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「行動の10年」に関する加盟国への非公式ブリーフィングにおける アミーナ・J・モハメッド副事務総長の開会の辞 (ニューヨーク、2019年12月19日)

プレスリリース 19-115-J 2019年12月27日

©UN Photo/Laura Jarriel

本日の非公式ブリーフィングにご出席いただき、ありがとうございます。

また、マリ・スコーレ総会議長官房長にご同席いただけることにも感謝申し上げます。

2019年は多忙かつ実り多い年になりました。皆様のご支援とリーダーシップに感謝いたします。

しかし、私は皆様が休暇に入られる前に、私たち全員が2020年に取り組むべき重要な課題についてお話ししたいと思います。それは、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた「行動の10年」を始動させることです。

9月のハイレベルウィークに行われたサミットとハイレベル会合では、心強い動きがありました。

事務総長の「気候行動サミット」では、リーダーシップと野心、そして解決策が示されました。また、小島嶼開発途上国とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関する会合では、最も脆弱な立場にある人々に対する配慮が約束され、SDGサミットと資金調達に関する対話では、実施をさらに進めるための決意が見られました。

しかし、ハイレベルウィークは特に若者と市民社会から警告を受ける場にもなりました。2015年の歴史的合意から4年。認識の高まりと局所的な前進は見られるものの、私たちの集団的な取り組みは、2030年までにSDGsを達成するために必要な規模には近づいていません。

私たちには急な上り坂が待ち構えています。

このような理由から、事務総長はSDGs達成に向けた「行動の10年」を求めるグローバルな呼びかけを行いました。また、皆様がSDGサミットの政治宣言で、国連創設75周年記念サミットを控え、すべての関係主体をSDGs実現に向けた行動に動員するとともに、毎年のハイレベルウィーク中に「SDGモーメント」を招集するよう事務総長に求めたのも、同じ理由からでした。

事務総長と私は、国連システム全体、そして市民社会や企業、芸術界、学界その他のステークホルダーとも協議を重ねてきました。きょうは、私たちの当初の考え方をいくつか披露したうえで、皆様の見解をお聞きできることを楽しみにしています。

2030アジェンダは、私たち全員が望み、必要とする世界の実現に向けた普遍的なロードマップです。過去4年間、目覚ましい取り組みはいくつかあったものの、アジェンダが要求しているような深く根本的な変革は見られていません。

人々は全世界で、不平等、気候危機、腐敗、女性に対する暴力をはじめ、SDGsが中心的に取り組むべき問題に対する苛立ちを露わにしています。

「行動の10年」は、こうした懸念に対応し、軌道を修正し、SDGロードマップに命を吹き込むための機会です。

そして何よりも、人間と地球を守る施策の実施に努めることで、新しい波を作り出す機会にもなります。

私たちが前進を遂げる中で、各国政府は市民社会や民間セクターをはじめとするステークホルダーと手を携えながら、この取り組みを先導していかなければなりません。

また、事務総長は「行動の10年」の中でも、特に気候変動対策とジェンダー平等を優先課題としています。

私たちはこれまでのアウトリーチ活動に基づき、作業を進めていくうえで重要となる3つの道筋を明らかにしました。

第1に動員です。

SDGsは経済や社会、人間の行動の変革を要求しています。世界中の人々が目標を意識し、目標の中に自分たちの関心事を見出し、どうすれば目標を達成できるのかを知らない限り、それは実現しません。

同じ時点で比較すると、持続可能な開発目標(SDGs)はミレニアム開発目標(MDGs)よりも広く認識されています。しかし、若者の大多数がSDGsと自分たちの関心事項との間につながりを感じられていない国もあります。

私たちはSDGsに対する認識、ローカライゼーション、そして特に若者の間での行動化をさらに一段階、高めなければなりません。

そのためには、今日の国際政治と国内政治に広く見られる分裂を緩和するための意識的な取り組みが必要です。

また、私たちの語り口や戦略、そして、SDGsをさらに広い世界に広めることのできる媒体やメッセンジャーについて、考え直す必要もあります。

オンラインや学校、コミュニティー、そして食卓に話題を提供するメディアやコミュニティー・リーダー、インフルエンサーの力を借りることも必要です。

さらに、議会や企業、地方自治体との国内レベルでの既存の連携を強化しつつ、新しい関係も構築して、私たちの関与を広げていかねばなりません。

そして、持続可能な事業の立ち上げから、食品、ファッションまたは金融に関する消費者行動への影響力に至るまで、人々が自発的に行動できるようエンパワーメントを図る必要もあります。

しかし、動員は何よりも、ネットワークやムーブメントをつなげ、私たち全員を持続可能で包摂的な開発へと導く、止むことのない勢いを生み出すことを意味します。

国連には、戦略的な情報発信を通じ、また、国連システム全般と国別チームの幅広い活動範囲を活用することにより、こうした動員をもっと支援していく能力と意志があります。

「行動の10年」の第2の道筋は、野心を高めることです。

2030年までに目標達成の目途が立っていると主張できる政府は一つもありません。よって、あらゆる政府がさらなる高みを目指さねばなりません。すべての政府が野心を高めなければならないのです。

