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赤阪清隆・国連広報担当事務次長あいさつ
第15回中東和平国際メディア・セミナー

プレスリリース 07/039-J 2007年06月26日

東京、2007年6月26日

来賓の方々 
皆様

国連を代表し、第15回中東和平国際メディア・セミナーに皆様をお迎えできることを、大変うれしく存じます。

まず、このセミナーの共催と支援を寛大に快く受け入れていただいた日本政府と国連大学に対して、感謝の意を表したいと思います。また、昨今の極めて不透明で困難な情勢にもかかわらず、当地まで足を運んでいただいたパレスチナとイスラエルの代表の方々にも、深く感謝いたします。パレスチナ被占領地区とイスラエルで憂慮すべき事態が続いていることで、双方からのセミナーへの参加に影響が生じました。それだけに、きょう、ガザとヨルダン川西岸地区、そしてイスラエルから代表の方々をお迎えできたことは、極めて貴重といえます。また、日本内外からこの重要な対話に参加いただいた有志、そして代表の方々全員にも感謝いたします。

過去半世紀以上にわたり、いわゆる「パレスチナ問題」ほど国際社会の関心を集めている問題はありません。パレスチナ問題は国連の創設当初から、何らかの課題で議題に上り続けています。この問題に関する協議、議論、交渉には数限りない時間が費やされてきました。しかし、こうした集中的で幅広い取り組みにもかかわらず、パレスチナ問題は未解決のままであり、国際社会による緊急の関心と、具体的な解決策が引き続き求められています。

今年はパレスチナ問題が多くの重要な節目を迎えています。まず何よりも、今年は1947年の国連総会決議181 (II)の採択から60周年に当たります。この決議は、旧パレスチナ委任統治領にアラブ国家とユダヤ国家を樹立し、聖地エルサレムに特別な地位を与えることを規定するものです。今年はまた、1967年の第3次中東戦争40周年にも当たります。この戦争の結果、イスラエルはヨルダン川西岸とガザのパレスチナ地区を占領しました。これを受けて採択された安全保障理事会決議242は、その後のあらゆる和平イニシアチブの土台となっています。

潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は1月の就任以来、関連の国連安全保障理事会決議に基づき、包括的、公平かつ恒久的な中東和平の前進に全力で取り組む決意を強調してきました。事務総長もメンバーとなっている4者協議(カルテット)は、イスラエルとパレスチナ自治政府の双方が2国家共存の青写真として受け入れたロードマップの実現に向け、積極的な関与を続けています。

2007年前半には、イスラエルとパレスチナの交渉再開を支援しようとする国際的、地域的取り組みが息を吹き返す兆候もいくつか見られました。サウジアラビアで開かれたアラブ連盟サミットは、2002年のアラブ和平イニシアチブに対する支持を表明し、プロセス進展に向けた閣僚委員会を設けました。イスラエルとパレスチナの指導者は、米国の傘下で対話を開始し、積み残された課題について協議するため、定期的に会合を開くことで合意しました。

しかし悲しいことに、ガザで発生した残虐な暴力と最近の事件が西岸地区やイスラエルにも飛び火し、平和的解決の模索がさらに一層難しくなってしまいました。この最近の危機では、事務総長が挙国一致政府の崩壊をもたらしたガザ地区の暴力を非難し、パレスチナ一般市民の福祉に対する深い懸念を繰り返し表明してきました。事務総長は、当面の人道問題とさらに幅広い政治的課題の両方を重視し、4者協議のパートナーだけでなく、地域の指導者との協議や国際的協議も通じ、事態を好転させるための方策を探っています。

来賓の方々 
皆様

今回の国際メディア・セミナーは、イスラエル・パレスチナ関係が障害に直面し続ける中で開催されます。 パレスチナはその内部で困難を抱えています。ガザでは食糧と医薬品の不足が深刻になっています。人的被害も相次いでいます。そして、和平の見通しはつかないままです。こうした困難はありますが、それでも私は、将来に希望をつながねばならないと信じています。暴力に終止符を打ち、草の根を含むあらゆるレベルで、対話を続けなければなりません。

このセミナーの目的は、中東情勢に対する世論の啓発を図ることだけでなく、イスラエルとパレスチナの対話にはずみをつけ、これを支援するとともに、将来的な和平に対する双方の期待をつなぎ止めることにもあります。ささやかではありますが、セミナーはこうした期待の実現に貢献することをねらいとしています。イスラエルとパレスチナの人々の暮らしはさまざまな点でつながっています。また、水、健康、環境など、双方に共通する利益や懸念も数多くあります。 私たちは、このセミナーが推進を目指す市民社会の協力が、より高い政治レベルでのステップと相まって、ついには恒久的な政治決着に至ることを期待しなければなりません。その時はじめて、双方の人々は平和と調和の中に暮らし、自分たち、そして子孫にとっての豊かな社会の構築に大きな精力と人材を注ぎ込むことができるのです。

ガザ情勢の悪化や、それによる政治的、人道的懸念から、セミナーを延期すべきではないかという声も多く聞かれました。しかし国連としては、現地で緊張と不透明の度合いが高まっていることを勘案しても、底辺から和平の見通しを確立しようとするセミナーの価値が、それに勝ると確信しています。

今回は国際メディア・セミナーということで、イスラエルとパレスチナのジャーナリストの方々に加え、日本内外からも多くのジャーナリストの方々をお招きしています。私たちはメディアの力と責任を十分に認識しています。イスラエルとパレスチナの人々が抱える問題だけでなく、和平プロセスを前進させるチャンスや、双方の人々の福祉向上を目指す協力という明るい動きについても、報道を続けていただきたいと思います。

セミナーではけさの開会式に続き、パレスチナ非常事態政府とイスラエルが抱える課題と機会、そして中東和平プロセスにおける地域的側面という2つの問題について、パネル・ディスカッションを行います。明日は地域の経済協力と、イスラエル・パレスチナ協力に向けた市民社会のイニシアチブを取り扱う3つのパネルをご用意しています。

私はニューヨークの国連本部に戻り、今回のセミナーの前向きな結論と成果を事務総長に報告できることを望んでいます。一両日中の皆様のアクティブな、そしてインタラクティブな議論と交流を期待します。

ご清聴ありがとうございました。