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「国際女性の日」2012 ~東日本大震災から一年、女性たちは今~ 【第5回】

2012年03月15日

シリーズ最後にご紹介するのは、タイの首都バンコクにある ILO(国際労働機関)アジア太平洋地域総局で昨年4月から自然災害・武力紛争後の復興を担当している小山淑子さんです。福島県南相馬市出身のご親戚を持つ小山さんは、被災地での復興が他人事ではないと感じています。「雇用と女性」を中心に、国連が進める自然災害後の支援についてお聞きしました。

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【第5回】雇用対策を初めから復興支援に組み入れる

雇用対策を初めから復興支援に組み入れること」をILOは提唱しています。雇用が復興の中心に据えられて初めて、住民は自力で復興できるのです。国連がこのことを認識したのはつい数年前、武力紛争後の復興においてでしたが、震災後の復興でも雇用の重要性は変わりません。

日本のような先進国と途上国における復興の大きな違いは、民間が大きな力を発揮することです。また、法整備がされている日本では、雇用保険を柔軟に用いて被災者を支援することが可能ですが、途上国では一から法整備をしなければならないこともあります。

いずれの復興プロセスでも重要なのは、住民のニーズを正確に把握すること、そして住民が復興計画の意思決定に直接参加することです。2004年末のスマトラ沖地震・津波はインドネシアのアチェに甚大な被害をもたらしました。住民は政府職員と共に何度も復興計画を話し合い、手元に残されていた模造紙に書いたものがそのまま復興計画になりました。また、経済ニーズを正確に把握するには首長だけでなく、女性、若者、高齢者、障害を持つ人々にも話を聞くことが必要不可欠です。

被災地で「女性にはあまり仕事がない」と聞きます。しかし、地元で不便だと感じられていること、これまで家事の一環として女性が無償でしていたことをビジネスチャンスとして見直すことで、雇用機会が広がります。震災からの復興過程においては変革を推し進める機会もあるのです。女性が起業する際、資金繰りや書類手続きの仕方など行政や専門家のサポートは必要でしょう。既に起業している女性がアドバイスできることも多いと思います。

2004年の津波によるスリランカの被害状況は、今の三陸に似ています。漁に出た多くの男性が帰らぬ人となり、残された女性たちは経済的に自立することを余儀なくされました。その中で、暑く冷蔵庫もない所で「作ってすぐ売れる」物としてヨーグルトの製造と販売を思いつき、以後被災地の生活再建と復興に貢献、成功を収めています。

震災から一年、被災者の方々はもとより、復興をお手伝いする人々の中にも疲労が募り、気持ちが落ち込むという方が少なくないと想像します。じっくり腰をすえて復興支援をしていくには、その過程で自分が少しでも前向きに取り組める仕掛けを作り出してあげることも大切です。また、「被災者」は「可哀そうな援助対象」ではなく、優れた能力を持つ人材です。その能力が最大限に活用されることで初めて、復興は実現するのだと思います。

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【シリーズを終えて】

一週間にわたりお届けした「『国際女性の日』2012~東日本大震災から一年、女性たちは今~」、いかがでしたか。様々な立場の女性にお話を伺い、そこから出てきた共通の声は、深刻な被害を受けた東北の復興には、女性の視点を反映した政策が必要だということです。そして、女性の就業や起業支援を進めることで、地域社会全体を再び元気にすることができるという確信です。国連広報センターは、今後も引き続き皆さんと一緒に、日本での女性のエンパワーメントの行方を見守りたいと思います。

第1回「もっとジェンダーの視点に立った支援を

第2回「福島の警戒地域から避難、自分の力を信じて歩み続ける

第3回「被災した外国人女性、新しい職を得て、自らの生き方と周囲を輝かす

第4回「真の豊かさを求めて、仕事づくりで地域の活性化を図る

2004年のインド洋大津波で甚大な被害を受けたスリランカ南部海岸© UN Photo/
津波により被害を受けたスリランカ南岸で救援活動にあたる人々© UN Photo/
2004年の大津波の後、ILOによる職業・起業訓練を受け、手工芸品を作り、売るビジネスを始めた被災女性たち(スリランカ)© ILO
2004年の大津波の後、ILOによる職業・起業訓練を受け、小麦精製の工場を立ち上げた女性(インド)© ILO