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広島平和記念式典に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶(広島、2023年8月6日)

プレスリリース 23-042-J 2023年08月06日

広島市提供

代読:軍縮担当上級代表 中満泉

日本語にて、事務総長のメッセージを代読させて頂きます。

今からおよそ80年前、たった一発の核兵器によって、広島は焼き尽くされました。

広島を訪れたことのある人は誰もが知っているように、その惨劇の記憶は、80年近くたった今日もなお、決して色褪せることはありません。

原爆ドーム、慰霊碑、そして勇敢な被爆者の方々の存在は、核兵器がもたらす破滅的な結末を常に私たちに思い起こさせます。

78年もの間、広島市と被爆者の方々は、核兵器が二度と使用されないよう、たゆまぬ努力を続けてこられました。

私は広島を訪問し、被爆者の皆様とお会いする度に、勇敢に核兵器の廃絶運動を続ける姿に心を打たれ、核による人道的大惨事を二度と引き起こしてはならないと、痛感致します。

被爆者の方々は、赦し、希望、そして惨劇からの復活を体現される力強い象徴です。

被爆者の方々は、壮絶な悲劇を乗り越えられたのです。

恐怖、痛み、想像を絶する喪失、そして何よりも、1945 年の8月6日に、ここ広島で起きた惨劇の教訓を世界に伝え続ける被爆者の方々を、私はこれからも支援し続けることをここに改めて誓います。

世界の指導者たちは、この街を訪れ、記念碑を目にし、勇敢な被爆者の方々と語り合い、核軍縮という大義に果敢に取り組んでいく姿勢を見せました。

しかし、核戦争勃発の危機を知らせる鐘が再び世界に鳴り響いている今、より多くの指導者たちが、真剣に核軍縮に向き合わなくてはなりません。

今日、信頼は低下し、世界の分断が進んでいます。

冷戦期に垂れこめた核の暗雲が再び忍び寄っています。

そして一部の国々は、再び無謀にも、破滅の道具である核兵器の使用の威嚇を行っています。

このような脅威に直面している今、国際社会は一つにならなければなりません。

核兵器のいかなる使用も、断固として、容認することはできません。

私たちは、核保有国同士が、より危険な兵器を作らんとする軍拡競争を、黙って見ているつもりはありません。

この軍拡競争に歯止めをかけるべく、私は先月末、「新たな平和への課題」という政策ブリーフを発表し、軍縮をその中心に据えたのです。

「新たな平和への課題」は、加盟国に対し、核兵器のない世界を追求し、核兵器の使用と拡散に反対する世界的な規範を強化するよう、緊急に要請するものです。

核兵器が完全に廃絶されるまで、核保有国は決して核を使用しないことを約束しなくてはなりません。

そして核のリスクを排除する唯一の方法は、核兵器を廃絶することです。

国連は、核兵器不拡散条約や核兵器禁止条約を通じて、国際的な核軍縮・核不拡散体制の強化に向け、世界の指導者たちと引き続き協力していきます。

核兵器の廃絶は、依然として、国連における軍縮の最重要課題です。

核による破滅の脅威が、この世から影も形もなく消え去るまで、私たちの努力は続きます。

もう二度と、広島の悲劇を引き起こさないでください。
もう二度と、長崎の惨禍を繰り返さないでください。

軍縮は、夢物語ではありません。

軍縮は、すべての人々にとって、より安全な世界を実現する唯一の方法なのです。

国連は、広島、そして被爆者の皆様とともに、ここ広島で起きた惨劇の記憶を風化させることなく、より平和な未来の実現のために、人類が学ばなくてはならない教訓を生かし続けていくことを誇りに思います。

私たちは、この重要な取り組みにおいて、日本の皆様と協力できることを期待しています。

2023年(令和5年)8月6日
国際連合事務総長 アントニオ・グテーレス

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