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事務総長報告『私たちの共通の課題(Our Common Agenda)』概要の日本語訳はこちら *大切な提案(12のコミットメント)のインフォグラフィックス日本語版を追加しました

2021年09月21日

Common Agenda

*アントニオ・グテーレス事務総長は2021年9月10日、『私たちの共通の課題(Our Common Agenda)』と題するビジョンを発表しました。以下は、同事務総長報告の概要の日本語訳です。

私たちは歴史の転換点を迎えています。

第二次世界大戦以来最大の共通の試練において、人類はブレークダウン(崩壊)かブレークスルー(突破)かという厳しい緊急の選択を迫られています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は私たちの世界を根底から覆し、私たちの健康を脅かし、経済と暮らしを破壊し、貧困と不平等を深刻化させています。

紛争は引き続き猛威を振るい、悪化しています。

飢饉、洪水、火災、猛暑といった気候変動に伴う破滅的な影響は、私たちの存在そのものを脅かしています。

世界では何百万もの人々が、健康、安全、疾病に対する予防接種、安全な飲料水、ひと皿の食料、授業への出席など、暮らしにおいて基本的に必要とするものを得る権利を、貧困や差別、暴力、排斥のために否定されています。

人々は、私たちが世界を再建し、人々と地球にとってより良い、より持続可能な未来を確保するために必要な、相互信頼・相互連帯の価値観に、ますます背を向けるようになっています。

人類の福祉、それどころか人類の未来そのものが、共通の目標を達成するために私たちがグローバルな家族として連帯し、協力できるか否かにかかっています。

人々のために、地球のために、繁栄のために、そして平和のために。

昨年、国連創設75周年にあたり、加盟国は私たちの課題が国境やその他のあらゆる分断を越えて相互に関連しているという認識で一致しました。これらの課題は、マルチラテラリズム(多国間主義)を再活性化し、国連を取り組みの中核に据えることを通じて、課題と同様に相互に関連した形での対応によって初めて対処することができます。

加盟国は、私たちの共通の課題を進展させる提言を添えた報告を私に要請しました。この報告書が私からの回答です。

報告書の作成に当たり、私たちは、加盟国、ソート・リーダー(各分野の第一人者)、若者、市民社会、国連システムやその他多くのパートナーなど、幅広いステークホルダーと意見を交わしてきました。

その結果、一つのメッセージがはっきりと浮かび上がりました。私たちの今日の選択が、また今日し損なう選択が、さらなるブレークダウンを招くか、あるいは、より環境に配慮した、より良く、より安全な未来へのブレークスルーをもたらすかということです。

その選択をするのは私たちですが、同じ機会は二度と訪れません。

私たちの共通の課題』が、持続可能な開発目標(SDGs)を含む既存の合意の履行を加速させるために考えられた行動アジェンダである理由は、何よりもここにあります。

第一に、今こそ、グローバルな連帯を再びしっかりと携えて、共通の利益に向けて協力するための新たな方法を模索するときです。これには、COVID-19に対するワクチンを、依然としてこの基本的な救命措置を受けられていない何百万もの人々の手に届けるためのグローバルな接種計画を含めなければなりません。さらに、気候崩壊、生物多様性の喪失と私たちの地球を破壊する汚染という三重の危機に対処するための、緊急かつ大胆な措置も含めなければなりません。

第二に、今こそ、政府と市民の間の社会契約、社会の中のその他の社会契約を更新して信頼を再構築し、人権の包括的なビジョンを享受するときです。人々は、その成果が自らの日常生活に反映されることを確認する必要があります。そこには、女性や女児の積極的かつ平等な参加を含まなければなりません。女性や女児が参加しない有意義な社会契約などあり得ません。また、より良い公共財を提供するよう刷新されたガバナンス体制も含めるとともに、普遍的な社会的保護、健康保険、教育、技能、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、そして住居が確保され、基本的人権として2030年までに誰もがインターネットにアクセスできる新たな時代を開く必要もあります。私はすべての国に対し、包摂的で有意義な、国民からの公聴の場を設け、すべての人々が自国の未来を思い描く上で発言の機会を得られるようにするよう奨励します。

