会、ならびに、イラク暫定政府および暫定国民議会に助言と支援を行う。
      3. イラク国民による憲法草案作成に際し、国民の対話と合意形成を促進する。
    2. その他、次を行う。
      1. 実効的な公務と社会事業の開発について、イラク政府に助言を行う。
      2. 復興、開発および人道支援の調整と実施に貢献する。
      3. イラクにおける法の支配を強めるため、人権の保護、国民の和解および司法・法制改革を促進する。
      4. 国勢調査の実施に際しては、その当初計画の策定に関し、イラク政府に助言と支援を行う。
  8. 樹立予定のイラク暫定政府が、同暫定政府およびその後継機関の権限下で活動するイラク国軍を含むイラク治安部隊(以下「イラク治安部隊」とする)を育成し、その役割を段階的に強化して、最終的には、イラクにおける治安と安定を維持する全責任を担わせるために取り組みを継続していることを歓迎し、
  9. イラクにおける多国籍軍の駐留は、樹立予定のイラク暫定政権の要請によるものであることに留意するとともに、これに従って、本決議付属の書簡に関し、決議1511(2003)によって設置された統合司令下にある多国籍軍に対する承認を再確認する。
  10. 本決議付属の書簡では、とりわけ、イラクからの多国籍軍駐留の継続要請を表明するとともに、テロの防止と抑止をはじめとして、とりわけ国連が上記パラグラフ7に概略を示したところに従い、イラク国民支援の役割を全うし、イラク国民が自由に、かつ、脅迫を受けずに、政治過程に関する行程表とプログラムを自由に実施し、復興・再建活動から利益を得られるようにするための多国籍軍の任務を定めているが、多国籍軍はこれに従い、イラクにおける治安と安定の維持に貢献するために必要なあらゆる措置を講じるものとすることを決定する。
  11. この関連で、本決議付属の書簡では、とりわけ、イラク主権政府と多国籍軍との治安協力体制を確立し、両者間の調整を確保するための取極めが設けられていることを歓迎するとともに、この点につき、イラクの治安部隊はイラクの関係閣僚に対して責任を有すること、イラク政府には、イラク治安部隊が多国籍軍との共同作戦に加わることを認める権限があること、ならびに、書簡に述べられた治安維持機構は、慎重を要する攻撃作戦に関する政策を含め、根本的な安全保障および政策上の問題全般に関してイラク政府と多国籍軍が合意するための話合いの場として機能するとともに、密接な調整と協議を通じ、イラク治安部隊と多国籍軍との全面的なパートナーシップを確保するものであることにも留意する。
  12. さらに、多国籍軍の任務は、イラク政府の要請に応じて、あるいは、決議日付の12ヵ月後に見直されるものとすること、ならびに、この任務は上記パラグラフ4に定める政治過程の完了によって終了することを決定するとともに、イラク政府の要請があれば、それ以前にも任務を終了させることを宣言する。
  13. 付属の米国務長官からの書簡には、多国籍軍の統合司令下に、イラクでの国連職員の警護に専従する部隊を創設するという意向が表明されていることに留意し、イラクで活動する国連システムの要員を警護するとすれば、多大な資源が必要となるであろうことを認識するとともに、加盟国と関連機関に対し、同部隊への拠出を含め、このような資源を提供するよう呼びかける。
  14. 多国籍軍はまた、募集採用、研修、装備、指導および監視のプログラムを通じ、イラクの治安部隊と機関の能力育成も援助することを認識する。
  15. 加盟国および国際・地域機関に対し、イラク政府との合意に基づき、イラク国民の治安と安定および人道・復興支援の必要を満たすことに貢献し、UNAMIの取り組みを支援するため、兵員を含む援助を多国籍軍に提供するよう要請する。
  16. 実効的なイラク警察、国境警備隊、および施設警備サービスをイラク内務省の統制下で、また施設警備サービスについては他の省庁の統制下で育成し、テロ対策を含め、法、秩序および治安の維持を図ることの重要性を強調するとともに、加盟国と国際機関に対し、これらイラク機関の能力育成を図るため、イラク政府を支援するよう要請する。
  17. イラクにおけるすべてのテロ行為を非難し、2001年9月28日の決議1373(2001)、1999年10月15日の決議1267(1999)、2000年12月19日の決議1333(2000)、2002年1月16日の決議1390(2002)、2003年1月17日の決議1455(2003)および2004年1月30日の決議1526(2004)による加盟国の義務、ならびに、その他関連の国際義務、とりわけイラクにおける、およびイラクからの、あるいはイラクの一般市民に対するテロ行為に関する義務を再確認し、とりわけイラクへ、またはイラクからのテロリストの移動、テロリストの武器入手、およびテロリストへの資金提供を防止するよう加盟国に対して再び要請し、この関連で、イラクの隣接国をはじめとする地域諸国との協力を強化することの重要性を改めて強調する。
  18. イラク暫定政府は、イラクに対する国際援助の調整に主たる役割を担うことを認識する。
