ハイレベル・シンポジウム「日本の国連加盟70周年記念 - 国連と日本の協力のあゆみ、EXPO 2025、そして多国間主義の未来」でのアントニオ・グテーレス事務総長 基調講演 (東京、2026年5月18日)
プレスリリース 26-028-J 2026年05月19日

大臣閣下、
来賓の方々、皆様、
ここ国連大学を訪れることができ、嬉しく思います。
日本の政府と国民の皆様による温かい歓迎に感謝いたします。
私は国連システム事務局長調整委員会(CEB)の年次会合で議長を務めるため、東京を訪れています。
この会合がアジアで開催されるのは、今回が初めてとなります。
また、日本はそれにふさわしい国でもあります。
私は事務総長就任後はもとより、それ以前の難民高等弁務官時代にも、日本の皆様による国連の目指す目標と価値に対する強いコミットメントを目の当たりにしてきました。
そして今回の訪日は、非常に感慨深い機会でもあります。
(私の)20年にわたる日本との極めて満足の行く協力関係の中でも、今回がこの国で発言する最後の機会の一つとなるかもしれないからです。あえて最後の機会と言わなかったのは、これから12月までに、多くのことが起こりえるからです。
私は国連難民高等弁務官として、そして事務総長として、20回以上も日本を訪れました。
そしてそのたびに、私は世界中の非常に多くの人々に恩恵をもたらす戦略的な協力・支援関係を確認するとともに、真の友情の温かさに触れてきました。アリガトウ。
私は事務総長として初めて、長崎と広島双方の平和式典に出席できたたことを誇りにしています。
被爆者の方々の勇気と決意は、決して忘れることができません。
彼らの平和へのメッセージは、私だけではなく、世界中の多くの人々を鼓舞し続けています。
核兵器のない世界は、日本と国連双方のDNAに深く刻み込まれた目標です。
2011年、日本が地震と津波による壊滅的な被害に見舞われた際、国連は日本の対応と復興努力に対する支援に全力を尽くしました。
日本はその経験を、防災に関する世界的なリーダーシップへと変えました。
国連は長年にわたり、数多くの課題について、日本の寛大さと多国間システムへの貢献から大きな恩恵を受けてきました。
そして日本は、国連における役割を効果的に活用し、外交的な影響力を高めるとともに、安定的かつ協調的なグローバル・システムを通じて経済的な繁栄と平和を築き上げてきました。
こうした数多くの理由から、日本と国連の70年にわたるパートナーシップを皆様と共に祝えることを誇りに思います。
私たちは皆さんが長年にわたり、マルチラテラリズム(多国間主義)の強力な提唱者となってきたことを高く評価しています。
平和維持から平和構築、さらには人間の安全保障に至るまで、
人道支援から持続可能な開発に至るまで、
軍縮から気候変動対策に至るまで、
そして、教育からユニバーサル・ヘルス・カバレッジに至るまで。
日本の国連加盟70周年は、感謝をもって過去を振り返るとともに、新たな決意を持って未来を見据えるべき時でもあります。
マルチラテラリズムがこれほど必要とされた時期はありません。
友人の皆様、
世界は混乱を来たしています。
私たちは、地政学的な分断が深まっている様子、
紛争が猛威を振るっている様子、
不平等が広がる様子、
気候のカオス(大混乱)が加速する様子、
そして、新たなテクノロジーが私たちの統制能力を上回る速さで進化する様子を、目の当たりにしています。
それでも、私には希望があります。
国連はまさに、今のような時のために創設されたからです。
80年以上にわたり、国連は人権と国際法を前進させ、
命を救う人道支援を届け、
貧困の削減を支援し、各国を共通の目標のもとに結束させ、
そして、第3次世界大戦を防いできたのです。
もちろん、私たちの制度機構は常に変化に適応し続けなければなりません。
「未来のための協定」は、より効果的かつ包摂的でネットワーク型のマルチラテラリズムに向けた、加盟国のコミットメントです。
「UN80イニシアチブ」は、実行力のある国連を確保するための取り組みです。
日本はこのことを深く理解しています。
日本が長年にわたって提唱してきた「人間の安全保障」という理念は、私たちの活動を評価する尺度が人々の生活にあることを想起させます。
それはすなわち、人々の安全と健康であり、
人々が尊厳をもって暮らせる能力であり、
人々の食料や水、衛生へのアクセスであり、
人々が自分自身のために、そして、家族やコミュニティーのために、よりよい未来を築けるよう、さらなる高みを目指せる機会でもあります。
人間の進歩を支えるために、ともに取り組むというこの精神は、2025年大阪・関西万博(EXPO 2025)ではっきりと示されました。
私は光栄にも、国連スペシャルデーの際に、EXPO 2025の会場を訪れる機会に恵まれました。
国連パビリオンは「United for a Better Future:人類は団結したとき最も強くなる。」というテーマを掲げました。
それは、平和や人権、持続可能な開発、気候変動対策に関する国連システムの日々の活動を来館者にお見せする場となりました。
それはまた、国連が一つのファミリーとして、日本やその他のパートナーと力を合わせて活動していることを示す素晴らしい事例でもありました。
そこから得られた教訓は、万博にとどまりません。
第1に、人々はマルチラテラリズムが実際に機能する姿を目にする必要があるということ。
国連の活動を「見える化」し、人々がそれを自身の生活やコミュニティーと結び付けて考えられるようになれば、信頼は増します。
第2に、コミュニケーションが大切だということ。
偽情報や皮肉な物の見方が広がっているこの時代に、私たちは明確に、率直に、そして謙虚にマルチラテラリズムを伝えなければなりません。
第3に、パートナーシップが不可欠だということ。
EXPO 2025は政府、国連システム、地方自治体、学界、民間セクター、市民社会、そして若者が連携した時に発揮できる力を証明しました。
そして第4に、未来は共創せねばならないということ。
EXPO 2025はその意味でも、私たちが望む世界の姿を想像するよう問いかけました。
これは、今日の私たちの活動の中心にある問いでもあります。
マルチラテラリズムの未来を確かなものにするのは勇気、改革、そして実行です。
そのためには、80年前ではなく、現在の世界を反映する制度機構が必要となります。
野心に見合う資金が必要です。
また、予防、外交、そして人権に根差した平和への取り組みも必要です。
気候正義と、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた取り組みの加速も必要になります。
ヒューマニティ(人間性)を最優先するデジタル・ガバナンスと技術ガバナンスも必要です。
若者を傍観者ではなく、未来を創る主役として考える必要もあります。
そして、国連安全保障理事会やグローバル金融アーキテクチャを含め、世界的な制度機構を改革する必要もあります。
これは、現在の複雑で多極化した世界に対処するうえでの実効性と正当性を向上させるための基盤でもあります。
来賓の方々、
友人の皆様、
日本との継続的なパートナーシップは今後も欠かせません。
橋渡し役として、国連憲章の擁護者として、そして人間の安全保障の提唱者として、日本は次世代のマルチラテラリズムに大きく貢献できる立場にあります。
70年にわたり、私たちはすべての人にとってよりよく、より健全、公正かつ平和な世界の確保に向けて協力してきました。
本日、日本と国連の協力関係の70周年を祝うにあたり、共有の決意を新たにしようではありませんか。
行動や連帯、そして人々が目にし、感じ、信じることができる成果を通じて、信頼を勝ち取れるマルチラテラリズムを強化しようではありませんか。
そして、「United for a Better Future:人類は団結したとき最も強くなる。」というEXPO 2025の精神を推し進めてゆこうではありませんか。
アリガトウ。
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