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「安全で革新的な原子力利用に関するサミット」における事務総長演説

プレスリリース 11/026-J 2011年04月21日

安全で革新的な原子力利用に関するサミット
潘基文(パン・ギムン)国連事務総長の演説
キエフ(ウクライナ)、2011年4月19日

ヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領
各国首脳の方々
閣僚の方々
各国大使の方々
皆様

原子力の安全の問題が全世界で再び脚光を浴びるよりずっと以前から、この会議を計画するという先見の明を発揮されたヤヌコーヴィチ大統領に感謝いたします。

参加者の方々

皆様

25年前、チェルノブイリの爆発事故で、ヨーロッパは放射性雲に、そして全世界は暗い影に覆われました。

そして今、日本の福島第一原子力発電所の悲劇が広がり続けています。

これらの事故はいずれも、人々の恐怖を募らせ、憂慮すべき問題を提起しています。

チェルノブイリでの災害は、一連の教訓をもたらしました。

日本での災害は、別のはるかに複雑な教訓をもたらしています。

私たちが改めて痛感させられているとおり、原子力事故に国境はありません。

原子力事故は人の健康と環境に直接の脅威となります。また、農業生産から貿易、さらにはグローバルサービスに至るまで、あらゆるものに影響を及ぼすことで、経済を混乱させます。

原子力の平和利用と最大限の安全をどのように確保するのか、深く考えるべき時が来ているのです。

私たちはこの根本的な問題を全世界で再検討する必要があります。

壊滅的な影響が及ぶことから、安全を第一に考えなければなりません。

また、国境を越えた影響が及ぶことから、グローバルな議論も必要です。

きょう、私たちの将来に向けて原子力の安全性を高めるため、5つの具体的な措置を提案したいと思います。

第一に、今こそ国内、国際レベルの両方で、現行の原子力安全基準を徹底的に見直すべきです。

現在、原子力施設の安全性を確保する責任は、主として各国政府が担っています。私は各国に対し、学んだ教訓を検討し、できる限り高い安全基準の適用に向けて適切な措置を講じるよう、強く促します。

その中には安全対策、職員研修、信頼できる品質保証体制、独立の規制監督などが含まれます。また、国民の信頼を得るためには、透明性を高めることも必要です。

多くの政府が現在、国内の政策や規制を再検証していることを心強く思います。先週ウィーンで開かれた原子力安全条約再検討会合では、多くの有意義な提案が出されました。原子力安全条約に未加入の国々は、滞りなく加入するよう強く促したいと思います。

これは私の第二の提案にもつながります。私たちは原子力の安全という課題に関し、国際原子力機関(IAEA)に対する支援を強化しなければなりません。
日本での事故に対するIAEAと天野事務局長の迅速な対応を改めて称えます。合同放射線緊急管理計画は、地震と津波の発生からわずか数時間で実施に移されました。私も関連国際機関の最高責任者とのハイレベル会合を行い、原発危機が及ぼす影響について評価を行いました。国連は情報と専門知識を共有し、グローバルなモニタリングに参加し、国際世論の不安解消に貢献しています。

できるだけ高い原子力安全基準のさらなる開発と普遍的適用に向け、IAEAの能力を強化する時がやって来ました。6月にウィーンで開催予定の原子力安全に関するIAEA閣僚会議は、この意味で重要な話し合いの場となるでしょう。

私はそのフォローアップとして、来たる9月に世界の指導者がニューヨークに集う際、国際的な原子力安全の強化に関するハイレベル会合の開催も検討することとしました。

国際的な建設基準、公衆安全の保証に関する合意、十分な透明性、そして国家間の情報共有が今、世界中で必要とされています。

第三に、国際社会は自然災害と原子力の安全の新たな関連性について、より集中的に議論しなければなりません。気候変動に伴い、異常気象も多発するようになっています。原子力発電所には、地震から津波、さらには火災から洪水に至るまで、あらゆる災害に対する備えがなければなりません。

IAEAによれば、64基の原子炉が新たに建設中です。現時点では、全世界の29カ国で443基が稼働中ですが、その一部は地震活動が盛んな場所に設置されています。

よって私たちは、豊かな国でも貧しい国でも、災害への備えをさらに重視する必要があります。

日本は実際、最も準備が整い、かつ、技術的にも最先端を行く原発国の一つです。

ましてや最悪の事態に対する準備があまり整っていない国では、どのような影響が生じるでしょうか。

私はこの理由から、来月ジュネーブで開催される防災グローバル・プラットフォーム第3会期に、原発事故に関する防災というテーマを盛り込むこととしました。

第四に、私たちは改めて、原子力の費用対効果について分析を行わなければなりません。原子力の平和利用の権利は核不拡散条約に謳われています。

原子力は多くの国々にとって引き続き重要な資源となる可能性が高く、しかも炭素排出量を抑える上で有効なエネルギーの一つとなり得ますが、その一方で、信頼できる安全性を、しかもグローバルに確立しなければなりません。

この意味でも、歩みを止め、私たちのアプローチを考え直す時期が来ています。

私はこのため、福島での原発事故の影響に関し、国連システム全体での研究に着手することとし、関連の国連機関と専門機関に対して、この作業に取りかかるよう要請する意向です。

そして第五に、原子力の安全と核安全保障との間に、より強い関連性を構築する必要があります。

原子力の安全と核安全保障は別個の問題ですが、どちらかを強化すればもう一方を補強できる関係にあります。テロリストやその他のアクターが核物質と核技術を求めている今、原子力発電所に厳しい安全システムを導入すれば、核安全保障の強化に向けた取り組みにも役立つでしょう。近隣のコミュニティにとってより安全な原子力発電所は、全世界の安全保障を高めることにもなるのです。

この課題に取り組むには、原子力業界の積極的な協力が必要です。

昨年、ワシントンでの核セキュリティーサミットで私が提案したとおり、原子力の安全と核安全保障に向けた枠組みの改善には、裾野の広いパートナーシップが欠かせません。このようなアプローチは、2012年のソウル核セキュリティーサミットに向けた準備段階でも、きわめて重要となります。

各国代表の方々
皆様

国際世論を安心させ、21世紀のエネルギー課題に向けて、人間と地球の準備を整えるために、私たちが講じることのできる措置は、以上の5つです。

私たちが力を合わせれば必ず、チェルノブイリと福島の悲劇を将来の前触れではなく、過去の遺物とできるでしょう。

* *** *

演説(英文)はこちら

ウクライナの首都・キエフで開催された「安全で革新的な原子力利用に関するサミット」(4月19日)©UN Photo/Paulo Filgueiras
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