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少数者の権利保護に向けた公約の実現、世界は「程遠い」とグテーレス事務総長(UN News 記事・日本語訳)

2022年11月14日

ベトナムの少数民族、モン族の家族©UNICEF/Truong Viet Hung

 

2022年9月21日-アントニオ・グテーレス国連事務総長は本日、少数者コミュニティーを保護するという30年前に掲げられた公約の実現において、世界は「程遠い」と述べ、その怠慢を是正するための具体的な行動を求めました。

 

事務総長は、「民族的または種族的、宗教的および言語的少数者に属する者の権利に関する宣言」の採択30周年を記念してニューヨークで行われたイベントでスピーチを行いました。

国連総会と並行して開かれた会合で、各国は画期的な文書の進捗状況について評価を行いました。

「明らかな不作為と怠慢」

グテーレス事務総長は、各国の取り組みを率直に評価しました。

「厳しい現実として、30年経った今でも世界は公約を達成していません。程遠い状況です」と事務総長は述べました

「私たちは、公約と現実の“差”を扱っているのではありません。少数者の権利保護における明らかな不作為と怠慢を扱っているのです」

最も影響を受けているのは女性たち

事務総長は、少数者が強制的な同化や迫害、偏見、差別、ステレオタイプ化、憎悪、そして暴力に直面していると報告しました。

少数者は政治的権利や市民権も奪われ、文化や言語も抑圧され、宗教的習慣も制限されてきました。

さらに、世界の無国籍者の4分の3以上が少数者に属している一方で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19のパンデミックは、深く根付いた排除と差別が、少数者コミュニティーに多大な影響を与えていることを浮き彫りにしました。

「少数者グループの女性たちは、ジェンダーに基づく暴力の増加に直面し、失業者数は大幅に増加し、財政刺激策の恩恵が最も少ないなど、多くの場合で最悪な状況にあります」と事務総長は付け加えました。

事務総長は会合の出席者に対し、国際社会はこの約束の遂行を過去にしておくべきだったと語りました。

行動呼びかけ

「私たちには、政治的なリーダーシップと断固たる行動が必要です。少数者とそのアイデンティティーを守る具体的な措置を講じるよう、私はあらゆる加盟国に呼びかけます」事務総長はこのように述べました。

また、自身が2020年2月に発表した「人権のための行動呼びかけ(Call to Action for Human Rights」を、すべての政府が長年の差別問題に取り組むための「青写真」であると説明しました。

一方、事務総長が昨年9月に発表した報告書『私たちの共通の課題(Our Common Agenda)』では、人権への包括的なアプローチに根差した新しい社会契約の導入を求めています。

事務総長は、少数者はあらゆる行動や決定に積極的かつ平等に参加しなければならないと強調し、その参加は少数者の利益のためだけに留まらないと付け加えました。

私たち皆が恩恵を受けるのです。少数者の権利を保護する国はさらに平和になります。少数者の全面的な参画を促進する経済はさらに繁栄します。多様性と包摂性を受け入れる社会はさらに活気に満ちます。そして、万人の権利が尊重される世界はさらに安定的かつ公正となります」と事務総長は述べました。

この記念式典を「行動のきっかけ」にすべきだと事務総長は述べ、あらゆる場所の少数者のために宣言を実現すべく、各国に協力を要請しました。

宣言について

1992年に採択された同宣言は、少数者の権利に完全に特化した、国連で唯一の国際的な人権文書です。

宣言には3つの中核的な真実、すなわち、少数者の権利は人権であること、少数者の保護は国連の使命に不可欠であること、そしてこれらの権利を推進することは、政治的・社会的安定を促進し、国内および国家間の紛争を防ぐために不可欠であることが記されています。

共通基盤の強化

国連総会のチャバ・コロシ議長は発言の中で、各国に対して、自国領内の少数者の権利を保護するために緊急に行動するよう要請しました。

「宣言が目指したのは、少数者が宗教の教えを自由に実践し、伝統に自由に参画し、母語を自由に話すことのできる世界をつくることでした。それは、多様性がマイナス要因ではなく強みと見なされる世界です」と議長は述べました

「しかし、今日の私たちのなすべきことは責任を追及することではありません。すでに合意された共通基盤を強化することです」と続けました。

事務総長と同様にコロシ議長も、暴力に対する脆弱性を増大させている、いわゆる「複数の交差する形態の差別」に耐えている少数者の女性たちの窮状について言及しました。

「疎外」から生じる多くの危険

イラクにおいてテロ組織「イラクとレバントのイスラム国(ISIL)」による残虐行為を生き延びたノーベル賞受賞者のナディア・ムラド氏は、同国北部にある、ヤジディ教徒の小さなコミュニティーでの生い立ちについて語りました。

イラクは広大で、少数者コミュニティーは地理的にも意図的にも隔てられていたと彼女は語りました。

「権力者にとっては、少数派が隔てられ、互いに疑心暗鬼になり、政府や市民社会の中で声を持たない国を支配する方が容易だったのです。私たちは権利も代表権も奪われ、疎外されていました。私たちは目に映らない存在だったのです」とムラド氏は述べました。

人権活動家で国連薬物犯罪事務所(UNODC)の親善大使でもあるムラド氏によると、こうした孤立が「暴力的な結果」を招きました。

ムラド氏は、ISILがイラクに侵入したとき、ヤジディ教徒は孤立状態で無防備だったと言います。彼女の村は攻撃されました。8年が経った今でも、そのコミュニティーは辺地に追いやられたままで、ほとんどの人が、今もイラクのクルド人自治区にあるキャンプで暮らしています。

ムラド氏は、自分の経験が単に「ヤジディ教徒の話」だけに留まらず、イラクのすべての少数者コミュニティー、更には自国での公正な役割を求めて闘う世界中の少数者にも当てはまるものだと主張しました。

「私たちには、国際社会が行動し、この決議で示されている理想を信じていると世界に示してくれることが必要です。私たちは不作為が招く残酷な結末を知っています。私たちは、この闘いにおいて皆さんが私たちのパートナーとなってくれることを求めています」

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原文(English)はこちらをご覧ください。

【関連資料】事務総長報告『私たちの共通の課題(Our Common Agenda)』概要の日本語訳