• プリント

潘基文(パン・ギムン)国連事務総長による 第62回年次DPI/NGO会議開会あいさつ 「平和と発展のために:今こそ軍縮を!」 (メキシコシティ、2009年9月9日)

プレスリリース 09/055-J 2009年10月10日

パトリシア・エスピノサ外務大臣、チャールズ・ヒッチコック議長、マリアノ・サインス海軍長官、
ジョディ・ウィリアムズさんとミゲル・マリン・ボッシュさん、
軍縮団体のリーダーの皆様、市民社会のリーダーの皆様、外交団の皆様、国連の同僚の皆様、そしてご臨席の皆様、
ムイ・ブエナス・ディアス(おはようございます)!
第62回国連NGO年次会議の開会のごあいさつをさせていただくことができ、大変光栄です。
本日のこの非常に重要な会議を主催していただいたメキシコ政府に心からお礼を申し上げます。この会議のテーマである平和、発展、軍縮をはじめ、国際連合の目標に対して長年にわたってご支援をいただき、大いに感謝しています。
外務省ならびに地方自治体の関係者の皆様にもお礼を申し上げます。皆様のご支援がなければ、この会議の本日のような成功はなかったでしょう。トラテロルコ条約が署名されたのはまさにこのメキシコシティでした。これによって人類が住む地域に初めて非核地帯が設置されたのでした。
昨年、私はこの歴史的な出来事を記念してここメキシコシティで開催された特別会議で演説をしました。現在では、110カ国以上が非核地帯の対象となっています。
先般、中央アジア非核地帯条約が発効しました。私はそのことを歓迎するとともに、中東も含めた他の地域でも前進が見られるよう期待しています。
また、多くのNGO代表の皆様に敬意を表します。皆様は真のヒーローであり、この会議の推進力となっておられます。
「国際社会」という言葉を聞いたとき、国家の代表者の集まりであるという考えは浮かんできません。私の心にまず浮かぶ言葉は、国連憲章の冒頭にある「われら連合国の人民」という言葉です。人民こそが究極的な主権者なのです。
この会議は、世界中から集まる個人やNGOに、平和、発展、軍縮という大きな目標を達成するにはどうすればよいかを互いに学び合い、私たちに教えてくれる機会を提供するものです。
皆様、
世界は過剰武装され、平和のための財源は不足しています。軍事支出は依然として日々増加を続けています。冷戦終焉から一世代が過ぎましたが、今や軍事支出は1兆ドルをゆうに超えています。兵器の増産が進み、世界中の市場にあふれています。兵器が社会を不安定にしています。兵器は内戦や恐怖の炎をあおります。ここラテンアメリカでは、銃による暴力が民間人の死傷の第一の原因となっています。
冷戦の終焉の結果、世界では大規模な平和の配当が期待されました。しかし、世界にはいまだに20,000個を超える核兵器が存在しています。その多くは今なお即時警戒態勢にあり、われわれ自身の生存を脅かしています。
増大を続ける弾道ミサイルの拡散やテロリストからの脅威の高まりとあいまって、核兵器は人類にとっての実存的脅威となっています。私たちはあらゆる核実験を禁止する条約を交渉してきましたが、包括的核実験禁止条約(CTBT)はまだ発効に至っていません。21世紀に入ってなお核実験は続けられています。
私たちは核爆発物に使用される核分裂性物質の生産を世界的に禁止するために辛抱強く取り組んできましたが、依然としていくつもの障害が交渉を妨げています。ジュネーブ軍縮会議では、12年ぶりに作業計画に関する膠着状態が打開されたものの、手続き事項に関して合意に達することが出来ず、交渉は停滞したたままです。
対人地雷およびクラスター爆弾の禁止には多くの国が合意していますが、一部の大国はこうした約束に加わらないことを選択しています。小型武器および軽火器の不正取引を食い止めるための国際的な行動計画が合意されていますが、これもまた目標の達成に向けて数々の課題に直面しています。ミサイルに関する多国間の法規範も存在していません。
出席者の皆様、ご臨席の皆様、
このように困難な課題はありますが、希望の光も見えています。多くは皆様からの確固とした支持のおかげで、私たちは新たな好機に直面しています。私はそのことについて皆様にお礼を申し上げます。軍縮が再び世界的な議題となっています。
ロシア連邦の大統領とアメリカ合衆国の大統領がそれぞれの核兵器およびその運搬手段を削減すべく共に尽力しています。私はこの2人の世界的リーダーによる7月6日の合意を歓迎するとともに、戦略兵器削減条約(START)が失効する12月までに両者の間で包括的な交渉が行われることを期待しています。
