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「国際女性の日」2012 ~東日本大震災から一年、女性たちは今~ 【第4回】

2012年03月14日

日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会は1971年、失業者が自らの手で仕事をつくり出す運動の中から誕生しました。被災地・東北の復興・再生における仕事づくりを支援するため、昨年7月には東北復興本部を発足させています。その本部長を務める田中羊子さんに、現在の活動の中で被災者の女性たちの直面する課題とそれを乗り越えるための工夫などについてお聞きしました。

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【第4回】真の豊かさを求めて、仕事づくりで地域の活性化を図る

私たちワーカーズコープは、東北の復興が進められる今、地域の人たちが再び立ち上がれるための仕事づくりを一緒にやっています。あくまでも被災者が主体となり、力を合わせて地域の復興を遂げていく-。そこに「自らの手で、仕事をつくる」という、ワーカーズコープがこの30年間培ってきた実践を少しでも役立てたいと願っています。

そうした思いから昨年7月、私たちは東北復興本部を立ち上げました。震災前には踏み出せなかった女性たちも、今、地域の中で人の役に立ちたいという想いを強めています。震災をきっかけに、これまで見えなかった高齢者や障害者の置かれている状況、居場所を必要とする子どもたちや若者たちの存在に気づき、地域に何が必要か、何のために働くのかを見つめ始めています。

しかし、当初は被災地の状況が分からず、ワーカーズコープの事業はなかなか思うように進みませんでした。昨秋、石巻で開講予定だった求職者支援訓練には受講の応募がほとんど集まらず、コース自体を断念せざるを得ませんでした。後になって分かったことですが、女性たちは明日の生活の見通しが立たないこと、子どもの心の不安定さ、配偶者が鬱になって引きこもっているなど様々な家庭の事情があって、そう容易には新しい一歩を踏み出せなかったのです。子どもを持つ女性の中には、完璧な子育てを目指して落ち込み、家庭に自分の居場所を失って自信を無くしてしまったという人もいました。このような心情も、地域に入り、仮設の集会室などで懇談会を重ねるうちに出てきました。

今年に入り、私たちが東北の被災地で行っている求職者支援訓練がようやく軌道に乗ってきました。気仙沼復興商店街との出会いがその良い例です。昨年8月、52軒入る予定の仮設店舗建設を自分たちの手で進められている南町商店街の皆さんと出会いました。そこで、ワーカーズコープは、「仮設店舗内の子どものためのフリースペースをお借りして、日中に仕事を求めている方たちの職業訓練をしたい」と提案をし、一緒に取り組むことになりました。地元の生活支援団体の協力を得て仮設住宅の集会所で懇談会や説明会を重ね、ついに1月23日、開講の運びとなりました。男性2名を含む計18名の受講生でのスタートです。

岩手県大船渡市でも仕事づくりへの一歩が踏み出されました。「仕事おこし」を学ぶ組合員7名が埼玉県深谷のワーカーズコープの仲間から豆腐づくりのノウハウを学び、現在、4月末を目標に豆腐工房と直売所の開設に向けて準備をしています。

震災後の復興に関わって感じるのですが、東北では被災したことで、人間にとって一番大切なものとしての「命、自然、人と人とのつながり」が、以前より強く認識されていると思います。経済成長が最優先されてきたこれまでの世界では、こうしたことが見えにくかったのかもしれません。女性の中にも、以前とは違う価値観が着実に生まれていることを感じます。一人では足を踏み出せずにいた女性たちが、「協同労働」という働き方と出会い、互いを受けとめ合える仲間を得て、本来持っていた力を発揮して地域再生の力強い担い手として成長しています。

*国連は2012年を「国際協同組合年」と定めています。

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第1回「もっとジェンダーの視点に立った支援を

第2回「福島の警戒地域から避難、自分の力を信じて歩み続ける

第3回「被災した外国人女性、新しい職を得て、自らの生き方と周囲を輝かす

第5回「雇用対策を初めから復興支援に組み入れる

ワーカーズコープ東北復興本部長を務める田中羊子さん(後列左から2人目)。宮城県登米市の「仕事おこし講座」開講式で、受講生16名の門出を祝い挨拶を行った(宮城県登米市で、2011年10月3日) © ワーカーズコープ
ワーカーズコープの永戸祐三理事長(右)と田中さん。NPO法人気仙沼復興商店街の人々と復興構想を語り合う(宮城県気仙沼市、2011年10月24日)© ワーカーズコープ
求職者支援訓練としてヘルパー2級の講座が仮設店舗の子どもたちのためのフリースペースで開講。18名の受講生でスタートした(宮城県気仙沼市、2012年1月23日)© ワーカーズコープ
仮設に暮らす住民が、ワーカーズコープの組合員と一緒に地元に伝わる「はっと汁」を作り、歌声喫茶を楽しんだ(2011年12月、宮城県登米市)© ワーカーズコープ