COP 25の残念な結果は、私たちにどれだけの行動が必要かを物語っています。

事務総長も述べているとおり、国際社会は気候危機に対処するための緩和、適応および金融に関する野心の高まりを示す機会を逃してしまいました。

来年11月のCOP 26では、自国が決定する貢献を更新、強化するとともに、こうした約束を実行に移すため、すべての国がさらに行動を掘り下げなければなりません。

その他、来年にはジェンダー平等、生物多様性、海洋、持続可能な輸送に取り組むいくつかの重要な会議が行われます。これらの会議はいずれも、SDGs達成に向けた決意を新たにし、さらに野心を高めるための機会となるでしょう。

「行動の10年」は、各国政府がそれぞれの国内開発計画や資金調達枠組みをさらに幅広く見直し、こうした計画や枠組みを2030年までに実現が必要な変革の規模に見合ったものにするためのきっかけとなり得ます。

再編を経た国連開発システムは、権限を強化された常駐調整官と新世代の国連国別チームを備え、政府のこうした取り組みをはるかによく支援できるようになっています。

間近に迫ったハイレベル政治フォーラム(HLPF)と経済社会理事会(ECOSOC)の見直しも極めて重要であり、野心のほか、政府が今後2030年までに達成を目指す重大な通過点を示す新しいタイプの自発的国別審査に道を開く可能性があります。

同時に、企業や都市、金融関係者をはじめとするすべてのステークホルダーが、SDGs達成に向けた既存の約束を2030アジェンダ実施のための測定可能な行動へと移さねばなりません。

グローバル・コンパクトやローカル2030、全世界に広がる私たちのネットワークをはじめ、民間セクター、地方自治体などと連携を図る国連のメカニズムには、これについての調整や助言、会合招集、支援を行う用意があります。

市民や有権者、消費者に対する説明責任は、野心を高めるうえで欠かせません。

この点については、パブリック・エンゲージメントや透明性、データにまつわる取り組みをさらに充実させることで、各国のデータ・システムを強化し、私たちの動きのスピードと方向性を検証する必要があります。

「行動の10年」を前進させる第3の道は、解決策です。

2015年以来、SDGsを支援する取り組みが多く生まれています。しかし、それを最も必要とする国やコミュニティーで大規模な成果を実現できているものは、ほとんどありません。

私たちは、重要な課題にまつわる一定の政策変更や具体的な突破口に、いくつかのSDGsについて、迅速かつ大規模に前進を同時に後押しできる可能性があることを知っています。

「行動の10年」では、こうした変革や突破口を優先的に推進していかねばなりません。

この種の根本的変革をもたらす解決策は、気候変動の影響を受けやすい国の資金へのアクセス拡大から、若者に将来のためのスキルを身に着けさせること、さらには、再生可能エネルギー関連の電池技術の向上から、デジタル接続性格差の縮小に至るまで、多岐にわたります。

そこには、持続可能な食料に関する新たなコンセンサスの醸成から、化石燃料に対する補助金の廃止に至るまで、また、あらゆる領域のリーダーシップへの女性の平等なアクセス確保から、甚大な危機のリスクを抱えるコミュニティーや人々のレジリエンス強化に至るまで、幅広い施策が含まれる可能性もあります。

私たちは、こうした解決策の特定と遂行を図る中で、根本的変革への入口点として明らかにされているものをはじめ、「持続可能な開発に関するグローバル・レポート」から着想を得ていきます。また、2030アジェンダの資金調達に関する事務総長の戦略を含め、すでに進められている取り組みにも立脚していきます。さらに、国連システム内外の既存のマンデートや能力にも依拠します。

進捗状況を評価し、成果を明らかにし、さらに取り組みが必要な領域を特定することは、「行動の10年」にとって欠かせません。

それこそまさに、SDGサミットの政治宣言により毎年、ハイレベルウィークに開催を要求されている「SDGモーメント」で、私たちが達成できることなのです。

「SDGモーメント」では、最善のデータや解析、イノベーション、テクノロジーに依拠しつつ、何がうまく行き、何がうまく行っていないのか、どこで取り組みの強化が必要か、そのために何ができるかを端的に把握できます。

また、政府だけでなく、SDGsステークホルダー全体が採用している最善の解決策を披露することもできます。

さらに、SDGsを常に政治的な最優先議題とすることにより、ECOSOCハイレベル政治フォーラムが毎年、実施しているより詳細な検討と分析を補完することもできます。

私たちは2020年9月の「SDGモーメント」を、9月21日の国連創設75周年記念ハイレベル会合と同時に、または、9月22日の一般討論演説の初日に開催するのが最善ではないかと考えています。

創設75周年と関連づけて会合を行えば、私たちが望む未来と、私たちが必要とする国連を実現するうえでSDGsが果たす不可欠な役割が明らかになるでしょう。

しかし私は、創設75周年に関する総会決議73/299が、ハイレベル会合と並行して政府間会合またはサイドイベントを行うことに対する加盟国の懸念も盛り込んでいることを認識しています。

よって私は、この件をどう前進させるべきかに関し、皆様の見解や関与を歓迎します。

今回の会合は「行動の10年」と「SDGモーメント」に関する初の会合となります。

私たちには多くの作業が残っています。

皆様の知見や観点についてお聞きすること、そして、私たちが今後数カ月にわたり、SDGsの達成を目指す「行動の10年」に向けて動員を図り、野心を高め、根本的な変革をもたらす解決策を促していく中で、皆様と連携できることを楽しみにしています。

ありがとうございました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。