  19. イラク暫定政府からの要請に応じ、イラクが行政能力の再建を図る間、技術的・専門的援助を提供する加盟国と国際機関の努力を歓迎する。
  20. 加盟国、国際金融機関およびその他の機関は、協調的なドナー支援プログラムを通じた国際専門家と必要な資金の提供を含め、イラク国民によるイラク経済の復興と開発を支援するための取り組みを強化すべきとの要請を改めて強調する。
  21. これまでの決議によるイラクへの武器および関連物資の販売あるいは供給に関する禁止措置は、本決議の目的に資するため、イラク政府あるいは多国籍軍が必要とする武器にも関連物資にも適用されないものとすることを決定し、すべての国々がこれに厳密に従うことの重要性を強調するとともに、この関連でのイラク隣接国の重要性に留意し、イラク政府と多国籍軍のそれぞれに対し、適切な実施手続の運営を確保するよう呼びかける。
  22. これまでの各パラグラフのいずれの文言も、1991年4月3日の決議687(1991)パラグラフ8および12に規定する項目に関連する各国の禁止措置あるいは義務、または、1991年8月15日の決議707(1991)パラグラフ3(f)に述べられている活動に影響しないことに留意するとともに、国連監視検証査察委員会および国際原子力機関の任務を再考する安保理の意向を再確認する。
  23. 加盟国と国際機関に対し、イラクの退役軍人と元民兵をイラク社会へ復帰させる取り組みに対するイラクからの援助要請に対応するよう呼びかける。
  24. 暫定占領当局の解散により、イラク開発基金に積み立てられた資金は、イラク政府の裁量のみによって支出されることに留意するとともに、イラク開発基金は透明かつ公平な形で、イラクの予算を通じ、イラク開発基金の未払い債務の償還などに用いられるものとすること、決議1483(2003)パラグラフ20によって設けられた石油、石油製品および天然ガスの輸出収入の預託に関する取極めは、引き続き適用されるものとすること、国際諮問・監視理事会(IAMB)は、イラク開発基金の監視活動を続けるとともに、完全な票決権を有するメンバーとして、イラク政府が指名した適格者を加えるものとすること、ならびに、決議1483(2003)パラグラフ21に言及する収益の預託継続のために、適切な取極めを行うものとすることを決定する。
  25. さらに、収益のイラク開発基金への預託、および、IAMBの役割に関する前パラグラフの規定は、イラク暫定政府の要請により、あるいは、本決議の日付から12ヵ月後に見直すものとし、上記パラグラフ4に定める政治プロセスの完了をもって効力を失うものとすることを決定する。
  26. 暫定占領当局の解散との関連で、イラク暫定政府とその後継機関は、石油食糧交換プログラム運営の全責任、および、かかる責任との関連で当局が引き受けた何らかの義務、ならびに、物資が送達された旨の独立の認証を確保する責任を含め、当局に移転された石油食糧交換プログラムに関連する権利、責任および義務を担うものとすることを決定するとともに、本決議の日付から120日間の移行期間に続き、イラク暫定政府とその後継機関は、以前に優先度を付与された契約による物資の送達を証明する責任を担うものとすること、ならびに、かかる証明は適宜、これら取極めの円滑な実施を確保するための協議を行いながら、かかる契約に関連する資金を支出するのに必要な独立の認証と見なすものとすることも決定する。
  27. さらに、決議1483(2003)のパラグラフ22の規定は、引き続き適用されるものとするが、同パラグラフに規定する特権および免除は、2004年6月30日以降にイラクが行った契約の義務に起因する何らかの最終的判断が下される場合には適用しないものとすることを決定する。
  28. パリクラブを含め、多くの債権者がイラクの公的債務を削減する方途を探るとの公約を行っていることを歓迎し、加盟国および国際・地域機関に対し、イラク復興への取り組みを支援するよう呼びかけ、国際金融機関と二国間ドナーに対しては、イラクにできる限りの貸付、および、その他の資金援助や取極めを提供するために必要な措置を直ちに講じるよう求め、イラク暫定政府はかかる取極め、および、その関連で必要に応じたその他の取極めを締結、実施する権限を有することを認識するとともに、債権者、機関およびドナーに対し、これらの事項を優先課題として、イラク暫定政府およびその後継機関との協力を行うよう要請する。
  29. 加盟国は引き続き、決議1483(2003)のパラグラフ19および23、ならびに、2003年11月24日の決議1518(2003)に従って、一定の資金、資産および経済資源を凍結し、これをイラク開発基金に移転する義務を負うことを想起する。
  30. 事務総長に対し、本決議の日付から3ヵ月以内に、イラクにおけるUNAMIの活動に関する報告を安保理に行うとともに、その後は四半期に一度、国政選挙とUNAMIの全責任の履行に向けた進捗状況に関する報告を行うよう要請する。
  31. 米国は、多国籍軍を代表して、本決議の日付から3ヵ月以内に、また、その後は四半期に一度、多国籍軍の取り組みと進捗状況に関する報告を安保理に行うよう要請する。
  32. この件について引き続き活発に審議することを決定する。