この交渉は核不拡散条約第6条に基づく義務に従ったものです。米露が合意すれば、来年のNPT(核不拡散条約)運用再検討会議に向けた非常に重要な貢献となるでしょう。私たち、両国がその約束を果たすように促すべきです。
しかし、同時にこれは始まりにすぎないということも認識しなければなりません。私たち最終的に目指しているのは核兵器のない世界です。これは非現実的な目標ではありません。しかし、これを実現するためには行動を起こさなければなりません。
市民社会およびNGOコミュニティの皆様、核兵器は道義に反するものであり、いかなる軍事的価値も与えられるべきではないことを強調するために、これからも世界のすべての指導者に率直な意見を述べていくよう、お願いします。
核抑止論は明らかな誤りであるどころか、核兵器が安全保障と究極の防衛を提供するという考えを国から国へと広め、連鎖的な伝播をも引き起こすものであるということを、世界の指導者は認識しなければなりません。核兵器の実際の効果はまったくその逆なのです。
こうした勢いに乗じるべき時が来ました。本日の皆様の積極的な参加が示している力強いコミットメントに、私は非常に励まされました。今こそ具体的な行動を起こさなければなりません。
私がここに参りましたのは、軍縮への取り組みを継続していくための皆様の活動および支援を、全面的に支持し、全面的に信頼していることをお伝えするためです。同時に、主要原則に基づいて核兵器のない世界を実現するという、私が昨年10月24日に初めて発表した「5項目の計画」に対する支持ネットワークを広げたいと考えています。
私の提案は、次のような内容です。
第一に、軍縮は安全保障を強化するものでなければなりません。
私は安全保障理事会に対し、安全保障を強化するための他の方法を軍縮プロセスの中で検討し、非核兵器国を核兵器の脅威から守るよう、要請しました。
NPT非締約国に対しては、核兵器能力を凍結し、軍縮の約束を独自に立てるよう求めました。また、さらに重要なこととして、安全保障理事会に核軍縮サミットの招集を提案しました。
安全保障理事会が9月24日にサミットを招集し、バラク・オバマ米大統領を議長として核の不拡散と核軍縮に関する議論が行われることを嬉しく思っています。
私もその会合への出席を楽しみにしており、この問題への安全保障理事会の継続的な注力を促したいと考えています。
第二に、軍縮は信頼できるような形で検証されなければなりません。
そのために、NPT締約国に対し、新たな条約を通じて、もしくは信頼性のある検証制度に支えられた、一連の相互補強的な法律文書を通じて、核軍縮に関する誠実な交渉を進めるよう求めています。
私は、核兵器国として認められている国家間で、検証の問題も含めて核軍縮および信頼醸成措置について議論すべきであるという英国の提案を支持します。そうした取り組みに対して国連はいかなる支援も惜しみません。
第三に、軍縮は法的義務に根ざしたものでなければなりません。
地域的な非核地帯や核分裂性物質に関する新条約の場合と同様に、多国間条約への普遍的加入が特に重要です。
オバマ大統領が米国によるCTBT包括的核実験禁止条約の批准を支持していますが、これは歓迎すべきことです。もうわずか数ヵ国の批准で、CTBTは発効するのです。
皆様には、CTBTに未加盟の国々に働きかけ、一刻も早くCTBTに加盟するよう促していただくよう、CTBT機関準備委員会の元委員長として、お願いします。
第四に、軍縮は一般市民の目に見えるものでなければなりません。
核兵器を保有する国々は、自らの軍縮義務を果たすために実施している事柄に関してより多くの情報を公表すべきです。
ほとんどの核兵器国は自国の核兵器計画についての詳細をある程度公表していますが、全世界に核兵器がどれだけ存在しているかは依然として正確に把握されていません。国連事務局がそうしたデータを取りまとめる役目を果たすという可能性も考えられます。
そのための最初のステップとして、核兵器国として認められている国々の核兵器計画に関する透明性と公開性をいかに高めるかについて、安全保障委員会がしかるべき仕組みを通じて検討することを提案します。
第五に、そして最後に、軍縮に際しては他の兵器から生じる危険を予測しなければなりません。
私は、他の大量破壊兵器の廃絶およびミサイル、宇宙兵器、通常兵器の制限における進捗を求めています。こうしたことのいずれも核兵器のない世界のために必要なことです。