第三に、今こそ、事実、科学と知識に関して実証的に裏付けられた共通のコンセンサスを擁護し、世界を蝕む「インフォデミック」を終わらせるときです。「科学との戦争」は終わらせなければなりません。政策と予算に関するあらゆる決定は、科学と専門知識で裏付けされるべきです。私は、公開情報の信ぴょう性を高めるグローバルな行動規範の策定を呼びかけます。

第四に、今こそ、経済的な繁栄と前進を評価する方法における明白な盲点を是正するときです。人々と地球の犠牲の上に利益がもたらされるとき、私たちは経済成長の真のコストの全体像を把握していません。現在評価されている国内総生産(GDP)には、事業活動に伴う人類と環境の破壊が反映されていません。私は、GDPを補完する新たな評価基準を設け、人々が事業活動の影響を十分に理解し、人々と地球をより良く支えるために自分たちができること、そしてしなければならないことを全面的に理解できるようにすることを呼びかけます。

第五に、今こそ、長期的な視点で考え、若者とその後の世代のためにより多くのことを果たし、今後の課題へより良く備えるときです。「私たちの共通の課題」には、政治的代表性の改善や、教育、技能訓練と生涯学習の変革によるものを含め、国連の内外のいずれにおいても、有意義で多様かつ効果的な若者の関与のための提言が記されています。私は、未来世代への影響を考慮して政策と予算が決定されるようにするために、信託統治理事会の再活用、フューチャーズ・ラボ、将来世代に関する宣言、国連特使といった提案も行っています。私たちは、重大なグローバル・リスクを予防し、それに対応するためにより良く備える必要もあります。国連が「戦略的展望とグローバル・リスクに関する報告書」を定期的に発行することが重要になるでしょう。私はまた、緊急プラットフォームを招集して複雑なグローバル危機に対応することも提案します。

第六に、今こそ、国連の中から支えられた、より強力で、よりネットワーク化の進んだ、包摂的な多国間体制が必要なときです。効果的な多国間主義は効果的な国連、すなわち国連憲章の目的と原則に従いつつグローバルな課題に適応できる国連にかかっています。例えば、私は新たな平和への課題、宇宙空間に関するマルチステークホルダー対話、グローバル・デジタル・コンパクトのほか、G20メンバー国と経済社会理事会、事務総長、国際金融機関の長の間の隔年サミットを提案しています。全体を通して、私たちは関連するすべてのステークホルダーがより強力に関与することを必要としており、地方・地域政府に関する諮問グループの設置を求めます。

国連は75年間にわたって、紛争と飢餓から疾病の根絶、宇宙空間とデジタル世界、人権と軍縮に至るまで、グローバルな課題への対処に向けて世界を結集してきました。分断、分裂と不信にあるこの時代に、私たちがすべての人々にとってより良く、より環境に配慮した、より平和な未来を確保しようとするなら、こうした空間がこれまで以上に必要になります。報告書『私たちの共通の課題』に基づいて、私は、元国家元首・政府首脳が率いるハイレベル諮問委員会に対し、グローバルな公共財と、ガバナンスの改善を最も必要とする共通の関心があるその他の分野を特定し、これを達成する方法に関する選択肢を提示するように要請します。

こうした精神に則り、私は、私たちの未来のあり方と、そのような未来を確保するために私たちが今日できることについて新たなグローバル・コンセンサスを築くため、未来に関するサミットの開催を提案します。

人類は、力を合わせれば大きな成果を上げられることを何度も証明してきました。この共通の課題は、このような前向きな精神を取り戻し、私たちの世界の再建と、歴史のこの時期において何としても必要な相互信頼の回復を始めるためのロードマップです。

今こそが、すべての人々のためにすべての人々と連帯し、私たちの旅路においてともに次のステップを踏み出すときなのです。

大切な提案
国連創設75周年に寄せられた宣言より
12のコミットメント
(*画像をクリックすると、大きな画像が表示されます)

* *** *

概要の原文(English)はこちらをご覧ください。

国際協力の将来:「大局観に立つとき」グテーレス事務総長が要請(UN News 記事・日本語訳)

報告書(全文)へのリンク:
https://www.un.org/en/common-agenda-report

Our Common Agenda ウェブサイト(国連本部)へのリンク:
https://www.un.org/en/un75/common-agenda