付属

イラク暫定政府のアヤド・アラウィ首相および米国のコリン・L・パウエル国務長官の安保理議長宛書簡の本文

2004年6月5日

イラク共和国
首相府

閣下

イラク暫定政府首相への任命に際し、私は、自由で民主的なイラクを確立するための政治的移行過程を完了し、テロの防止と対策におけるパートナーになるというイラク国民の決意をお伝えしたく、ここに筆を執った次第です。新たな重要な段階を迎え、全面的な主権を回復し、選挙へと向けて前進する中で、私たちには国際社会の支援が必要です。

イラク暫定政府は、この選挙を完全に民主的、自由かつ公正なものとすべく、努力を惜しまない所存です。治安と安定は引き続き、わが国の政治的移行に不可欠な要素です。ところが、イラクには外国の分子を含め、イラクの平和、民主主義、そして安全への移行に敵対する勢力が相変わらず存在します。イラク政府はこうした勢力に打ち勝ち、イラク国民に十分な治安を提供できる治安部隊を育成する決意です。陸海空を含め、私たちが自分たちでイラクの治安を守れるようになるまで、安全保障理事会と国際社会にこの取り組みを支援していただきたく存じます。私たちは、コリン・パウエル国務長官からの国連安全保障理事会議長宛書簡にある活動と取極めを通じたものを含め、イラクの治安維持に貢献するという多国籍軍(MNF)の任務に関し、新たな決議を求めます。また、イラク暫定政府の要請に応じ、あるいは、かかる決議の採択から12ヵ月後に、安全保障理事会がMNFの任務を見直すことも要請します。