これらを総合して、私はこれを爆弾阻止計画と呼んでいます。喜ばしいことに、私の提案の内容を反映した様々な活動が行われています。こうした活動領域に世界を結集させるために皆様の力を貸していただけるようお願いします。皆様の力があれば実現は可能です。
これから先、たくさんの重要な行事があります。9月21日の「国際平和デー」もその一つです。これは、われわれのWMDキャンペーンを展開する日です。WMDは大量破壊兵器(Weapons of Mass Destruction)を意味しますが、それと同時に「われわれは軍備を縮小しなければならない」(We Must Disarm)という意味も表しています。
安全保障理事会による9月24日のサミットに加え、国連は、包括的核実験禁止条約の発効に向けた努力を促進するための特別会議を今月の国連総会に併せて開催する予定です。
来年3月にはワシントンで、核軍縮についてのサミットがオバマ米大統領の主催で再び開催されます。そして来年5月には2010年NPT運用再検討会議のためにNPT締約国が国連に集まります。来年のNPT運用再検討会議では、具体的かつ実質的な前進を遂げなければなりません。2005年の再検討会議のような失敗を繰り返してはなりません。
ご出席の皆様、
平和のないところに発展はなく、発展がなければ平和もありません。軍縮はその両方のための手段を提供することができます。「われら人民」には、国際社会の指導者に次のような問いかけをする当然の権利があります。
核兵器を廃絶するために何をしているか?
貧困撲滅のためにどのように財源を確保していくか?
気候変動の緩和と適応、そして環境保護のためにどのように資金を調達していくか?
これらはグローバルな公益であり、世界のあらゆる政府、あらゆる個人は、新たな多国間主義の精神のもとに、その実現に共に努力しなければなりません。
この世界ではいくつもの危機が起きています。食料(food)、燃料(fuel)、インフルエンザの大流行(flue pandemic)、金融(financial)の危機があり、私はこれを「4F」と呼んでいます。こうした危機は人々の関心を集め、相互依存を強調しています。
これらの危機を単独で解決できる国はありません。いかに資源に恵まれた国であっても、またいかに大きな力を持った国であっても、単独では解決できません。われわれはこうしたすべての危機に積極的かつ協調的に対処していく必要があります。団結した行動をこれほど明白に迫られていることはいまだかつてありませんでした。軍縮は新たな多国間主義への道を開くもので、私はこれを第一の優先課題としているのはそのためです。
最後になりましたが、私のコミットメントは極めて個人的なものであるということを言わせていただきます。私の母国である大韓民国は通常戦争の惨害を被りました。また、隣国の日本に原爆がもたらした破滅的な結果を目撃しました。そうした悲劇を経験したにもかかわらず、われわれは今なお朝鮮民主主義人民共和国に関係した核の問題を憂慮する状況にあります。
また、イランは安全保障理事会の関連決議を完全に順守し、自国の核開発計画がどのような性質のものであるかを立証すべきです。
そうした兵器がもたらす破壊的な影響を改めて世界に気付かせる先頭に立っておられる広島市長も、本日お見えになっています。
広い意味で言えば、私の情熱や動機は皆さんと共に始まります。皆さんを拝見していると、長年にわたって人々の意識に刻み込まれた複雑多彩なイメージが見えてきます。若者たちが平和のために集結しています。科学者が実験室から歩み出て、明確な態度を取っています。人生の黄昏期を迎えた人々も、孫たちのために安全な世界を築こうと奮起しています。
年を追うごとに、皆様方のたゆまぬ努力と献身が世論に変化を巻き起こし、目に見える変革をもたらしてきました。皆様方は、NGOに何ができるかというモデルとなってきました。草の根キャンペーンから生まれる善を世界に示してきました。市民社会の力を実証してきました。そして、その過程において、皆様の運動の真髄が「変化をもたらす最強の力は、人々の力である」という深遠なる真実を世界に悟らせました。これこそ、皆さんの運動に込められている精神です。これこそ、真の変化を生む情熱です。
核兵器のない世界を実現するまたとない機会です。皆さんの声で、皆さんのご支援とご参加で、これを実現できるものと私は確信しています。ご静聴ありがとうございました。会議の成功をお祈りします。
ムーチャス・グラシアス、ムチャ・スエルテ(ありがとうございました、幸運を)!