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国連事務総長、広島から世界的な核軍縮を呼びかけ(2022年8月6日付 UN News 記事・日本語訳)

2022年08月18日

広島で平和記念式典に出席するアントニオ・グテーレス国連事務総長 © Ichiro Mae/UN Photo

 

核兵器保有国が、核戦争の可能性を認めることは、断じて許容できません。訪日中のアントニオ・グテーレス国連事務総長は8月6日朝、広島への原爆投下から77年となる平和記念式典において、このように強調しました。

「核兵器は愚かなものです。1945年から3四半世紀が経った今、この空に膨れ上がったきのこ雲から私たちは何を学んできたのか、問わなければなりません」グテーレス事務総長は広島平和記念公園で開催された厳粛な式典において、このように強調しました。同式典には、被爆者の方々、若い平和活動家、日本の総理大臣や地元自治体関係者など多数の人々が出席しました。

グテーレス事務総長は、新たな軍拡競争が加速しており、世界の指導者たちが数千億ドルもの資金を費やして、世界各地の兵器庫に現在保有されている約1万3,000発の核兵器の備蓄を強化していると警鐘を鳴らしました。

「(中略)深刻な核の脅威が、中東から、朝鮮半島へ、そしてロシアによるウクライナ侵攻へと、世界各地で急速に広がっています。(中略)人類は、実弾が込められた銃で遊んでいるのです」事務総長はこのように警告しました。

1945年8月に原子爆弾が投下された直後の広島 © UN Photo/Mitsugu Kishida

 

希望の光

グテーレス事務総長は、現在ニューヨークで開催されている核兵器不拡散条約の第10回運用検討会議を「希望の光」と呼びました。

「本日、私は、この神聖な場所から、この条約の締約国に対し、私たちの未来を脅かす兵器の備蓄を廃絶するために緊急に努力するよう呼びかけます。対話、外交および交渉を強化し、これら破壊兵器の廃絶によって私の軍縮アジェンダを支持するよう呼びかけます」事務総長はこのように強調しました。

事務総長は、核兵器保有国が核兵器の「先制不使用」を約束するとともに、他国に対しては核兵器を使用しないこと、あるいは使用すると脅迫しないことを保証しなければならないと力説しました。

「私たちは、広島の恐怖を常に心に留め、核の脅威に対する唯一の解決策は核兵器を一切持たないことだと認識しなければなりません」事務総長はこのように述べました。

平和を拡散させるべき時

グテーレス事務総長は、指導者たちは自らの責任から隠れることはできないと強調しました。

「核という選択肢を取り下げてください。永遠に。今こそ、平和を拡散させるべき時です。被爆者の方々のメッセージを聞き入れてください。『もう二度と、広島の悲劇を引き起こさないでください。もう二度と、長崎の惨禍を繰り返さないでください』」1945年に、最初は8月6日に広島で、そして3日後の8月9日には長崎で、2発の原子爆弾が日本上空で炸裂したことを念頭に、事務総長はこのように述べました。

事務総長は若者たちにもメッセージを送り、被爆者の方々が始めた取り組みを完成させるよう求めました。

世界は、この地、広島で起こったことを決して忘れてはなりません。犠牲者の皆様の記憶、そして生き残った方々が残してくださった遺産は決して消滅することはありません」事務総長はこのように締めくくりました。

グテーレス事務総長は週末にかけて日本に滞在し、岸田文雄総理大臣をはじめ、日本政府高官と面会する予定です。

また、広島と長崎での原爆投下の被害を受け、生き抜いてこられた方々との対話を行うと共に、核軍縮・不拡散、およびその他の地球規模課題への取り組みを先導している若い活動家との対話にも参加する予定です。

世界は決して忘れてはならない

グテーレス事務総長は式典後、広島と長崎での原爆投下の被害を受け、生き抜いてこられた5人の被爆者の方々との対話を行い、その話に耳を傾けました。

事務総長は、被爆者方々が計り知れない苦しみを受けたにもかかわらず、「並々ならぬ勇気と不屈の精神」によってトラウマを乗り越えたことを知り、称賛の意を表しました。

事務総長はまた、被爆者の方々は世界の模範であると述べ、対話を行った3人の女性と2人の男性に、「核兵器は愚かなものだ」と指導者たちに伝える道徳的権威があると語りました。

「国連は、起きたことの記憶を絶やさないように、皆様の話がいつまでも語り継がれるように約束します」グテーレス事務総長はこのように述べました。

被爆者の方々は、人生の大半を費やして、平和と軍縮の問題にどのように取り組み続けてきたかを事務総長に伝えました。その中には、意識啓発のために曲を作った人や、自身の経験を絵に描いた人もいます。

対話に参加した方々の全員が、若者たちも核兵器をめぐるありのままの現実を理解してくれるように願っていると語りました。

日本で被爆者の方々と対話の機会をもったグテーレス国連事務総長 © UN Photos/Ichiro Mae

 

広島から、若者たちの力を

グテーレス事務総長は、核軍縮・不拡散、およびその他の地球規模課題への取り組みを現在先導している日本の若い活動家たちとの非公式の対話にも参加しました。

「皆さんの世代へと託す世界がこのような状態になっていることについて、私の世代を代表してお詫びしたい」事務総長はこのように述べ、世界中の若者たちに向けてこれまで行ってきた謝罪を改めて繰り返しました。

事務総長は、地球における三重の危機や深刻な不平等、蔓延する武力紛争を含め、現在の世界情勢について語りました。

「私たち2つの世代は協力する必要があります。(中略)そして、この先、皆さんが責任を負うことになるのですから、準備を整え、強くならなければなりません」事務総長は、参加した若者たちにこのように語りかけました。

特別名誉市民に

グテーレス事務総長は、広島市長、長崎市の副市長とも面会し、広島市特別名誉市民の称号が贈呈されました。

「世界各地で平和に向けて取り組んでいる国連のすべての女性たち、男性たちを代表し、この大変な名誉をお受けいたします。核兵器の拡散を止めるために、まさに今週ニューヨークで会合を開いている外交官と交渉責任者を代表してお受けいたします」事務総長はこのように述べました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。

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