イラク政府の安全保障の責任負担を減らすため、私は、暫定政府とイラク治安部隊が徐々にこの責任を担えるような適切な安全保障機構を確立する所存です。このような機構としては、私を議長とし、副首相、国防大臣、内務大臣、外務大臣、法務大臣および財務大臣から構成される国家安全保障閣僚委員会があげられます。国家安全保障担当補佐官とイラク国家情報局長は、委員会の常任諮問委員となる予定です。この委員会は、イラクの安全保障政策に関する幅広い枠組みを定めることになります。私は適宜、MNF司令官、その副官あるいはMNF司令官が指名する代表、およびその他の適切な人物に対しても、出席と参加を促し、MNFとの調整と協力の仕組みについても話し合う用意があります。イラク国軍は、参謀総長と国防大臣に対して責任を負うことになります。イラクの治安部隊(イラク警察、国境警備隊および施設保護サービス)は、内務大臣あるいはその他の政府閣僚に対して責任を負います。

また、関係閣僚と私は、MNFとの調整を行うための仕組みをさらに整える予定です。MNFとの間で、全国、地域および地方レベルで、イラク治安部隊の司令官と文民指導者を含む調整機関を設置し、イラク治安部隊がMNFと共同で行う軍事作戦の指揮を一元化するため、イラク治安部隊がすべての政策・作戦上の問題についてMNFとの調整を図れるようにする用意もあります。加えて、MNFとイラク政府の指導者は、その活動を常に報告し合い、要員、資源および施設の効果的な配置と利用を確保するための定期的な協議を行うほか、情報を共有し、必要に応じてそれぞれの指令系統の上部に問題を付託することになります。イラクの能力が向上するにつれ、イラク治安部隊は徐々に大きな責任を担うようになるでしょう。

私がこの書簡で述べた機構は、MNFとイラク政府が、慎重を要する攻撃作戦に関する政策を含め、根本的な安全保障と政策に関する問題全般について合意に至るための話合いの場として機能し、密接な協調と協議を通じて、イラク部隊とMNFとの全面的なパートナーシップを確保することになるでしょう。これらはイラクと米国をはじめ、多くの主権政府にとって慎重を要する問題であるため、私たちの戦略的パートナーシップに関する相互理解の枠組みにおいて解決する必要があります。私たちは今後、MNFの指導層と密接に協力し、このような合意による戦略枠組みを確保してゆく所存です。

私たちには、6月30日までに、主権政府としてイラク統治の責任を担う用意があります。私たちが直面する困難、そしてイラク国民に対する責任については、十分に認識しています。事は重大であり、成功には国際社会の支援が必要です。私たちは安全保障理事会に対し、必要な支援を私たちに与える安全保障理事会決議を今すぐ採択していただくよう要請いたします。

共同提案国は、検討中のイラク関連決議にこの書簡を添付する意向であると理解しています。その間にも、この書簡の写しを可及的速やかに、安保理メンバーに配布していただきたく存じます。

(署名)アヤド・アラウィ博士

ラウロ・L・バハJr.閣下
安全保障理事会議長
国際連合
ニューヨーク州ニューヨーク市

国務長官
ワシントン

2004年6月5日

閣下

イラク政府からの多国籍軍(MNF)のイラク駐留継続要請に鑑み、また、イラク暫定政府のアヤド・アラウィ首相との協議を受け、私は、統合司令の下にあるMNFに、テロの防止と抑止、および、イラクの領土保全によるものを含め、イラクにおける治安の維持に貢献し続ける用意があることを確認したく、筆を執った次第です。MNF目標は、イラク国民が政治的移行を完了させる手助けをすることにあり、国連と国際社会はこれにより、イラクの復興促進を図れるようになるでしょう。

イラク国民が目標を達成できる能力は、国内の治安状況によって大きく左右されます。最近の事件が物語るように、前政権の分子、外国人戦闘員および不法民兵を含む反対勢力による攻撃の継続は、イラクの状況改善を目指す人々すべてに挑戦を投げかけています。

