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寄稿「持続可能な開発に向けた歩みは、達成への軌道から外れている」 アントニオ・グテーレス国連事務総長

2019年11月14日

*(注) この記事は当初、“Progress toward sustainable development is seriously off-track”というタイトルのもと、フィナンシャルタイムズ紙に掲載されました。

世界中の人々が街頭でデモを繰り広げ、生活費の高騰と、不正の事実や疑いに抗議しています。経済が自分たちのためになっていないと感じているためですが、こうした人々の見方は正しいこともあります。現実にどのようなコストや結末が生じるかを無視し、成長だけに焦点を絞った結果、気候変動による大災害や制度に対する信頼の喪失、将来に対する希望の欠如が生じているからです。

民間セクターは、こうした問題の解決に欠かせない役割を果たします。企業はすでに、国連と密接に連携しながら、持続可能な開発目標(SDGs)に基づき、より安定的で公平な未来の構築を支援しています。SDGsの17の目標は、貧困や不平等、気候危機、環境破壊、平和と正義を含む課題に2030年を期限として取り組むことを目的に、世界のあらゆるリーダーが2015年に合意した目標です。

SDGs採択から4年が経ち、ある程度の前進は見られています。極度の貧困と幼児死亡率は低下し、エネルギーやディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)へのアクセスも広がっています。しかし全体として、私たちは達成への軌道からかなり外れた状況にあります。飢餓が広がり、世界人口の半数は基礎教育も必須の医療も受けられず、女性はあらゆる場所で差別や不利益を被っているからです。

前進が覚束なくなっている理由の一つは、資金の不足にあります。政府の公的資金だけで貧困根絶のための財源を確保し、女子教育を改善し、気候変動の影響を緩和することは到底できません。このギャップを埋めるためには民間投資が不可欠であるため、国連は金融部門と協力しています。企業と金融、その公共政策との関連性にとって、今は極めて重要な時期だと言えます。

第1に、企業には株主だけでなく、社会全体にとって利益となる長期的な投資方針が必要です。これは現実のものとなりつつあり、大規模な年金基金の中には、化石燃料関連銘柄を投資ポートフォリオから外すものも出てきました。また、総資産47兆ドルを運用する130を超える銀行は、国連との協力で策定された責任銀行原則に署名しています。この原則は、SDGsのほか、地球の気温上昇を防ぐための2015年パリ協定、そして、豊かさを共有できるようにするための銀行業務と整合する事業戦略を採用するという、これまでにない約束を体現するものです。私はすべての金融機関に対し、この転換に参加するよう強く促します。

第2に、私たちは民間セクターが持続可能な成長と開発に投資するための新たな方法を発掘しています。10月には、多国籍企業のリーダー30人が国連で、持続可能な開発のためのグローバル投資家(GISD)アライアンスを発足させました。自社の内外で変革の担い手となることを公言した人々の中には、アリアンツやヨハネスブルク証券取引所のトップも含まれています。こうしたリーダーたちはすでに、アフリカ、アジア、ラテンアメリカでのクリーンで利用しやすいエネルギー関連プロジェクトを含む持続可能なインフラ整備への大がかりな投資や、食料の安定供給と再生可能エネルギーの活用に向けて数十億ドルを確保するための革新的な金融手段の利用を支援しています。今後は、投資機会と投資家のマッチングを行うことで、GISDアライアンスは持続可能な開発へと資本を誘導するうえで、さらに大きな役割を担っていくことになります。

私は、あらゆるビジネスリーダーがこの模範に倣い、未来の経済に投資することを期待しています。働きがいのある人間らしい雇用を提供し、人々の暮らしを長期的に改善するようなクリーンで環境に優しい経済成長という、未来の経済への投資です。SDGsの達成に必要な数兆ドルを調達するためには、企業がより速く、より遠くへ進まねばなりません。

第3に、私たちはビジネスリーダーに対し、投資からさらに一歩を踏み出し、政策転換も求めるよう呼びかけます。すでに、企業が先頭に立って方針転換を図っているケースも多く見られます。持続可能性はビジネスとしても理に適っているからです。消費者自身からの圧力もあります。ある投資家は持続可能な金融を「メガトレンド」と形容しました。しかし、民間資金はしばしば、市場を歪める化石燃料補助金や、現状を守ろうとする既得権益との闘いを強いられています。アビバ(AVIVA:英保険会社)を含む大型投資家は、化石燃料に対する補助金が低炭素経済に属するものを含め、主要な産業の競争力を低下させかねないと警告しました。政府は時代遅れの規制・政策枠組みや税制の変革に消極的で、変革を先延ばしにしています。四半期に1回という報告サイクルは、長期的投資にブレーキをかけています。投資家に対する受託者の義務は、より幅広い持続可能性の観点を含め、アップデートする必要があります。

ビジネスリーダーには、その巨大な影響力を活用し、包摂的な成長と機会を積極的に求めてもらう必要があります。この取り組みを無視できるような企業は一社もなく、同時に、民間投資の恩恵を得られないSDGsもないからです。

持続可能で公平な開発への投資は、倫理とビジネスの論理の両方に合致します。企業のリーダーは、健全な地球で平和と安定、豊かさを享受できる未来に向けて、状況を大きく変えることができるのです。

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寄稿の原文(English)はこちらをご覧ください。