記者会見におけるアントニオ・グテーレス国連事務総長の冒頭発言 (東京、2026年5月20日)
プレスリリース 26-029-J 2026年05月21日

報道関係者の皆様、
最初に、日本のジャーナリストの方々に敬意を表したいと思います。
皆さんは報道の自由を支える柱であるとともに、日本の民主主義を支える柱でもあるからです。
私がここ日本で、事務総長として記者会見を行うのは、これで最後になります。
私が今日の世界で、日本のジャーナリストの活動をどれだけ高く評価しているのかをお伝えしたいと思います。
メディア関係者の皆様、
本日はお越しいただき、ありがとうございます。
私は感謝と決意を表明することを使命として、ここ日本を訪れています。
第一に、この美しい国へ再び、私を温かく迎えてくださった日本の政府と国民の皆様に感謝申し上げます。
一昨日、私は高市早苗総理大臣にお会いしました。
その際も申し上げたように、国連は日本とのパートナーシップを大きな誇りとしています。
日本は70年前の国連加盟以来、マルチラテラリズム(多国間主義)、そして協調と結束が持つ力の確固たる、かつ寛大な提唱者であり続けています。
国連システムは、日本におよそ30カ所の拠点を設けています。中でも、東京に本部を置く国連大学(UNU)は、重要な国際問題について幅広く研究する世界中の専門家が集う場となっています。
今週、国連システム諸機関のリーダーが日本に集い、事務局長調整委員会の年次会合を開催しました。この会合がアジアで開かれるのは、今回が初めてとなります。
私たちは、国連が世界で最も大きな問題を抱える地域のいくつかで活動すること、そして、全世界の人々に命を救う支援を提供することを、日本の皆様が極めて寛大に支援される様子を目の当たりにしてきました。
具体的には、空腹を抱える人々に食料を提供すること、
紛争地帯で暮らす家族にシェルターと保護を提供すること、
女性と女児を暴力から守ること、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の時期を含め、医療支援を届けること、
世界で最も危険かつ不安定な地域のいくつかで、不可欠な平和維持ミッションを支援すること、
そして、人間の安全保障というビジョンを推進することが挙げられます。
日本はまた、マルチラテラリズムを常に先頭に立って提唱するとともに、国連で、安全保障理事会で、そして世界各地で、平和を求める声を発信してきました。
その声は、紛争予防から法の支配の擁護、さらには日本の人々にとって特に大きな重要性を持つ核軍縮の問題に至るまで、多岐にわたります。
私は事務総長として初めて、長崎と広島双方の平和式典に出席し、被爆者の方々に敬意を表することができたことを、誇りに思います。被爆者の方々の勇気と平和のメッセージは、私を鼓舞し続けています。
また、30年にわたって日本とアフリカの特別なパートナーシップを象徴してきたアフリカ開発会議(TICAD)のプロセスでも、多くの会合に参加できたことを誇りに思います。
TICADは、地域間の連携によって開発に拍車をかけられることを示す典型例であるとともに、どの国も単独で歩むことはできないことを改めて思い起こさせる事例でもあります。
もう一つの明確な事例として、日本は「三角パートナーシップ・プログラム(TPP)」を通じ、アフリカ連合(AU)の平和維持要員の訓練も行っていますが、このプログラムは昨年、発足10周年を迎えました。
国連は2011年、東北地方を中心に大きな被害を及ぼした東日本大震災への日本の対応と復興の取り組みを支援しましたが、日本はこの経験を糧に、防災面で世界的なリーダーシップを発揮しています。
私は引き続き、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)による日本人の拉致という、許しがたい人権侵害問題の解決を求める日本の立場を支持します。また、拉致被害者の家族の方々に対する全面的な連帯の気持ちも表明したいと思います。
そして、私たち国連は、昨年の大阪・関西万博(EXPO 2025)にも参加させていただきました。
私は光栄にも、国連スペシャルデーの際に、その会場を訪れることができました。
そこで私が目の当たりにしたのは、EXPOが国や文化、世代を超えて、人々をつないでいる様子でした。人類が一つになれば最も強くなるという純然たる事実に基づいて。
このことが今回の私の二つ目の使命につながっています。
それは決意です。
私は未来に向けて、国連と日本の強いパートナーシップを確保する決意を固めています。
