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国際生物多様性の日(5月22日)に寄せる
潘基文国連事務総長メッセージ

プレスリリース 07/027-J 2007年05月22日

生物多様性は地球上の生命の基盤であると同時に、持続可能な開発の重要な柱の一つでもあります。地球上の生命が豊かで、かつ多様であることにより、きれいな水、食糧、住み家、薬、衣服など、私たちになくてはならないサービスを生態系が提供することを可能にしています。生物多様性に恵まれた環境は、自然災害に襲われても立ち直ることができます。特に世界の最も貧しい人々にとって、このことには大きな意義があります。1日数ドルでの生活を強いられている人々は、生物多様性がなければ基本的ニーズを満たせません。生物多様性を守り、これを持続可能な形で利用しなければ、私たちがミレニアム開発目標(MDGs)を達成することはできないのです。

しかし、生物多様性はこれまでにない速さで失われつつあります。それによって、地球がその生命を維持する能力も大幅に低下しています。こうしたことから、2002年にヨハネスブルクで開かれた「持続可能な開発に関する世界サミット」では、世界の指導者たちが、生物多様性損失のスピードを2010年までに大幅に減速させることを合意しました。この約束は2005年の世界サミットでも改めて確認されました。2010年を期限とする生物多様性についての目標は、MDGsの枠組みに全面的に取り入れられているほか、国際社会は一層の支持の証しとして、2010年を「国際生物多様性年」と宣言することを決定しました。

気候変動に対しても世界の注目が高まる中で、気候変動と生物多様性との関連性も強調されるようになりました。世界の生態系とその役割を最先端の技術を用いて評価した「ミレニアム生態系評価」によれば、気候変動は土地利用パターンの変化と並び、地球上の生物多様性損失の大きな原因の一つとなっています。また、最近になって発表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書でも、気候変動は現実に起こっており、今後も長期にわたって、私たちの生活と生態系に影響を及ぼし続けることが極めて明白になりました。絶滅種が増大の一途をたどる結果、すでに脆弱化している多くの生態系がさらに衰弱することも、その影響の一つです。

よって、今年の国際生物多様性の日のテーマ「生物多様性と気候変動」は、まさに時宜にかなった主題といえます。事実、気候変動対策としてどのような戦略を採用しようとも、生物多様性の保全とその持続可能な利用は欠かせない要素となります。マングローブ林やその他の沿岸部の湿地は、異常気象や海面上昇に対する防壁となります。農業を取り巻く環境が温暖化、乾燥化する中で、家畜や穀物が多様であれば、農民が新たな状況に対応する選択肢をもつことを可能にします。森林、泥炭地帯などの生態系は、大気中の二酸化炭素を固定することで、温室効果ガス排出量の増大を抑えるのにも役立ちます。

生物多様性条約と国連気候変動枠組み条約を通じ、国際社会は生物多様性を守り、気候変動と闘うことを約束しました。こうした課題へのグローバルな対応をさらに加速するとともに、世界、国家、地方のあらゆるレベルで、さらに決意を固める必要があります。私たちは現在の、そして将来の世代のためにも、これら画期的条約の目標を達成しなければならないのです。