MNFとイラク主権政府との間において効果的で協力的な安全保障パートナーシップを育成することは、イラクの安定にとってきわめて重要です。MNF司令官はイラク主権政府とのパートナーシップにより、その主権を認識、尊重しながら治安の確保に貢献するでしょう。この目的で、MNFには、2004年6月5日付のイラク暫定政府アラウィ首相からの書簡でも言及されているとおり、安全保障政策の幅広い枠組みに関する国家安全保障閣僚委員会の討議に参加する用意があります。この政策の実施に際しては、イラクの治安部隊が適切なイラクの閣僚に対して責任を負うことを認識しつつ、MNFは、イラクの部隊がMNFと共同で展開する軍事作戦の指揮一元化を図るために、全国、地域、地方を含め、あらゆるレベルでイラクの治安部隊との調整を行ってゆきます。加えて、MNFとイラク政府の指導者は、その活動を常に報告し合い、要員、資源および施設の効果的な配置と利用を確保するための定期的な協議を行うほか、情報を共有し、必要に応じてそれぞれの指令系統の上部に問題を付託することになります。私たちは、アラウィ首相が6月5日付の書簡で述べた話合いの場において、慎重を要する攻撃作戦に関する政策を含め、根本的な安全保障と政策に関する問題全般について合意に達するよう努めるとともに、密接な協調と協議を通じて、MNFとイラク部隊との全面的なパートナーシップを確保することになるでしょう。

合意された取極めに従い、MNFには、治安の維持に貢献し、部隊の安全を確保するため、幅広い活動を実施し続ける用意があります。その中には、暴力によってイラクの政治的将来に影響力を及ぼそうとする勢力が執拗に引き起こす治安上の脅威に立ち向かうために必要な活動が含まれます。具体的には、これら集団のメンバーに対する戦闘作戦、治安上の理由からどうしても必要な場合の抑留、および、イラクの治安を脅かす兵器の捜索と回収の継続があげられます。さらにその先には、イラクの治安維持の責任を徐々に担えるよう、イラクの治安部隊に訓練と装備を施すという目的があります。また、MNFには必要に応じ、これまでの安全保障理事会決議に沿って、イラク暫定政府が要請する人道援助、民事支援および緊急・復興援助の提供に参加する用意もあります。

さらに、MNFには、国連の要員と施設を警護するための部隊をMNF内に設けたり、これを支援したりする用意もあります。私たちは国連の警護の必要性に関し、国連の担当者と密接な協議を行っていますが、国連の安全確保への取り組みを支援するためには、旅団規模の部隊が必要と思われます。この部隊はMNF司令官の指揮・統制下に置かれますが、その任務には、国連施設自体およびその周辺の警備、ならびに、国連ミッションが移動する際の車両護衛が含まれることになるでしょう。

治安維持への貢献を続けるために、MNFは引き続き、任務の遂行に必要な地位を部隊と要員に付与し、兵員派遣国が自国の要員に対する司法管轄権を行使する責任を有し、かつ、MNFに関する取極めおよびMNFによる資産の利用に関する取極めを確保できる枠組みの中で、活動を続けなければなりません。これらの点について、現行の枠組みは十分なものといえます。また、MNFを構成する部隊は今後とも、ジュネーブ条約を含め、武力紛争法による義務を常に順守することを約束します。

MNFには、より幅広い国際社会が、イラクの復興促進において重要な役割を果たせるような、安全な環境の整備に貢献するための現在の取り組みを続けてゆく用意があります。今後、これらの責任を果たしてゆく上で、私たちはイラクの主権を十分に認識、尊重して活動します。私たちは、その他の加盟国および国際・地域機関が、前途の困難を乗り越え、民主的、安全かつ豊かな国を作り上げようとするイラク国民とイラク主権政府の取り組みを支援するものと期待しています。

共同提案国は、検討中のイラク関連決議にこの書簡を添付する意向であると理解しています。その間にも、この書簡の写しを可及的速やかに、安保理メンバーに配布していただきたく存じます。

敬具
(署名)コリン・L・パウエル

ラウロ・L・バハJr.閣下
安全保障理事会議長
国際連合
ニューヨーク州ニューヨーク市