パートナーシップの真価は、危機を迎えた時にこそ現れます。
そして今日の世界は、紛争や気候変動、そして不平等で揺らいでいます。
インフレが激化し、生活困窮の危機が深まっています。それは中東での紛争によって悪化し、エネルギーと肥料を含む原材料の価格がさらに急騰しています。
ホルムズ海峡およびその周辺における航行の自由を直ちに回復し、停戦違反をすべて終わらせ、紛争の政治的解決に向けて条件を整えることが不可欠です。
不信と地政学的な分断で、効果的な解決が妨げられています。
国際法を踏みにじりながら、全く処罰されない国もあります。
軍事支出は支援を上回るスピードで増大する一方で、財源の削減によって、世界で最も脆弱な立場に置かれた人々に破滅的な結果が及んでいます。
人間と地球にとってよりよい未来を実現するための青写真としての持続可能な開発目標(SDGs)は、今よりもはるかに大幅な進歩を遂げなければなりません。
多国間開発銀行による開発途上国への支援が不十分なことによって、債務返済の重圧に押しつぶされ、資金不足に直面する国もあります。
私たちはこれら多国間開発銀行が開発途上国の支援に必要な資源を確保できるよう、資金を注入しなければなりません。
また、人工知能(AI)など、世界を一変させるような技術は、私たちがそれを安全に管理できる能力よりも速く進歩しています。
そして、国連安全保障理事会や国際金融機関をはじめ、グローバルな問題を解決すべき機構は、こうした変化の中で必要な効果を上げられていません。
加盟国は2024年、多国間システムの改革と刷新を図る大胆なビジョンとして、「未来のための協定」を採択しました。
そして昨年、私たちはこの激動の時代に、国連が人々と地球に奉仕できる態勢を整えられるよう、「UN80イニシアチブ」を立ち上げました。
私は日本の強力な支援によって、現在の難局をうまく切り抜け、私たちが団結すれば達成できる成果に対する世界的な信頼を回復できると確信しています。
それは具体的に、昨年合意された「開発資金に関するセビリア・コミットメント」を履行し、開発資金を潤沢に供給しながら、効果的な債務救済のためのツールを提供することによって。
しかし、必要とされる最も重要な改革は、国連安全保障理事会の改革に他なりません。その構成は正当性も有効性も担保できていないからです。事実、常任理事国のうち3カ国が欧州(の国)であるのに対し、全世界の人口の半数以上を占めるアジア(の国)はわずか1カ国、残りの1カ国は北米の国で、アフリカとラテンアメリカ(諸国)は全く含まれていません。
これは正当性と有効性という点で深刻な問題であり、常任理事国の数を増やすとともに、非常任理事国も増やすことで、安全保障理事会に今日の世界の現実を反映させることが絶対に欠かせません。
また、開発途上国を今よりはるかに多く代表させ、今日の課題に対処できるよう国際金融アーキテクチャを改革する必要もあります。
私たちに必要なのは、多国間システムをより公正なものとすることで、引き続き国際法を擁護し、各国にその遵守責任を問えるようにすること、
スピードをもって、また、適応支援を通じて開発途上国にとっての正義を確保しつつ、再生可能エネルギーへの移行を一気に進めることで、気候変動に大胆な対策をとれるようにすること、
AIがヒューマニティ(人間性)を妨げるのではなく、これを支援できるようにするため、政府とテクノロジー企業を結束させられるようにすること、
そして、全世界で人命を救い、平和でレジリエント(強靭)なコミュニティーを構築するために必要な資金のスケールアップに努められるようにすることです。
私たちがこうした逆風に立ち向かう中で、日本はあらゆる課題について、団結と決意を呼びかける力強く、影響力のある声となりえます。
メディア関係者の皆様、
国連は依然として、平和や持続可能な開発、人権を推進させるうえで不可欠で比類のない集いの場となっています。
創設から80年を経た今、私たちは国連の創設と第3次世界大戦を防ぐことを直線でつなげて考えることができます。
しかし、私たちの組織の強さは、加盟国のコミットメントの強さにかかっています。
70年にわたり、日本が目指す目標と国連が目指す目標は強く整合してきました。
国連は数十年もの間、日本の寛大さと多国間システムへの貢献から多大な恩恵を受けてきました。
そして日本は、国連での役割を効果的に活用し、その外交上の影響力を高めるとともに、安定的、協調的なグローバル・システムを通じて経済的な繁栄と平和を築いてきました。
私は改めて、日本の政府と国民の皆様の温かい歓迎と、過去70年間の特別なパートナーシップに感謝いたします。
* *** *


